2012年8月7日火曜日

切除か温存か

乳房温存手術後に、乳房内再発しやすい患者さんの特徴が明らかに

ここ数年、大きな乳がんに対しては、術前化学療法でがんを小さくした後、乳房温存療法を行うことが増えてきました。術前化学療法後の乳房温存療法では、通常の乳房温存療法に比べて乳房内再発率がやや高いとされています。一方で、乳房内再発のリスクが非常に高い場合は、乳房温存療法を行わない方が治癒率は高くなるという考えがあります。そこで、私たちは、術前化学療法を受けた後、乳房温存療法を受けた患者さん375名のデータを分析して、どのような患者さんが、乳房内再発を多く起こしていたか調査しました。

その結果、4年間の乳房内再発率は4.4%でした。乳房内再発を起こしやすかった患者さんの特徴は、
(1)エストロゲンレセプター陰性
(2)化学療法後がん病巣が複数残存
―であることがわかりました。

つまり、この2つの項目によって、乳房温存手術が適切かどうかを予測できることがわかったのです。 (以上の結果は、米国で毎年開催されているサンアントニオ乳がんシンポジウムで2011年で発表され、さらに、米国の権威あるがん専門誌「Cancer」誌に掲載されました)

乳がん手術後の肺転移では、肺病巣を切除することが適切かどうかを調査する研究

乳がん手術後に肺だけに転移した場合、その部分を切除する方が、治療効果は上がると考えられていました。しかし、多数の患者さんで検討された研究は、わずかしかありませんでした。

そこで私たちは、過去に乳がん手術を受けた後に肺転移し、肺転移病巣を切除した患者さん86名について、切除後の経過を診療記録から分析しました。

その結果、肺転移切除から5年後の生存率は67.1%と極めて良好でした。また、肺転移切除後の経過が良好であった患者さんの特徴は、
(1)乳がん手術から肺転移まで2年以上経っている
(2)肺転移の大きさが2cm以下と小さい
(3)肺転移を完全に切除できた
―でした。

この結果を踏まえて、乳がん手術後に肺転移した患者さんについて、切除する人としない人に分け、将来にわたって追跡調査して比較する、新しい研究を開始しました。 (この結果は、2011年のサンアントニオ乳がんシンポジウムで発表されました)