2013年3月13日水曜日
がん患者3年放置、死亡 名大病院
がん患者3年放置、死亡 名大病院
2013年3月13日 13時41分
名古屋大病院(名古屋市昭和区)は13日、口の中に早期のがんが見つかった愛知県内の30代の患者に対し、書類を紛失したため3年以上手術を行わず放置していたと発表した。病院はその後に手術したが、昨年4月に死亡。外部専門家らでつくる調査委員会は「予定通り手術が行われていれば、がんは完治した可能性が高い」と指摘した。
病院によると、患者は2008年3月に名大病院歯科口腔(こうくう)外科を受診し、口腔内のがんの疑いが高いと診断された。担当医は患者に手術の必要性を説明し、入院の申し込み書を作成。「入院日が決まったら連絡する」と伝えたが、その後、患者に連絡しなかった。
患者は自覚症状がなかったことや、医師からがんの疑いがある「グレーゾーン」と伝えられていたことなどから、すぐに手術が必要な病状ではないと判断。かかりつけ医に受診したが、名大病院で受診しなかった。その後、11年4月に痛みが悪化。名大病院で再受診したところ、入院申込書の紛失により手術が行われていないことが発覚した。
病院は患者に同年5月にがん摘出手術などを行ったが、同年8月に肺への転移が拡大し、12年4月に呼吸不全で死亡した。
病院によると、通常は入院や手術を決定した担当医が3枚複写の入院申込書を作成し、2枚は担当医が診療科で、1枚は事務職員が保管する。各診療科は、申込書を元に入院日を決定、患者に電話連絡をする入院係を配置していた。今回は、診療科に保管される2枚が紛失しており、入院係による患者の入院日の決定や連絡が行われなかった。事務職員が保管した1枚も入院手続きに反映されなかった。
調査委員会は「病院の連絡体制や、情報管理体制の不備による事務手続きのミスが原因」と判断。名大病院は再発防止策として、紛失の恐れがない入院予約システムの電子化と複数の部署で情報を共有する仕組みを作った。
病院は、患者の遺族に謝罪し、和解した。患者は亡くなる前に「しっかりと調べてほしい」と話したという。
松尾清一院長は会見で、「早期の治療で命が助かったり重症化を防げる可能性は高い。大学として早期発見、早期治療を患者に盛んに進めてきたのに、情報管理という初歩的なことができておらず、遺族には申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と謝罪した。
(中日新聞)