2012年5月14日月曜日

タモキシフェンからフェマーラにスイッチ!?

閉経後乳がんだと、イニシャルアジュバント療法のほうがスイッチアジュバント療法より効果的みたいだ。私の場合は「閉経前」だから、タモキシフェン(抗エストロゲン剤)5年、その後に閉経していれば、アロマターゼ阻害剤を5年かな。

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米国ではスイッチ療法が主流になりつつある
がんサポート 2007年07月号

アロマターゼ阻害薬が登場したことで、術後補助療法に色々なバリエーションができました。従来、タモキシフェン一辺倒だったものが、タモキシフェンとアロマターゼ阻害薬を“順番”に投与することで、再発率を今までよりも低く抑えることが可能になったのです。具体例としては、タモキシフェンを2~3年間服用した後に、薬剤を切り替えて、アロマシンを2~3年間服用します(スイッチ療法)。タモキシフェンだけで5年間の術後補助療法を続けるよりも、途中でアロマターゼ阻害薬に変更した方が、再発を若干なりとも減らせます。

術後補助療法では、ちょうど2~3年目辺りで耐性を獲得しやすいと考えられています。つまり、がん細胞がタモキシフェンに慣れてきて、再発の可能性が増してくるのです。そこで作用機序の異なるアロマターゼ阻害薬に切り替えて、がん細胞がまだ慣れていない状況をつくり直し、術後補助療法を継続するというのがスイッチ療法の作戦です。アロマターゼ阻害薬3剤のなかで、最初にこの治療戦略を提案したのがアロマシンでした。IESトライアルという大規模な臨床試験が実施され、タモキシフェン5年間群とスイッチ療法群とが比較された結果、軍配はスイッチ療法群にあがりました。タモキシフェンだけで術後補助療法を行っても、十分な効果を得られるのですが、途中でアロマシンに切り替えたほうが、より良い成果を期待できると結論されています。

2006年の米国臨床腫瘍学会(ASCO2006)で、IESトライアルの最新データが発表されました。それによれば、タモキシフェン5年間群に比べて、スイッチ療法群では「反対側の乳房に再発するリスクが44パーセント減少」、「リンパ節に転移するリスクが17パーセント減少」、「死亡のリスクが15パーセント減少」などとされ、スイッチ療法の意義が明確になりました。

この結果を受けて、米国ではスイッチ療法が主流になりつつあるようです。今後の日本でも、再発リスクの高い患者さんに対して、スイッチ療法を取り入れる医師が徐々に増えるのではないかと予測されます。ただ、再発リスクの低い患者さんでは、タモキシフェンでの術後補助療法も有意義です。従って、スイッチ療法を行うか否かは、患者さん個々の病態によって判断されるものと考えられます。

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スイッチングがいいのかは結論が出ていない
がんサポート 2007年07号

途中で薬を変えるとどうなるかを調べた臨床試験の結果が発表されている。

タモキシフェンを2~3年投与して再発のなかった患者を2つに分け、一方にはアロマターゼ阻害剤を投与し、もう一方はタモキシフェンを続けたのだ。その臨床試験では、途中で薬をスイッチすると、大幅に再発が減るという結果が出ている。

「このスイッチングの臨床試験の結果と、最初からアロマターゼ阻害剤を投与した臨床試験の結果を、直接比較するのは難しいのですが、スイッチングしたほうが再発を抑える率が高かったのです。 もっとも、スイッチングしたほうは、タモキシフェンを2~3年飲んで再発のなかった人にアロマターゼ阻害剤を投与しているので、統計的な問題はあり、スイッチングのほうがいいというのも仮説にすぎません。今年のザンクトガレン乳がん国際会議(乳がん初期治療に関する国際会議)でも、現在行われている臨床試験の結果を待とうということになっていました。スイッチングがいいか、最初からアロマターゼ阻害剤がいいかに関しては、まだ結論が出ていません」

結果が期待されているのは、フェマーラを使ったBIG1-98試験だという。来年には解析が行われ、最初からフェマーラを使うのがいいのか、タモキシフェンを2年やってからフェマーラを3年投与するのがいいのか、あるいはその逆の順番でスイッチするのがいいのか、この3つを比較した結果(2009.01)が出ることになっているのだ。

 「ザンクトガレン国際会議では、エキスパートパネルといって、乳がん治療の世界的なエキスパートたちが質問に答え、その結果を割合で表示することが行われます。アロマターゼ阻害剤の使い方に関しては、最初にタモキシフェンを投与し、それからアロマターゼ阻害剤にスイッチすると答えた人が多かったので驚きました。これは、スイッチしたほうがいいという仮説があることに加え、薬の価格が大きく関係していたようです」

 紅林さんによれば、ヨーロッパにおけるアロマターゼ阻害剤の価格は、タモキシフェンの約20倍なのだという。この価格のために、最初からアロマターゼ阻害剤を使わず、タモキシフェンからスイッチする患者が多くなるらしいのだ。

日本では皆保険制度なので、どちらの薬でも経済的負担はあまり変わらない。そのため、より良いほうを最初から使おうということで、アロマターゼ阻害剤を最初から使っているケースが圧倒的に多いそうだ。

アロマターゼ阻害剤に関しては、これまでにもさまざまな臨床試験が行われている。それらのデータを分析すると、3種類のアロマターゼ阻害剤のなかで、フェマーラは、手術後に遠隔再発を起こさずに生存する期間を長くし、その率を上げることが報告されているのだそうだ

乳がんの再発は、局所再発、領域再発、遠隔再発の3つに分けられる。温存手術で残した乳房内にがんが出てきたり、切除手術による傷の近くに出てきたりするのが局所再発。鎖骨の上のリンパ節や胸骨の裏側のリンパ節など、領域リンパ節に再発するのが領域再発。血液を介して、肺、骨、肝臓など、離れた臓器に再発するのが遠隔再発(転移)だ。

「遠隔再発が起きてしまうと、その患者さんは、5年、あるいは10年以内に、再発のために亡くなるリスクが高くなると言われています。そういう意味では、遠隔再発をより強く低下させるというのは、魅力的な効果だといえます。遠隔再発が減れば、当然、生存率は向上すると考えられますが、これまでの臨床試験では、有意に生存率が向上するという結果は出ていません。そこまでつながっていくかどうか、見守っていく必要がありますね」

この点でも、今後の臨床試験の結果(2009年03月号)が待たれている。

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2年:ゾラ+タモ →子宮・卵巣の全摘→ 3年:アリデミックス +5年・・・?
がんサポート 2009年12月号 乳がんの治療 Q&A

Q:12月で術後5年。薬の服用をやめたい

04年12月に、左乳房の全摘術をしました。大きさは1.7センチ、リンパ節転移なし、グレード(がんの悪性度)1、ホルモン2+。

05年1月からノルバデックス(一般名タモキシフェン)、ゾラデックス(一般名ゴセレリン)によるホルモン療法。05年8月に、子宮筋腫手術のため子宮・卵巣の全摘術。06年10月から、アリミデックス(一般名アナストロゾール)を服用。今年12月で術後5年。薬の服用を終わりにするか、迷っています。本心は、薬を飲みたくありません。薬の副作用の骨粗しょう症が気になります。昨年の骨密度は、92パーセント。少し、減少していました。また、フェマーラ(一般名レトロゾール)のほうが再発しにくいと聞いています。 (女性50歳)

A:5年間の内服が終われば治療を止めてもよい

現在、ご相談者が行っているホルモン治療はノルバデックスからアリミデックスへ変更して合計5年間行うという治療で、スイッチ投与とよばれています。

ノルバデックスを5年間行うよりも、再発率が低く、副作用も少なくなるというデータがあります。標準的な治療は、これで終わりです。

乳がんは5年以上たっても再発することが多いです。ノルバデックスを5年飲んだあとに、さらにアリミデックスを3年から5年飲むことで再発率が下がることは臨床試験で証明されています。しかし、スイッチ投与を5年間以上行うことや、最初からアリミデックスを5年以上投与することの有効性については、臨床試験の結果はまだ出ておらず、証明されていません。したがって、アリミデックスを飲み続けたいのなら、ご自身の意思で行うことになります。

昔、ノルバデックスも5年投与と10年投与が比較されましたが、5年と10年で再発率の低下に差はなく、10年投与では副作用が増加し、5年投与が標準となったという経緯があります。 

アリミデックスを長い期間、飲めば飲むほど骨粗しょう症のリスクは高くなります。現在よりも骨密度が減るようでしたら、ビスホスホネート製剤を併用しながら治療を続ける必要があります。リンパ節転移もなく、再発リスクもそれほど高くないようであり、一般的には5年内服終了時で治療を止めても問題ないと思われます。

アリミデックスとフェマーラは、直接比較する臨床試験(FACE試験)が行われていますが、結果はまだ出ていません。アリミデックスのほうが早く認可されたこともあって、長期間使用した安全性データが多くあります。フェマーラはホルモンを抑える薬理的作用がアリミデックスよりも強いため、治療効果が高いかもしれないと言われています。ただし、アリミデックスを飲んだあと、フェマーラに切り換えるほどの根拠はありません。

また、フェマーラにも骨粗しょう症などの副作用があります。コレステロールの上昇や、心血管系の合併症がやや増えるという副作用も言われています。 (外科医師)

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閉経後乳がん、スイッチアジュバント療法群よりイニシャルアジュバント療法のほうが有用性が高い
がんナビ 2010.12.11

Bartlett氏らは、TEAM試験に参加した患者から組織片を回収、組織マイクロアレイ(TMA)を作製した。IHCでHER1、HER2、HER3を、FISHでHER2を定量解析し、同試験の治療開始から2.75年の間、すなわちスイッチする前の期間の生存に関するデータを用いてDFSと治療について解析した。

Bartlett氏は、「HER1~3陰性例では、エキセメスタンで早期に治療を行うことで有用性が得られる。バイオマーカー解析による計画的で強力な治療はハイレベルの科学的なエビデンスに基づいており、早期乳癌患者のアロマターゼ阻害剤の治療スケジュールを決定するうえで、臨床医と患者を助けるもの」と話した。
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アロマターゼ阻害剤2剤の抑制効果は同等、副作用に違い
がんサポート 2011年03号

副作用には、 アリミデックスとアロマシンで差が出たものもありました。アロマターゼ阻害剤に特徴的な副作用であるとされている骨への影響のうち、骨粗鬆症は、アロマシン群で1171例31パーセントと、アリミデックス群の1304例35パーセントと比較して少なかったことが示されました。ほかに、腟出血、脂質代謝異常(高トリグリセライド血症、高コレステロール血症)も、アロマシン群のほうが少ないという結果でした。一方、肝障害(ALT、AST、ビリルビンの上昇)や、ざ瘡、男性化、心房細動については、アリミデックス群のほうが少ないことが明らかになりました。こうした副作用の違いは、ステロイド型アロマターゼ阻害剤であるアロマシンに、アンドロゲン作用があるためだと考えられています。

MA・27試験によって、5年間のイニシャルアジュバント療法として、アリミデックスとアロマシンは効果の点では同じように有効であることが示されました。ただ、副作用の特徴が異なる可能性が示されたと言えます。

*アリミデックス = 一般名 アナストロゾール
*フェマーラ = 一般名レトロゾール
*アロマシン = 一般名 エキセメスタン