2013年8月9日金曜日

骨転移リテラシー

ただ繰り返し強調したいことは、骨転移が現実問題になってから学ぶ、という姿勢では遅いという点です。骨転移が引き起こす最大の問題は、下半身不随の発生です。これを回避するためには、がんの診断を受けた時点でちょっとした予備知識を頭の片隅に置いておくことが必要になります。転移なんて考えたくもない心境かもしれませんが、後々にあなたの身を守る大切なことになります。

 はじめに、骨転移を生じやすく、十分な骨転移の知識を身に着けておくべきがんから紹介します。このようながんの代表として、乳がん、肺がん、前立腺がん、多発性骨髄腫を挙げておきたいと思います。骨転移が発生する頻度はおよそ2~3割とみられています。これらのがんでは骨転移をきっかけにしてがんが見つかったり、がんが見つかった時にはすでに骨転移を生じていたり、病気の経過の早期から骨に転移を生じる傾向を持っています。

 このため、これらのがんの治療にあたる主治医の先生も一般に骨転移に明るく、ちょっとした質問にもかなり詳しく答えてくれるでしょう。定期検査で病院に訪れたときには骨の点検を加えておられることが多いと思います。監視の目は、十分なことが多いですが、分子標的薬やホルモン薬の投与により治療成績が近年改善されて、進行期と言えども骨転移を持ちながら長く生活を送ることが多くなってきました。放射線治療がどのようなタイミングで行われるのかや、治療法の選択に病気の経過が深く関連があることなど、知っておくと主治医の先生と方針を相談しやすいでしょう。すでに骨転移との生活を送っておられる方の中には、「きっちり管理していればこわくない!」と感じられた方もおられることでしょう。

がんナビ連載 橋本伸之 「がんの種類による骨転移の発生頻度と時期の違い」から抜粋