「混合診療」の拡大方針って、どういうこと?
2013/06/27 12:11配信
政府は規制改革実施計画の健康・医療分野において、混合診療の拡大方針を打ち出しました。まずは2013年秋をめどに抗がん剤から開始し、先進医療の対象範囲を広げていくとしています。
混合診療とは「保険診療+保険外診療」
混合診療とは、健康保険が適用される保険診療と、全額自己負担の自由診療(保険外診療)とを組み合わせた診療のことです。日本では原則禁止とされ、一つの医療機関で同じ患者に保険診療と保険外診療が行なわれた場合には、本来保険が適用される分もすべて自己負担とされてきました。例えば、健康保険で認められた回数以上に検査を実施したり、健康保険がまだ適用されていない高度な医療を一般的な医療と同時に行なうといったことなどが混合診療にあたります。
混合診療が禁止されてきた理由はいくつかありますが、最もよく引き合いに出されるのが、保険医療機関に関する規則の中にある特殊療法を禁じる項目です。つまり、有効性や安全性の不確かな医療を、保険医療機関で行なってはいけないということです。ただ、混合診療をはっきり禁止した法律がないということは、裁判所も認めています。
このように原則禁止とはいえ例外もあり、厚生労働省の認めた先進医療や差額ベッド代などは、2004年から保険診療との併用・混在が認められるようになりました。これに当てはまる先進医療とは、厚生労働省の先進医療会議で有効性や安全性を確認した技術のことで、今年6月1日時点で107種類がリストアップされています。
「先進医療」扱いなら自己負担が軽減
今回の規制改革計画は「先進医療ハイウェイ構想」と銘打ち、外部機関を入れて評価の新体制をつくり、先進医療のリストアップをもっと早く効率的に進めるというものです。
これまで未承認の抗がん剤を使うには、治験に参加するか、全額自己負担で治療費が高額になるのを覚悟するしかありませんでした。例えば1か月分60万円の未承認薬を使い、併せて一般的な医療を30万円分受けたとすると患者の負担は90万円。未承認薬が先進医療に収載されれば、一般的な医療の30万円分に健康保険が適用されて9万円となり、自己負担額は69万円に減ります。
医者、患者の双方に賛否両論
混合診療の規制緩和については、医療者、患者どちらの側にも賛否両論があります。
日本医師会は、医療は社会の共通資本であるという考えから、所得によって選べる医療に格差ができることや、保険診療の範囲を縮小させる恐れがあることなどを理由に、早くから混合診療への反対を表明してきました。一方、現場の医師の中には、現行制度のもとでは保険診療と保険外診療をわざわざ別の日に実施しなければならず、治療の分断を招いているとして解禁を望む人もいます。
患者側では、新薬や新技術をいったん先進医療に指定してしまえば混合診療で治療が受けられることからかえって新しい医療の保険適用が遅くなるのではないかという意見があります。けれども、治療の選択の幅が広がることを歓迎する患者も多く、考え方はまちまちです。
また、医療政策の面からみた場合、健康保険制度の財源が逼迫していることから混合診療の範囲拡大で保険財政の安定を期待する声と、公的保険制度の主旨に沿って本来は保険適用の範囲を拡大するべきという声とがあります。