公開日時 2012/06/04 07:50
早期乳がん女性の最初の再発部位として、最も多い骨転移を、デノスマブ投与により、骨転移の形成と進展にかかわるRANK/RANKLシグナル経路を阻害することで、防ぐことができるか。これを検証すべく、国際臨床第3相無作為化プラセボ対照比較試験「D-CARE」が進行中だ。6月1に開幕した米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)で、2日に開かれたポスターセッションで、Massachusetts General Hospital Cancer CenterのPaul E. Goss氏が試験の概要を紹介した。
RANK/RANKL経路が、骨転移に関与することを示唆する報告は多い。浸潤した腫瘍細胞からの成長因子とサイトカイン遊離は、RANKリガンド(RANKL)経路を介して、破骨細胞の形成と活性化を刺激し、骨吸収を誘導する。逆に、骨吸収は、骨マトリックスから成長因子を遊離させ、腫瘍活性化を永続化させる。がん誘発の骨破壊と、骨を介した腫瘍細胞の広がりという“悪循環”とも言える。完全ヒト型モノクローナル抗体で、RANKリガンドを特異的に阻害するデノスマブによって、この悪循環を断つことができる可能性がある――というのが試験の理論的根拠だ。
D-CAREは、約4500例の早期乳がん(ステージIIまたはIII)患者を対象に、デノスマブ120mgまたはプラセボの4週毎皮下投与に1:1で割付け、6カ月間治療した後、デノスマブ120mgまたはプラセボの3カ月毎投与を4年半、合計5年間の治療を行う。主要評価項目は、無骨転移生存(BMFS)。副次評価項目は、無疾患生存(DFS)、全生存(OS)、遠隔転移生存期間(DRFS)、安全性と認容性だ。
主要登録基準は、ECOG PS0または1、American Joint Committee on Cancer (AJCC)のステージII/IIIで、再発高リスク、標準全身アジュバントまたはネオアジュバント化学療法と/またはホルモン療法と/またはHER-2標的治療を行っている、または計画されている18歳以上の患者。
除外基準は、▽遠隔部位への転移、またはその既往▽乳がんの診断の既往(DCIS、LCISは可)▽乳がん以外の悪性疾患またはその既往に加え、骨代謝に影響を与える可能性のある、①過去1年以内のビスホスフォネート製剤の使用②静注ビスホスフォネート製剤の投与またはその既往③デノスマブ投与の既往――とした。
試験は2010年5月に開始し、現在患者登録中。登録完了は2012年末の予定。現在、日本を含む40カ国が参加、または参加を予定している。試験中に骨転移した患者は、割り付けられた治療を中止して追跡。独立データモニタリング委員会による定期的な安全性評価を行うほか、2回の中間解析を計画している。主要有効性の解析はイベントドリブンで、Goss氏らは、4500例を登録した場合、主要解析に必要なイベント数が生じるまで、最初の患者登録からほぼ6年5カ月と予測しており、最終データの評価は2016年10月に行われる見込みだ。