(2005年03月号)
手術不可能な進行・再発がんに対し、がんの縮小を目的に抗がん剤を限界の量まで使っても生存期間を長く延長させることはできず、がんの増殖を抑えることを目的に抗がん剤を少量ずつ継続して用いたほうが生存期間は長くなる――という理論。
しかし、発表当初、「縮小なき延命」を実現するためにどのような抗がん剤治療を行ったらよいのか、具体的な戦術が十分とは言えなかったようだ。さまざまな批判・非難を浴びた。
そんな中で、高橋さんは、がん休眠療法という治療方針(戦略)に基づいて、「テーラード・ドーズ化学療法(個別化最大継続可能量による抗がん剤治療)」と名付けた治療方法(戦術)を開発した。この療法は飲酒の適量には個人差があるように、抗がん剤の適量も患者1人ひとりで遺伝子学的に個人差があること、抗がん剤による副作用を軽い状態(グレード1~2以下)に止めて長く継続することが延命につながる――という科学的なデータをもとに考案されたものだ。
このテーラード・ドーズ療法は、従来の抗がん剤治療に疑問を抱くたくさんの医師から賛同と共感を得た。
その結果、臨床試験(治療の有用性を評価するために患者を対象にした計画的な試験)を行うまでになり、現在、進行・再発胃がんを対象に、世界初のテーラード・ドーズ化学療法による臨床試験(全国50施設)が進行中である。米国国立がん研究所の雑誌に発表してから10年目の今年、がん休眠療法は再び大きな関心を集めている。
・・・・・全文を読む