2012年5月25日金曜日

臨床試験への参加動機で1番多かったのは「個人的利益」

2010. 5. 24
臨床試験に参加した患者、辞退した患者の本音とは
「同意」の裏に横たわる様々な思い

ロコック氏は、DIPExの臨床試験分野の責任者として、42人の患者にインタビュー調査を行った人物。講演では、ビデオクリップに収められた患者の語りを通して、これまでほとんど表に出てこなかった臨床試験にまつわる患者の体験や思いを紹介した。

中でも同氏が印象的な出来事として挙げたのが、臨床試験に参加した患者の動機だ。

過去の質的研究から、患者の参加動機は「医学の発展や他人の役に立ちたい」というものが多いことが知られていたが、今回のインタビューでは、そのような動機は少数だった。むしろ多かったのは、「新しい治療を受けられる」「丁寧に診てもらえる」「最後の手段なので、何でも試したい」など、個人的な利益だったという。

このような患者の声を受け、ロコック氏は「臨床試験のリーフレットには、参加によって患者が得られる利益について、医学の発展に貢献することや他人の助けになることばかり記載されているが、個人的な利益についても触れてもよいのではないか」と提案した。

インタビュー調査は、臨床試験に参加しなかった患者や臨床試験を途中で中止した患者にも行われたので、参加を見合わせた人たちの理由も明らかになった。ロコック氏は「副作用への不安がある」「自己注射など介入の負担が大きい」「臨床試験の担当者が承諾もなしに自分の情報をかかりつけ医に話した」などの理由のほか、「患者向けリーフレットの内容が難しすぎる」、「他国で既に科学的に証明されている薬剤の効果を再確認するためにプラセボを服用することに納得できなかった」といった語りがあったことも紹介した。「試験への参加を見合わせる理由一つとっても、そこにはさまざまな患者の体験や思いが横たわっている」とロコック氏は強調した。