2015年11月29日日曜日

印刷できる体温計が開発された

2015年11月27日

絆創膏型の体温計ができるかも。

東京大学大学院工学系研究科の研究グループが、グニャグニャ曲がる薄っぺらいプラスティック製の温度計を作成した。しかも、この温度計は、印刷プロセスで作成できるという。

柔軟で薄っぺらいので、ウェアラブルデバイスだけでなく、衣類や絆創膏などの医療品への搭載も可能になる。

更に、精度が高いと言うからかなり有望なデバイスとなりそうだ。

薄っぺらだが高性能な温度センサー

この薄っぺらな温度計は、柔軟でもあるため、生体組織に貼り付けて表面温度の分布を測定することもできる。

グラファイトを添加したポリマーでできたこの温度センサーは、プリンタブルな上にフレキシブルだ。
しかも感度が良く、0.02℃の変化を測定でき、僅か100ミリ秒という素早さで応答する。

この温度センサーが、どれほど優れているかという実験が行われている。

ラットの肺の表面温度を計測したところ、呼吸で吐くときと吸うときでは肺の温度が約0.1℃異なる事を世界で初めて突き止めたのだ。

この実験によって、恒温動物の体温調整の絶妙さが分かったわけだ。勿論、この温度センサーが生体組織に貼り付けられることで、表面温度を高精度で計測できることも分かった。

様々な応用分野が期待される

今回発表された温度センサーの様な、デバイスを印刷プロセスで作成する技術を、“プリンテッドエレクトロニクス”と呼ぶ。

“プリンテッドエレクトロニクス”は、省資源化や低コスト化に優れているため、次世代フレキシブルデバイスの製造手法として注目されている。

また、今回“プリンテッドエレクトロニクス”によって作成された温度センサーは極薄であるため、ウェアラブルデバイスへの応用が期待されている。

一方、0.02℃という高い感度と100ミリ秒という速い応答速度、そして1,000回以上繰り返し温度が上がり下がりしても再現性が高いこと、さらに曲率半径700マイクロメートルの曲げにも耐えることから、ヘルスケア、医療などへの活用にも期待されている。

例えば、絆創膏にこの温度センサーを印刷して、皮膚に貼り付けて温度計測したり、術後の患部や炎症部分に貼り付けることで、局所的な発熱を捉えていち早く体温の異常をモニターすることも可能になる。

その他、曲げに強いことから、スポーツウェアなどに採用することも考えられているようだ。

様々な分野での実用化が期待される温度センサーである。

外来化学療法の普及の裏に「見えない医療費」

2015/11/29 連載: 日経デジタルヘルス Selection

「見えない医療費の問題は大きい。抗がん剤の外来化学療法を進めようと言われているが、患者の距離は無視されている。現実として、通院費がないということもある」──。こう語るのは、帝京大学医学部第三内科教授の小松恒彦氏だ。

ゾウが、がんになりにくいのはなぜか、それを人間に活用する方法について/英国医療サービス(NHS)

海外癌情報リファレンス 2015年11月28日 

英国医療サービス(NHS) 2015年10月9日金曜日

「ゾウは腫瘍形成に対する防御力を高めている可能性がある」とBBCニュースが報じた。

ゾウは長年、進化生物学者達にとって謎であった。体が大きいことはがん化する可能性のある細胞も多いということであり、先週の記事「背の高い人について」にも見られるように、ゾウのがんによる死亡率は平均を超えているに違いないと予想される。

しかし、ゾウの場合には当てはまらない。がんで死亡するゾウは20頭に1頭に過ぎない。これに比べてヒトでは5人に1人である。本研究の意図は、その理由を解き明かし、ヒトへの応用の可能性を探ることであった。

研究者は、アフリカゾウおよびアジアゾウから白血球を採取し、ゾウがTP53遺伝子を少なくとも20コピー持っていることを見出した。TP53遺伝子はDNAが損傷したとき細胞の「自殺」を促進し、その後のがんを発現する可能性を残さないことで知られている。これに対して、ヒトはTP53遺伝子のコピーを1つしか持っていないと考えられている。

当然出てくる重大な疑問は、言うなれば室内のゾウである私たち人間は、どうすればTP53遺伝子の活性を高めて、同様の防御作用を刺激することが可能かということである。その答えは単純で、分からないのである。研究者の間では、TP53遺伝子の作用は1979年から知られているが、現在のところ、その作用の活用についての喜ばしい報告はほとんどない。

今の段階では、予防は治療よりも有効である。既に立証されている、がんのリスクを減らす方法には、禁煙する、野菜や果物の多い健康的な食事を摂る、健康体重を維持する、定期的に運動する、日焼けを避ける、アルコール摂取は適度にすることなどが含まれている。

研究の出典

本研究は、ユタ大学、ペンシルベニア大学、リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・ゾウ保護センター、アリゾナ州立大学、およびカリフォルニア大学の研究者によって実施された。

米国エネルギー省、米国国立衛生研究所(NIH)、乳がん研究プログラム、ハンツマンがん研究所(HCI)核コントロールプログラムなど米国の複数の機関による研究助成を受けている。

本研究は査読誌であるJournal of the American Medical Associationで公表された。

全般的に、英国メディアで広く取り上げられ、正確かつ責任ある報道がなされた。しかし、研究の限界の一部はあまり明確に説明されていない。

研究の種類

本研究は主として実験室内で実施され、様々な動物種におけるがん発生率を比較し、一部の動物が他の動物よりも「がんに対して抵抗性を示す」理由を明らかにすることが目的であった。

ゾウやライオンなどの大型動物は、がん化するおそれのある細胞をより多く持っているため、小型動物よりもがんになる確率が高いであろうと予想される。しかし通常はそうではなく、これはペトのパラドックスといわれている。

本研究は、ゾウががんに抵抗性を示す理由を明らかにすることに重点を置き、ゾウ、健康な人、がんになりやすい患者の細胞がDNAの損傷に対し、どのように反応するかを比較した。DNAの損傷は、細胞をがん化させる原因となる可能性がある。がんにかかりやすい患者は、特に子供および若年成人でいくつかの種類のがんを発現するリスクが増加する、まれな疾患であるリー・フラウメニ症候群(LFS)であった。

インビトロ、すなわち実験室における研究では、各細胞がさまざまな曝露にどのように反応するかを理解することを特徴としている。しかしながら、管理された環境下で単一の細胞についてのみ評価するため、結果が生体内と異なる可能性がある。これは、一つの生体内でも多くの異なる細胞が複雑に、相互に作用し合うためである。

研究内容

研究者は最初に、サンディエゴ動物園の動物の14年間のデータを収集し、がんの発生率が体の大きさ、あるいは寿命に関係するかどうかを調査した。

また、エレファント・エンサイクロペディアのデータを収集し、アフリカゾウおよびアジアゾウの死因を分析した。研究者は本データを、がんの生涯リスクと様々な動物種のがんによる死亡リスクの算出に用いた。

次に、8頭のアフリカゾウとアジアゾウ、LFS患者10名、および、がんの家族歴のない人11名(健康な対照群)から血液を採取し、白血球を分離した。特に異なる動物の細胞が持つTP53遺伝子のコピーの数を重点的に調べた。TP53遺伝子は、ヒトと動物のどちらにもみられる腫瘍を抑制するタンパク質を産生する。

さらに、細胞中のDNAに損傷を与えるような条件に曝露された場合の細胞の反応を調べた。このような状況では、細胞は分裂を停止しない場合、DNAの損傷を正しく修復するか、細胞の「自殺」によって死ななければ、がん化する可能性がある。

結果

バッタネズミなど極小型から非常に大型(ゾウ)の動物まで、ヒトを含む合計36種類の哺乳類が分析対象となった。主な結果は次の通りである。

・動物の体の大きさや寿命によるがんのリスクの変化はなかった。
 ・エレファント・エンサイクロペディアの644頭のゾウのうち約3%が生涯でがんを発現した。
・ゾウの白血球にはTP53腫瘍抑制遺伝子が少なくとも20コピーあった。一方、ヒトの細胞にはこの遺伝子のコピーが1つしかなかった。
 ・これらの余分の遺伝子のコピーには活性があるという科学的根拠があった。
 ・ゾウにおけるDNA損傷に対する細胞の反応性は、ヒトに比べ有意に上昇していた。
 ・ゾウにおけるDNA損傷後の細胞の自殺は、健康なヒトの細胞よりも起こりやすく、一方、LFS患者の細胞ではDNA損傷後の細胞の自殺はほとんど起こらなかった。

結果の解釈

研究者たちは、ゾウは、他の種の哺乳類に比べてがんの発症率が予想より低く、これにはTP53遺伝子の複数のコピーが関係している可能性があると結論した。

ゾウの細胞ではヒトの細胞と比較して、DNA損傷後の「細胞の自殺」が多く示された。

「これらの結果は、再現されれば、がんの抑制に関わる機序を理解するための進化論ベースのアプローチとなり得るであろう。」

結論

本研究では、36種の哺乳類のがんのリスクを評価し、がんの発症率は動物の体の大きさや寿命とは関連していないことが確認された。したがって、研究ではゾウが体の大きさから予想される以上に、がんに抵抗性を示す理由を探ることに重点が置かれた。

研究者は、ゾウがTP53遺伝子を20コピー持っていることを見出した。TP53遺伝子は腫瘍を抑制する働きがあり、ヒトにはこのコピーが1つしかない。

実験室内での研究では、ゾウの細胞はヒトの細胞よりもDNAが損傷した時の細胞の自殺を多く起こし、細胞をがんの原因となり得る変異から保護していた。

この研究の結果は興味深く、ゾウのがん発症率が予想より低い理由の一つを明らかにした可能性がある。

ペトのパラドックスに根拠を与える事実を調査することによって、将来人間のための新治療法の発見に至る可能性が期待される。

しかしながら、がんの発現には多くの遺伝子、さらに環境因子も関与しているとみられる一方、この研究では1つの遺伝子しか調査されなかった。

生まれ持った遺伝子に対してできることは少ないが、がんのリスクを減らすために実践できる方法は複数ある。

ハダカデバネズミ

30年の寿命があるにもかかわらず、めったにがんを発現しないと考えられている動物に、アフリカのサバンナ原産で穴を掘って住んでいるげっ歯類に属するハダカデバネズミがある。

この事実から、「柔軟な皮膚ががんを防ぐ可能性がある」という気の早い主張や、さらに、動物が「がんの万能治療法」へのカギを握っているという主張まで出ている。

ハダカデバネズミの分野では真に興味深い結果が出ている一方、このような主張に根拠はない。

2015年11月26日木曜日

ジェネリックに医師が不信感 同じ材料でも同じ薬にならない

2015年11月25日 16時0分 NEWSポストセブン

11月6日、厚生労働省は医師などを対象に行なったジェネリック医薬品についての意識調査の結果を、中央社会保険医療協議会に報告した。

 それによると、病院勤務の医師のうち54.9%、つまり半数以上が、現在のジェネリックに対して「不信感がある」と回答。その主な理由は、先発医薬品との「効果・副作用の違い」(67.9%)、「使用感の違い」(38.6%)などである。

 ジェネリックは、医薬品の「有効成分の特許」が切れた後に発売される低価格の後発薬で、年々かさむ医療費を抑えるための「救世主」と目されてきた。

 新薬の開発には臨床試験などの費用として数百億円かかるといわれるが、先発薬と同じ有効成分を使うジェネリックは臨床試験が大幅に割愛されるため、開発費が節約され、薬価が抑えられる。先発薬と比べて3~5割安くなる場合もある。

 厚労省によると、2012年度の国民医療費は約39兆2000億円。2025年度には55兆円を超えるとみられている。ジェネリックの利用が増えれば患者個人の医療費だけでなく、国民医療費を大幅に削減することにもなる。

 政府は今年5月、2020年度末までにジェネリックの普及率を80%以上に引き上げるとする目標を掲げ、医療財政を健全化するための施策とした。

 そんな中で発表された今回の調査結果は、医療業界で大きな話題となっている。医師たちがジェネリックに不信感を抱く主な理由である先発薬との「効果、副作用の違い」は、“特許が切れた後”という部分に起因している。

『なぜ、あなたの薬は効かないのか? 薬剤師しか知らない薬の真実』(光文社刊)の著者で薬剤師の深井良祐氏が解説する。

「医薬品の特許は、有効成分そのものの『物質特許』や薬の製造過程に関わる『製剤特許』など様々です。最初に切れるのが『物質特許』で、多くのジェネリックはこの特許だけを真似して出されています。

『製剤特許』が切れるまでは成分と用量は先発品と同じでも、製剤法は同じではないのです。さらに薬は有効成分だけでなく、添加物も含まれます。剤形(錠剤、カプセル、粒状などの形)の違いで効果に差が出る可能性もあります」

 つまり、ジェネリックと先発薬は「完全に同じ薬」ではない。

 双方を治療で使用した場合に全く同じ効果が出るかどうかを検証した調査は存在しない。患者がジェネリックに切り替えたところ、発作の悪化や副作用の出現が報告された事例もあるという。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦氏は次のように語る。

「添加物や剤形が変わると、薬の溶け出す速度が変化したり、有効成分が分解されやすくなったりします。人によっては効きすぎたり効果が出にくかったりする。同じ料理を同じ材料、分量で作ったとしても、違う調味料が加われば異なるレシピとなり、味も変わるのと同じことです」

 前出の深井氏は、実際に効果の差が表われやすい医薬品を挙げる。

「たとえば、喘息を治療するための貼り薬のジェネリックを敬遠する医療従事者は多い。貼り薬は肌にピタッと貼ることで徐々に薬が溶け出していく。溶け出しのタイミングは、製剤方法に左右されます。それが真似できない状況でジェネリックが次々と出てくるため、効果に違いが表われやすいのです。その他にも“外用薬”といわれる湿布や点眼薬、塗り薬などは、効果に差が出やすいと言われています

※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号

2015年11月25日水曜日

各患者に必要な検査結果をお薬手帳に記録

私のおくすり手帳。入院中で院内処方だった。
私のおくすり手帳。ホルモン治療中。
私は「おくすり手帳」に自分の汚い手書きで、受けている治療の内容(抗がん剤の種類、LH-RHアゴニスト、など)、血液検査で良くなかった結果の数値など、このブログの右サイドにある「治療歴」のような内容を記している。処方された薬を自宅で飲んだかどうか、市販薬を服用した時はそれも書き足している。ざっくりとだけど、自分がどういう治療を受けているかを把握できるので、とても便利だと感じている。だから、下記の試みはとても有効なんじゃないかと思う。

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各患者に必要な検査結果をお薬手帳に記録
excel VBAを用いて検査結果を出力し、お薬手帳に貼付
2015/11/25 日経DI

希望する患者さんのお薬手帳に、検査結果を貼付するようにしています。そうすることで、患者さんは検査結果に興味を持ち、自分のどの部分が悪いのか意識するようになり、治療に前向きになりアドヒアランスが向上するものと考えています。

2015年11月23日月曜日

豆乳に女性ホルモン(エストロゲン)補充の効果

 2015年11月23日

7日の日本女性医学会において、マルサンアイと長崎大学は、豆乳を摂取することで、女性ホルモン(エストロゲン)の欠乏による骨格筋の萎縮や筋力低下が抑制され、骨格筋幹細胞の増殖能や筋分化能が改善することを確認したと発表した。

研究グループが実施したマウスを用いた試験において、エストロゲンの欠乏により骨格筋の萎縮や筋力低下を引き起こすが、補充することで、これらが抑制されるという結果が出た。

豆乳は良質な植物性たんぱく質やエストロゲン様作用のある大豆イソフラボンを豊富に含み、食品という形でエストロゲンを補充できる可能性があるとしている。

閉経後の女性、過度なダイエットによる低体重の若年女性、厳しい食事制限やトレーニングを行う女性アスリートなどは、エストロゲンの欠乏を起こしやすいという。

2015年11月17日火曜日

医師と予後を話し合うことは進行がん患者に有益/NCIブログ〜がんの動向〜

NCI(アメリカ国立癌研究所) » NCIブログ~がんの動向~ » 2015年11月17日

2015年10月30日
NCIブログ〜がんの動向〜

新たな研究によると、担当医と予後について話し合った進行がん患者は、話し合いをしなかった患者よりも、平均余命について現実的な予測をしていた。さらに、このような話し合いは患者の幸福感を損なうことや、医師との関係を損なうこともなかった。

本研究では、担当医と予後について話し合った患者は、話し合わなかった患者よりも、終末期ケアを計画し、終末期には積極的治療よりも緩和ケアを望む傾向にあったことも示された。

これらの知見は、Journal of Clinical Oncology誌10月5日号で発表された。

これまでの研究から、がんが治癒可能かといった予後情報を大多数の進行がん患者が求めていることが示唆されてきた。しかし、進行がん患者が具体的な余命に関する情報を常に求めているのか、またこのような詳細を知ることが患者にどれほどの影響を与えるかについての研究はほとんどない。

これらの疑問を調査するため、Weill Cornell 医科大学のHolly Prigerson医学博士らは、緩和的化学療法を少なくとも1回受けた転移性がん患者590人を対象とした研究を行った。

患者は、研究開始前にインタビューを受けた後、死亡(または研究終了時)まで追跡調査された。予後についての話し合い、および余命に関する情報への興味について報告することに加え、患者は自身の平均余命を推定した。また、担当医との関係、苦痛の程度、事前指示書を作成済みであるか、終末期ケアについての希望についての質問にも回答した。

結果を解析すると、研究に参加した患者が予後について知りたかった内容と、実際に告げられたことを思い出した内容には大きな乖離があることが明らかとなった。患者の71%は平均余命についての情報を求めていたが、医師から予後の推測を告げられた患者は18%にも満たなかった。

「末期がん患者の大多数が予後を知りたがっているという事実は驚くほど勇敢であると思われる。また、担当医から余命を知らされたと報告した患者が18%にも満たないことは残念である」とPrigerson氏は述べた。

本研究に参加した患者の多くは、これまでの研究で報告されてきたのと同様に、余命について「実に楽観的」であった。医師と患者が予後について話し合うことで、患者に悲しみや不安を与えずにこれらの誤解を正すことができるかもしれないということをこの新たな結果が示唆している。

「予後について医師と患者で話し合うことで感情面の悪影響はなかった」とPrigerson氏は述べたが、「誰もがそうであるように、医療提供者は厳しい話題を話し合いたがらないことが多い」と加えた。

正確に余命を推定することが難しいことや、患者がその見積もりを知りたがっているかどうかが不確かであることも含め、医師が末期患者と予後について話し合うことを避けるのには、他の理由があるかもしれないと本研究の著者は述べた。

こういった話し合いを持つことは困難ではあるが、特に将来の計画を立てる手段として、予後についてもっと頻繁に最新の情報を得ることで恩恵を受ける患者は多いかもしれないということを新しい知見は示唆している。「担当医から予後の情報を開示してもらったと報告した患者は、DNR(蘇生処置拒否)指示をし、緩和ケアを望む傾向にあったことは心強い」とPrigerson氏は述べた。

本研究にはいくつかの限界がある。例えば、患者からの自己申告の回答には思い出しバイアスが生じている可能性があり、本研究で示された関連性は因果関係を示していないと筆者は述べた。
Prigerson氏は、予後の情報がすべての患者にとって有益であるわけではないということも警告した。

「悪い知らせを聞いたり、処理したりする準備ができていない患者もいるかもしれない。自分の将来は医師の手中ではなく神の手中にあると考え、重要でないとして拒否する患者が、実際に情報を提供されることがあるかもしれない」と説明した。

こうした場合、「その状況になることで、益となるより害になる。しかし以前の研究では、予後についての情報を得ることは90%以上の患者にとって有益であり、宗教的、心理的または社会的な理由で有益ではないという患者は少数派であるということがわかっている」とPrigerson氏は続けた。