2013年6月30日日曜日

乳房予防切除「死亡率減少の根拠不十分」 日本乳癌学会

乳房予防切除「死亡率減少の根拠不十分」 日本乳癌学会

朝日新聞デジタル:記事一覧
2013年6月28日(金)19時34分配信

遺伝性で乳がんや卵巣がんになりやすい女性の乳房予防切除について「乳がんによる死亡が減る可能性はあるが、科学的な根拠はまだ不十分」とする診療指針を日本乳癌(にゅうがん)学会が28日にまとめた。切除で乳がんの発生は90~100%減るが、がんが起こる乳腺を完全に取り切れない、卵巣がんが起こるなどの可能性があり、死亡率を下げるかは、まだはっきりしていないという。

 遺伝性乳がんの乳房予防切除は、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが体験を公表して注目を集めた。日本乳癌学会は2年ぶりに、乳がんの診療指針を改定した。この中で、遺伝的に乳がんになりやすい人が、がん予防で健康な乳房を切除する手術について、「本人が手術のリスクや効果を十分に理解した上で希望すれば、考慮すべき手段」と判断した。

乳製品での乳がん再発リスクを否定…診療指針

乳製品での乳がん再発リスクを否定…診療指針

日本乳癌学会は27日、2年ぶりに診療指針を改訂した。

 乳製品や、大豆製品に多く含まれるイソフラボンの影響を恐れて避けている患者も多いが、乳製品は発症予防効果がある可能性があり、再発や死亡への影響は証拠不十分とした。イソフラボンについても、再発の危険性を減らす可能性があるとした。

 乳製品は、最も少なく摂取した群よりも、最も多く摂取した群は発症の危険性が15%減少するとの研究報告を示した。低脂肪乳や閉経前の女性でより強く傾向が見られ、逆に脂肪含有量が多い乳製品は危険性を高める報告も示した。

 また、乳製品が再発や死亡に与える影響は、小規模な研究しかないうえ、摂取が多いほど死亡リスクが低いとの報告もあり、結論づけられないとした。

(2013年6月27日21時44分  読売新聞)

乳がんリスク高い女性に予防薬の投与を、英国立研究所が新指針

乳がんリスク高い女性に予防薬の投与を、英国立研究所が新指針
2013年06月26日 10:07 発信地:ロンドン/英国

【6月26日 AFP】英国立最適医療研究所(National Institute for Health and Care Excellence、NICE)は25日、英国内に数十万人いる乳がんの発症リスクが高い女性について、発症リスクを劇的に減少させる可能性のある薬剤の投与を受けるべきとする新指針を発表した。

 新指針は、乳がんの家族歴のある最大50万人の女性は、タモキシフェンまたはラロキシフェンを5年間にわたり投与する120ポンド(約1万8000円)の予防治療を受けるべきだとしている。

 タモキシフェンは、閉経後の高リスク女性を対象にした臨床試験で、浸潤性乳がんの発症リスクを約50%減少させることが分かっている。ラロキシフェンの臨床試験では、38%のリスク減が確認されているが、英国ではどちらの薬剤も予防治療用として認可されていない。

 新指針の策定に協力したガレス・エバンズ(Gareth Evans)教授は「タモキシフェンは非常に安価なため、費用対効果が非常に高い。乳がんの治療には数千ポンドもの費用が掛かる」と説明する。

 NICEの統計によると、英国では毎年、約5万人の女性と約400人の男性が乳がんを発症する。(c)AFP

外来化学療法に新拠点 愛知県がんセンター 7月オープン

外来化学療法に新拠点 愛知県がんセンター 7月オープン

(2013年6月28日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する
30床から60床に

来月1日にオープンする新外来化学療法センター=名古屋市千種区の県がんセンター中央病院で 愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)の新しい外来化学療法センターが7月1日にオープンするのを前に、27日、現地で開所式が開かれた。

 新しいセンターは鉄骨造り地下1階、地上2階建て。延べ2千平方メートルで、従来の30床から60床になった。総事業費は10億円。

 患者らはベッドかリクライニングチェアで約4時間かけて抗がん剤の点滴を受け、体調に問題がなければそのまま帰宅してもらう。

 開所式には医療関係者ら100人が出席。テープカットの後、県がんセンターの木下平総長が「熱意を注ぎ、先進医療を推し進めたい」とあいさつした。


「混合診療」の拡大方針って、どういうこと?

「混合診療」の拡大方針って、どういうこと?
2013/06/27 12:11配信

政府は規制改革実施計画の健康・医療分野において、混合診療の拡大方針を打ち出しました。まずは2013年秋をめどに抗がん剤から開始し、先進医療の対象範囲を広げていくとしています。

混合診療とは「保険診療+保険外診療」

 混合診療とは、健康保険が適用される保険診療と、全額自己負担の自由診療(保険外診療)とを組み合わせた診療のことです。日本では原則禁止とされ、一つの医療機関で同じ患者に保険診療と保険外診療が行なわれた場合には、本来保険が適用される分もすべて自己負担とされてきました。例えば、健康保険で認められた回数以上に検査を実施したり、健康保険がまだ適用されていない高度な医療を一般的な医療と同時に行なうといったことなどが混合診療にあたります。

 混合診療が禁止されてきた理由はいくつかありますが、最もよく引き合いに出されるのが、保険医療機関に関する規則の中にある特殊療法を禁じる項目です。つまり、有効性や安全性の不確かな医療を、保険医療機関で行なってはいけないということです。ただ、混合診療をはっきり禁止した法律がないということは、裁判所も認めています。

 このように原則禁止とはいえ例外もあり、厚生労働省の認めた先進医療や差額ベッド代などは、2004年から保険診療との併用・混在が認められるようになりました。これに当てはまる先進医療とは、厚生労働省の先進医療会議で有効性や安全性を確認した技術のことで、今年6月1日時点で107種類がリストアップされています。

「先進医療」扱いなら自己負担が軽減

 今回の規制改革計画は「先進医療ハイウェイ構想」と銘打ち、外部機関を入れて評価の新体制をつくり、先進医療のリストアップをもっと早く効率的に進めるというものです。

 これまで未承認の抗がん剤を使うには、治験に参加するか、全額自己負担で治療費が高額になるのを覚悟するしかありませんでした。例えば1か月分60万円の未承認薬を使い、併せて一般的な医療を30万円分受けたとすると患者の負担は90万円。未承認薬が先進医療に収載されれば、一般的な医療の30万円分に健康保険が適用されて9万円となり、自己負担額は69万円に減ります。

医者、患者の双方に賛否両論

 混合診療の規制緩和については、医療者、患者どちらの側にも賛否両論があります。 

 日本医師会は、医療は社会の共通資本であるという考えから、所得によって選べる医療に格差ができることや、保険診療の範囲を縮小させる恐れがあることなどを理由に、早くから混合診療への反対を表明してきました。一方、現場の医師の中には、現行制度のもとでは保険診療と保険外診療をわざわざ別の日に実施しなければならず、治療の分断を招いているとして解禁を望む人もいます。

 患者側では、新薬や新技術をいったん先進医療に指定してしまえば混合診療で治療が受けられることからかえって新しい医療の保険適用が遅くなるのではないかという意見があります。けれども、治療の選択の幅が広がることを歓迎する患者も多く、考え方はまちまちです。

 また、医療政策の面からみた場合、健康保険制度の財源が逼迫していることから混合診療の範囲拡大で保険財政の安定を期待する声と、公的保険制度の主旨に沿って本来は保険適用の範囲を拡大するべきという声とがあります。


混合診療「拡大」へ これまで禁止されてきたのは、なぜ?

2013年06月29日 12時55分
混合診療「拡大」へ これまで禁止されてきたのは、なぜ?

政府はこのほど、原則禁止されている「混合診療」を拡大していく計画を閣議決定した。規制改革の一環で、まずはこの秋をめどに、抗がん剤から解禁していくという。

混合診療とは、公的な健康保険が適用される「保険診療」と、適用されない「保険外診療」を組み合わせて行うことだ。「保険診療」とは、健康保険が適用される診療のことで、国が定めた治療費の1~3割を自己負担すれば済む。しかし「保険外診療」は健康保険が適用されないため、医療機関が決めた金額を全て自己負担しなければならない。

このような混合診療は、これまで一部の先進医療をのぞいて、認められていなかった。もし保険診療と保険外診療を組み合わせた場合、その全体が「保険外診療」として扱われてしまい、治療費は「全額自己負担」となっていた。つまり、保険診療か保険外診療か、二者択一しかなかったのだ。

だが、そもそも混合診療がダメとされてきた理由は何だったのか。「解禁」が医療に与える影響について、鈴木沙良夢弁護士に聞いた。

●選択肢は増えるが、将来的には保険適用の治療が減るという指摘もあるが、どのような理由か?

――国が混合診療を禁止してきた理由は?

「国が混合診療を原則禁止してきたのは、次のような理由からです。

(1)保険診療で十分なのに、医師が患者に保険外診療を求めるようになる

(2)安全性や有効性が確認されていない医療が、保険診療と併せて実施されてしまう」

――どんな法律で決まっている?

「混合診療を禁止した法律の明文はなく、最近までは厚労省の解釈によっていました。ようやく2011年10月25日の最高裁判決で『健康保険法86条等の規定から混合診療が禁止されている』という判断が出ましたが、現行の健康保険法は正面から混合診療の禁止を定めているわけではありません。

この最高裁判決の補足意見でも、混合診療の禁止については、国会でも十分な議論がされてこなかったことが指摘されています。これまで運用が先行してきた制度といえるでしょう」

――混合診療が全面的に解禁された場合はどうなる?

「患者側にとっては、保険適用をされていない治療法や医薬品を使いやすくなり、選択肢が増えるといわれていますが、保険適用外の治療費は自己負担となります。

一方で日本医師会などは、国が財政難のいま、混合診療を解禁すれば、保険診療の範囲が縮小していく可能性を指摘しています。長期的には国民皆保険が骨抜きになるという懸念を示して、いるものと考えられます」

医療制度そのものが大きく変わる可能性も、指摘されているということだ。政府は国民に対して、十分説明をする必要があるだろう。

2013年6月28日金曜日

早期乳癌に対する単回術中電子線治療は日本人でも安全に実施可能【乳癌学会2013】

学会スペシャル: 第21回日本乳癌学会学術総会
2013年6月27日~29日 浜松
2013. 6. 28
早期乳癌に対する単回術中電子線治療は日本人でも安全に実施可能【乳癌学会2013】

早期乳癌に対し、高エネルギー電子線を用いた単回術中電子線治療(single-fraction IOERT)は、日本人においても安全に実施可能な治療法と考えられることがフェーズ1試験から示された。6月27日から29日まで浜松市で開催されている第21回日本乳癌学会学術総会で、群馬県立がんセンター放射線治療科(現・筑波大学、茨城県地域臨床教育センター)の玉木義雄氏が発表した。

 乳房温存手術後の放射線療法として、照射期間を短縮し患者の負担を軽減するという観点から、1回当たりの放射線量を増やす加速乳房部分照射(APBI:accelerated partial-breast irradiation)が普及し、中でも術中照射(IORT:intraoperative electron beam radiation therapy)のみで治療を終えるsingle-fraction IORTが注目されている。

 術中照射については、1989年より欧州を中心に臨床試験が展開されている。single-fraction IOERTを検討したイタリアのELIOT試験では、フェーズ1試験で至適線量が21Gyと決定された。さらに全乳房照射(WBRT)と比較したフェーズ3試験も終了したが、結果はまだ発表されていない。また、英国を中心に行われたフェーズ3のTARGIT-A試験では、乳房内再発について、術中照射による部分乳房照射のWBRTに対する非劣性が初めて証明された。

 日本では術中照射専用装置の導入を契機として、2007年に名古屋大学でフェーズ1試験が開始され、フェーズ2試験と併せて、ELIOT試験と同じ線量である1回21Gyのsingle-fraction IOERTの安全性が確認された。

 群馬県立がんセンターにおいても、single-fraction IOERTのフェーズ1試験として、治療後3カ月以内のグレード3以上の非血液毒性を用量制限毒性(DLT)とする線量増加試験が行われた。

 対象は、腫瘍径3cm以下の乳管癌、広範な管内進展がない、胸壁・乳房への照射歴がないなどの条件を満たす患者で、術後病理診断で追加切除が必要と判断されたものは中止として扱うこととした。線量レベルとして、レベル1を18Gy、レベル2を21Gyとした。

 術式は乳房円状部分切除術(Bp)または乳房楔状部分切除術(Bq)とし、センチネルリンパ節生検を施行した。腫瘍辺縁から1cm以上のマージンをつけて切除した。

 乳癌術中照射では、腫瘍の切除後に乳腺組織の背側に遮蔽板を挿入し、円形照射筒を設置し、手術台を手術室内の照射専用装置(商品名:Mobetron)に移動して、ガントリと照射筒を整合させ、モニターで部位を確認し、治療開始となる。

 2008年11月から2009年3月までにレベル1(18Gy)で治療が行われた3人では、DLTは発生しなかった。有害事象としては、グレード1と2の乳房線維化が各1人に、グレード1の感染が1人に発現した。

 2009年8月から2009年11月までにレベル2(21Gy)で治療が行われた3人でも、DLTは発生しなかった。有害事象としては、グレード1の乳房線維化が1人、グレード1の乳房痛が1人に発現したのみだった。

 対象6人の背景因子をみると、年齢中央値は67歳、非浸潤性乳管癌(DCIS)が1人含まれた。術後の最短切除マージン(乳管内浸潤を含む)は、DCISを除く5人では5mmを超えていた。

 経過観察期間中央値46.5カ月において、5人では乳房再発を認めなかった。DCISの1人は36カ月目に乳房再発を認めた。

 フェーズ1試験で安全性が確認されたことから、玉木氏らは、名古屋大学、愛知県立がんセンターと共同で、2010年6月からフェーズ2試験を開始している。

 同試験では、乳房部分照射(Bq)+術中電子線照射21Gyで、切除断端から2cm以上含む範囲を照射することとしている。主要評価項目は有効性(患側乳房局所再発率)である。目標症例数は140人。選択基準には、腫瘍径2.5cmまでの乳癌、年齢50歳以上、術中迅速病理検査にて乳腺断端に腫瘍を認めない、術前あるいは術中センチネルリンパ節生検にてリンパ節転移を認めない、などが含まれる。

2013年6月14日金曜日

乳がん遺伝子に特許認めず 米最高裁が判決

【ワシントン共同】乳がんの発病リスクを高めるとされる遺伝子を企業が見つけた場合に特許が認められるかどうかなどが争われた訴訟で、米連邦最高裁は13日、人間の遺伝子は特許の対象にはならないとの判決を言い渡した。米主要メディアが伝えた。

 最高裁は一方で、人工的に合成された遺伝子については特許を認める場合もあるとし、研究を進める被告の米検査会社の主張も一部容認した。判決が研究に与える影響については、メディアの評価が分かれている。

2013/06/14 01:21   【共同通信】

がん予防の乳房切除

がん予防の乳房切除を承認 鹿児島の病院倫理委
(共同) 2013年6月13日 21時48分

 鹿児島市の相良病院(雷哲明院長)は13日、遺伝性乳がんの予防のため、健康な乳房を切除する手術を院内の倫理委員会が承認したと明らかにした。今後、希望者の事情に応じて倫理委で個別に審理し、実施の可否を判断する。現時点での希望者の有無は公表していない。

 切除手術は、米人気女優アンジェリーナ・ジョリーさんが受けたことで話題となった。国内では聖路加国際病院(東京都)が既に倫理委員会で承認。がん研有明病院(同)も倫理委に申請する方針だが、国内ではほとんど実施されていない。

 相良病院によると、発症リスクを高める遺伝子「BRCA1」か「BRCA2」に変異があった成人女性が対象。

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社説:乳がん予防手術 遺伝子診断知る契機に
毎日新聞 2013年06月13日 02時30分

 がんの多くは遺伝しないが、中には遺伝性のものがある。家系の中にがんにかかる人が多く、発病の年齢が若い場合は、要注意だ。

 そうした遺伝性のがんの中には、遺伝子診断で将来の発がんリスクを予測できるものがある。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが受けた乳がん遺伝子「BRCA1、2」の診断もそのひとつだ。

 米国のデータでは、この遺伝子のいずれかに変異があると、生涯で乳がんになる確率は最大で80%程度、卵巣がんになる確率が最大で60%程度と推定されている。多数の遺伝子と環境の影響で発病リスクが決まる通常のがんと違い、ひとつの遺伝子が発病リスクを大きく高める。ジョリーさんが行った「乳腺の予防的切除」が米国で「標準的な選択肢のひとつ」となっているのも、そのためだろう。

 ただし、乳腺切除には合併症などのリスクもあり、第一選択として勧められているわけではない。定期検診で早期発見に努めるのも、重要な選択肢だ。

 日本でも、乳がん遺伝子の検査は80以上の医療機関で受けられる。ジョリーさんのような未発症者の「予防的切除」の準備を進める病院も出てきた。気にかかるのは、日本では遺伝性のがんや遺伝子診断、発症予防についての正しい知識が行き渡っているとはいえない点だ。遺伝子変異がわかった場合に血縁者にどう伝えるかといった課題もある。

 医療関係者は、まず、遺伝性のがんや遺伝子診断の正しい情報をリスクがある人にきちんと伝えてほしい。その上で、遺伝子診断を受けるかどうか、予防のための選択肢は何か、リスクと利点を丁寧に説明する必要がある。

 日本には遺伝子変異とリスクを結びつけるデータが足りない点にも留意したい。欧米と変わらないとも言われるが、日本人のデータ集積も進める必要がある。日本では乳がんの遺伝子診断は保険が利かず高額だ。診断やそれに基づく検診を国がどう扱っていくかも検討してほしい。

 乳がんだけでなく、検診での発見が難しい卵巣がんのリスクにも注意が必要だ。遺伝性のがんには大腸がんや甲状腺のがんもある。乳がんだけにとらわれないようにしたい。

 医療に遺伝子情報が利用されるケースは、今後、ますます増えるはずだ。その際には、正しい情報を基に個人個人の選択を支える「遺伝カウンセリング」が重要だが、日本には専門の遺伝カウンセラーが少ない。ジョリーさんの選択で関心が高まったことをきっかけに、遺伝子診断について知識を広げ、そのあり方を改めて考えたい。

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愛知県がんセンター 乳がん予防切除、年度内にも可能に
(2013年6月14日) 【中日新聞】【朝刊】

遺伝子変異の患者 東海・北陸初 

 愛知県がんセンター(名古屋市千種区)は早ければ年度内に、遺伝性乳がんと卵巣がんの予防のための切除・摘出手術を実施できる態勢を整える。国内では聖路加国際病院(東京)が、遺伝性乳がん患者の、がんになっていないもう一方の乳房切除を既に実施。東海・北陸地方で、手術できる態勢に入るのは、同センターが初めてとみられる。

 遺伝性乳がんの予防的な切除手術は、米国女優アンジェリーナ・ジョリーさんが自ら受けたことを公表して話題になった。

 愛知県がんセンターでは年間500人が乳がん治療を受ける。今年4月から治療中の乳がん患者に対し、家族の発症歴や遺伝子変異で発症する確率、遺伝子検査について説明する遺伝カウンセリングを始めた。

 検査で遺伝子変異が確認された患者は、もう一方の乳房ががんを発症する確率が高く、さらに卵巣がんになる可能性も高い。岩田広治副院長は「遺伝子変異が分かった患者のために、選択肢を用意する必要がある」と言い、患者が予防的に乳房や卵巣を切除、摘出することを希望した場合に、応じられる態勢づくりを進めてきた。

 技術的には3年前から乳房再建術を開始。昨年、卵巣がん患者へ腹腔(ふくくう)鏡での卵巣摘出手術を始め、予防的手術をできる環境にある。近く院内の倫理委員会に申請し、年度内に手術が可能な態勢を整える。

 予防的手術は保険適用されず、全額自費。遺伝子検査と乳房切除・再建手術を合わせて約100万円程度になる見込み。岩田副院長は「将来的には保険診療の枠組みでできるようになるべきだ」と話し、一部保険適用となる「先進医療」として国に届け出る方針。

 東海地方ではほかに、藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)が腹腔鏡での予防的卵巣摘出手術について、院内の倫理委員会に申請中。乳房切除についても今後準備を進めていくという。

  遺伝性乳がんと卵巣がん  血液中のがんを抑制する遺伝子「BRCA1」または「BRCA2」の変異が原因で発症する。乳がん全体の中で、遺伝性の割合は全体の5%。変異があると、ない人に比べ、乳がんになる確率は10~19倍、卵巣がんは15~40倍高いとされる。

2013年6月9日日曜日

新勧告後も40代女性のマンモグラフィ検診受診率は低下せず/ジョンズホプキンス大学

2013年6月9日
海外癌医療情報リファレンス

公開日:2013年5月15日
毎年の検診が保険適応であることも受診率が低下しない理由か

米国の新ガイドラインでは40代女性は(定期的に受けるべきとされている50~74歳とは異なり)乳癌検診をルーチンとしては受けないよう勧告しているにもかかわらず、依然として40代女性が乳癌検診を定期的に受け続けていることがジョンズホプキンス大学の新たな研究で明らかになった。

2009年、米国予防医療専門委員会(USPSTF)は科学的証拠を改めて精査し、これまで推奨していた内容を変更し、50〜74歳の女性は従来どおりマンモグラフィ検診を2年に1回受診すべきであるが、血縁者に乳癌患者がいない40〜49歳の女性はマンモグラフィ検診の利点と危険性について主治医と話し合ったうえで個々に受診するかどうか判断すべきであるとした。

ジョンズホプキンス大学総合内科学教室の臨床研究医であるLauren D. Block医師・公衆衛生学修士とその同僚らは、このガイドラインの変更に伴ってマンモグラフィ検診を受診する40代女性の数が減少すると予測した。しかし、40代女性のマンモグラフィ受診率に変化は認められなかった。

「40代女性では検診の偽陽性率が高く不要な過剰検査(画像診断および生検)の実施につながるおそれがあるという科学的証拠があるにもかかわらず、患者さん・・・そしておそらく検査を実施する側も、検診の中止には消極的のようです」とJournal of General Internal Medicine誌の電子版に掲載された研究のリーダーであるBlock氏は語る。「女性達は『マンモグラフィが生命を救う』というメッセージを何度も聞かされてきたため、どうしてもマンモグラフィ検診を受けたいと思っているのです」。

この研究では、マンモグラフィが若齢女性に与える影響は正負両方であることが示された。マンモグラフィ検診は若齢女性における乳癌検出率を高めるが、死亡率への影響はごく僅かしかない。この研究によると、むしろ過剰診断や不要な治療(生検、腫瘍・乳房摘出術、何週間にもわたる放射線治療や危険性のある薬剤の投与など)につながる可能性がある。検診結果が偽陽性であった場合、不要な治療の実施や心理的外傷を与える原因となる。検診で発見される癌の悪性度は非常に低い場合が多いにもかかわらず、積極的に治療されてしまう。

他の多くの癌と同様に乳癌も加齢性疾患であり、加齢に伴って発症リスクが高まるため、高齢女性はマンモグラフィ検診を受診することが推奨される。

USPSTFガイドラインの修正原案では40代女性の検診に伴うリスクが強調されていたが、政治団体やアドボカシー団体の反発を受け、患者と主治医間で相談して個々に判断すること、という表現で妥協する形になった。米国がん協会は、依然として40歳からマンモグラフィ検診を毎年受診するよう推奨している。

さらに、保険会社がこれまでどおり40代女性のマンモグラフィ検診費用を支払っていることも検診の受診率が低下しない理由であるとBlock氏は述べる。

Block氏とその同僚らは2006、2008および2010年に全米で州保健局が実施したBehavioral Risk Factor Surveillance Systemの調査データを用いて解析を行った。40〜74歳の女性484,296人分のデータが収集された。2006年と2008年では40代女性のマンモグラフィ受診率が53%であるのに対し、50〜74歳では65%であった。新勧告の施行後である2010年のマンモグラフィ受診率は、40代女性が52%、50〜74歳が62%であった。また、このUSPSTFの勧告では一般的な乳癌リスクを有する76歳以上の女性においても検診の有益性はないとしている。

Block氏は、自身が40代の患者とマンモグラフィ検診の是非について話す際にも、検診間隔の変更をためらう患者がいる、と話す。50歳までマンモグラフィ検診を受けなくてもよいと聞いて安心する患者もいる。その一方で、より多くの患者がこれまでどおり検診を受けることを希望している。

「女性の死因では心血管系疾患が圧倒的首位を占めているのですが、概してメディアや社会では乳癌に対する関心が非常に高いのです。誰もが自分は乳癌対策をしていると感じたいのです」とBlock氏は語る。「ある40代女性にマンモグラフィ検診で癌がみつかり、治療を受けて大変よくなったという逸話を聞いただけで周囲の他の現実が目に入らなくなるのです。検診を受けたいと思ってしまうのです」。

本研究に従事したその他のジョンズホプキンス大学研究者は以下のとおり:Marian P. Jarlenski, M.P.H.、Albert W. Wu, M.D., M.P.H.、および Wendy L. Bennett, M.D., M.P.H.