2014年6月6日金曜日

遺伝性乳がん診療…認定制度、今秋にも創設

日本産科婦人科学会、日本乳癌がん学会など5学会は、「遺伝性乳がん・卵巣がん」を診療できる医療機関を認定する制度を、今秋にも創設することを決めた。

 国内では毎年数千人が発症するが、診療体制が不十分だった。認定制度で質の高い医療機関を増やし、早期発見・早期治療で死亡を減らしたい考えだ。

 遺伝性乳がん・卵巣がんは、特定の遺伝子「BRCA1、2」の変異が遺伝することで起こる。米女優アンジェリーナ・ジョリーさんが検査でこの変異を持つとわかり、昨年5月、乳がんの発症を予防するために両方の乳房を切除したことを公表、話題になった。

 日本でも、乳房や卵巣・卵管の予防切除を行う医療機関が広がりつつある。しかし、遺伝子検査やカウンセリングなどの総合的な診療体制は不十分で、乳腺外科、産婦人科など関係する診療科の連携も課題になっていた。

 このため、新たに作る認定制度では、〈1〉遺伝や乳がん、卵巣がんの専門医が常勤しているか〈2〉遺伝子検査ができるか〈3〉変異があるとわかった人への経過観察ができるか――などを審査基準とし、診療レベルを3段階で評価してそれぞれ認定する予定だ。各学会が加盟する日本医学会が総括する方向で調整している。

 青木大輔・慶応大産婦人科教授は「この制度で質の高い診療ができる施設をはっきりさせ、不安を抱える患者が相談できるようにしたい」と話している。

 遺伝性乳がん・卵巣がん 乳がんの5~10%を占め、親から子へ50%の確率で遺伝する。通常より若い年齢で、両方の乳房に繰り返し発症しやすくなるのが特徴。特定の遺伝子(BRCA1、2)に変異があると、70歳までに56~87%が乳がんに、27~44%が卵巣がんにかかる危険性があると海外で報告されている。

(2014年6月6日 読売新聞)