2013年12月14日土曜日

エリブリンが未治療のHER2陰性局所再発・転移乳癌でも高い抗腫瘍活性示す

学会スペシャル: サンアントニオ乳癌シンポジウム2013
2013年12月10日~14日 San Antonio, U.S.A.
エリブリンが未治療のHER2陰性局所再発・転移乳癌でも高い抗腫瘍活性示す
2013/12/14

微小管阻害薬エリブリンが、HER2陰性の局所再発乳癌または転移乳癌(MBC)に対する1次治療として、高い活性を有することが、多施設共同のフェーズ2単群試験で示された。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているSan Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)において、米国Texas Oncology-Dallas Presbyterian HospitalのKristi McIntyre氏が発表した。

 非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤エリブリンは、局所再発もしくは転移性乳癌の全生存期間(OS)を改善することが、エリブリンと治験医師が選択した治療法(対照群)を比較したフェーズ3試験(EMBRACE)で明らかになっている。同試験では、多くがHER2陰性の転移乳癌(MBC)で、すべての患者が、試験前に再発または転移疾患に対する2レジメン以上の治療を受けていた。

 本試験では、再発・転移疾患に対する治療歴のない患者を対象とした。登録基準は、18歳以上の女性、局所再発またはMBC、HER2陰性、余命24週以上、ECOG PS 0-2、ネオアジュバント/アジュバント化学療法後12カ月以上、放射線療法、ホルモン療法後2週間以上、腎機能/骨/肝機能正常。

 エリブリンは3週毎に第1、8日に1.4mg/m2を2-5分で静注。主要エンドポイントは奏効率(ORR)、副次エンドポイントは安全性と忍容性、反応までの時間、反応時間などとした。

 56例が少なくとも1回のエリブリン投与を受け、32例(57%)が6サイクルを完了した。サイクル数中央値は7(1-43)。42例(75%)が何らかの乳がん治療を受けており、うち38例(90.5%)がネオアジュバントまたは/かつアジュバント療法を受けていた。タキサン治療歴があった患者は25例、アントランサイクリン系の治療歴ありは27例だった。

 奏効率(0RR)は28.6%(16/56例、95%信頼区間:17.3-42.2)だった。タキサン/アントラサイクリンによるネオアジュバントまたは/かつアジュバント療法を受けた患者のORRは27.3%(9/33例)、臨床ベネフィット率(CBR)は45.5%(15/33例)で、全患者と同様だった。

 ER陽性(ER+)の患者41例では、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)12例と比較して、より大きな臨床ベネフィットが認められた(ORR 34.1%対16.7%、CBR 64.3%対25.0%、疾患コントロール率85.4%対50.0%)。

 PRを得た16例の反応までの時間(TTR)は中央値で1.4カ月(95%信頼区間:1.2-2.7)、反応時間(DOR)は5.8カ月(95%信頼区間:4.7-10.6)。

 25%以上の患者で認めた(全グレード)治療関連の有害事象は、脱毛、好中球減少、疲労、末梢神経障害、吐き気、貧血、白血球減少、便秘、下痢だった。36例(64.3%)が、グレード3/4の治療関連有害事象を経験した。重度の有害事象は5例(8.9%)。発熱性好中球減少が3例(5.4%)、好中球減少が3例(5.4%)、白血球減少が1例(1.8%)。

 有害事象による減量/治療中断/延期は30例(53.6%)、治療中止は6例(10.7%)。22例(39.3%)が最初の投与から平均2.6週(18日)でG-CSFの投与を要した。

 McIntyre氏は「エリブリンは、十分に治療を受けたHER2陰性MBCのみならず、未治療のHER2陰性MBCにおいても、高い活性を有することが示された。安全性プロファイルも、これまでに知られているものと一貫性があった。今後、フェーズ3試験を経て、未治療MBC患者でも使用可能になることを期待する」とした。

早期乳癌の術後補助療法でのビスホスホネート投与は閉経後患者の骨再発リスクと乳癌死リスクを減らす

学会スペシャル: サンアントニオ乳癌シンポジウム2013
2013年12月10日~14日 San Antonio, U.S.A.

早期乳癌の術後補助療法でのビスホスホネート投与は閉経後患者の骨再発リスクと乳癌死リスクを減らす
2013/12/14

早期乳癌患者の術後補助療法としてビスホスホネート(BP)製剤を投与すると、閉経後患者の骨再発のリスクを減らし、乳癌死のリスクも減らすことが明らかとなった。無作為化試験のメタ解析の結果示されたもの。骨再発のリスクを34%、乳癌死のリスクを17%減らした。しかし骨以外の最初の遠隔再発は有意に減らさなかった。ビスホスホネートの投与は閉経前の患者には影響しなかった。また、非乳癌死、対側乳癌、局所再発についても影響は与えなかった。

 12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、the Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)'s Bisphosphonate Working Groupを代表して、英Sheffield Cancer Research CentreのColeman R氏によって発表された。

 研究グループは、術後補助療法としてBP製剤投与群と非投与群またはプラセボ群を比較した無作為化試験36件2万2982人の結果から、22試験1万7791人のデータを受け取り、メタ解析を行った。

 その結果、全再発については、1万7709人で3408イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は25.4%、非投与群は26.5%だった(Logrank 2p=0.08)。遠隔再発は1万7709人で2835イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は20.9%、非投与群22.3%だった(Logrank 2p=0.03)。

 骨再発については1万7709人で888イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は6.9%、非投与群は8.4%だった(Logrank 2p=0.0009)。非骨遠隔再発は1万7709人で1947イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は15.0%、非投与群は15.1%だった(Logrank 2p=0.71)。

 局所再発については1万7709人で698イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は6.3%、非投与群は5.5%だった(Logrank 2p=0.27)。対側乳房の再発については1万7709人で218イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は2.5%、非投与群は2.4%だった(Logrank 2p=0.96)。

 閉経後乳癌に限定したところ、1万1036人中遠隔再発は1564件起きており、10年の再発率はBP製剤投与群は18.4%、非投与群は21.9%だった(Logrank 2p=0.0003)。骨再発は508件起きており、10年の再発率はBP製剤投与群は5.9%、非投与群は8.8%だった(Logrank 2p<0.00001)。非骨再発は1056件起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は13.3%、非投与群は14.3%だった(Logrank 2p=0.24)だった。

 骨再発を閉経状態と組み合わせると、年間のイベント率の比は閉経前の患者では差がなく、閉経後の患者で差があった。骨以外の部分の再発については、閉経前と閉経後に差はほとんどなかった。BP製剤の種類で分けても閉経後の患者で効果が高かった。

 全患者を対象に乳癌死について調べたところ、10年時点の死亡率はBP製剤投与群は16.9%、非投与群18.7%だった(Logrank 2p=0.04)。非乳癌死はどちらも5.3%で差がなかった(Logrank 2p=0.96)。

 閉経後患者の乳癌死は、10年時点ではBP製剤投与群は15.2%、非投与群18.3%だった(Logrank 2p=0.004)。全死亡率はBP製剤投与群は21.5%、非投与群23.8%だった(Logrank 2p=0.007)。

乳癌術後AI剤による関節痛は運動療法で緩和できる可能性

乳癌術後AI剤による関節痛は運動療法で緩和できる可能性
2013/12/13

乳癌手術後のアロマターゼ阻害(AI)剤による関節痛を運動慮法で緩和できる可能性が明らかとなった。無作為化臨床試験HOPE(Hormones and Physical Exercise)の結果示されたもの。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、米Yale UniversityのMelinda L. Irwin氏によって発表された。

 HOPE試験は1期から3C期のホルモン受容体陽性乳癌患者で、少なくとも6カ月間AI剤を服用し、軽度以上の関節痛を経験している121人の閉経後女性を運動療法群(61人)と通常療法群(60人)に割り付けて行われた。両群の患者とも6カ月後、12カ月後の来院で評価された。

 関節痛の評価はBPI(Brief Pain Inventory)スコアで行った。BPIスコアは0点から10点までで点数化され、3から4点は軽度の痛み、5から7点は中等度の痛み、8点から10点は重度の痛みと評価される。

 運動療法群には週2回の筋力強化トレーニング(6種類の共通した運動の8回から12回繰り返しの3セット)、週に2.5時間の中等度の有酸素運動が行われた。通常療法群には運動の勧めなどの文書を提供し、毎月AI剤の服用遵守の電話を行った。
 
 参加した患者は運動能力はあるが運動が不活発(1週間に90分未満)の過体重の女性で、60代のほとんどが非ヒスパニックの白人だった。高度な教育を受けており、診断後2年、AI剤を1.5年服用しているステージ1、2の患者がほとんどだった。

 試験の結果、12カ月後の運動活性は運動療法群の平均が158.9分/週、通常療法群が48.9分/週で有意(p=0.0001)に差がついていた。運動療法群の週2回の筋力トレーニング実施の平均は70%。最大酸素摂取量は運動療法群は6.5%増加し、通常療法群は1.8%減少した。体重は運動療法群が3%減少し、通常療法群は変化がなかった。

 BPIスコアは最悪の痛み、痛みの重症度、痛みの干渉のいずれも、運動療法群でのみベースラインから12カ月後で有意(p<0.05)に改善していた。改善度合いは運動の遵守が80%以上の患者のほうが80%以下の患者よりも高かった。

2013年10月16日水曜日

ジエンド・オブ・イルネス ~ がん治療医がたどり着いた「病気の真実」

特定の遺伝子の変異はがんとの関連が指摘されている。たとえば、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の変異は乳がんのリスクを高めることがわかっている。この変異は、アシュケナージ系ユダヤ人によく見られるが、それが乳がんを引き起こすわけではないことを理解しておく必要がある。BRCA1あるいはBRCA2の変異を親から受け継いでいても、乳がんになると決まっているわけではないのだ。

 このように、がん遺伝子と言われるものの多くは、がんに対する脆弱性を伝えはするものの、がん自体を伝えるわけではない。BRCA1とBRCA2の変異遺伝子は、DNAの修復を妨害すると予測されるが、必ずしも乳がんの発症につながらないのは、DNAを修復する方法は、ほかにもたくさんあるからだ。さらに言えば、乳がんに苦しむ女性の大多数は、変異していないBRCA遺伝子を持っている。この事実は、がんの発症に、遺伝子より強く影響する何かが存在することを語っている。

 ここでもう一度、システムという見方に戻ってみよう。がんは、細胞内、あるいは細胞間の対話(つまり、システム)がうまくいかなくなった状態である。その結果、細胞たちは、分裂すべきでないときに分裂し、死ぬべきときに死のうとせず、不要な血管を作り、互いを欺き続けるのだ。このように制御不能になった細胞システムを、私たちはがんと呼び、それが起きている体の部位(肺、前立腺、肝臓など)によって呼び分けている。しかし、それは実は「悪いもの」ではなく、システムが壊れた「状態」なのだ。

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2013年8月26日月曜日

通院日

初めて新しい化学療法室の中に入ってリュープリンを打ってもらった。中庭まであり開放感のあるとってもキレイな空間になっていた。椅子の前にはテレビが、、、、イイ! 再発して抗がん剤投与を受けるとなったら、利用してみたいな。椅子もベッドも数が増えているから待ち時間も大幅に短縮したに違いない。

あと薬局で聞かれて気が付いたけど、いつのまにかホットフラッシュが無くなってる。良かった。

2013年8月18日日曜日

ノバルティス  アフィニトール、肝細胞がんの開発中止

( 2013年8月12日 )

スイス・ノバルティスは12日までに、抗がん剤「アフィニトール」(一般名=エベロリムス)について、進行性肝細胞がんの適応での開発を日本を含む全世界で中止すると発表した。

2013年8月12日月曜日

ホルモン療法 開始から5年後の選択、、、

ノルバデックスを10年間かアリミデックスにスイッチか

新しいガイドライン2013年度版>> 治療前は閉経前であったが、タモキシフェンの5年投与を完了し、閉経が確認された場合はアロマターゼ阻害薬の追加5年間、閉経が確認されない場合はタモキシフェンの追加5年間が勧められる。

参考になる記事だった! 私はリンパ節転移もしていたし、追加5年するのがベターなんだろうな。まぁ、まだまだ先の事だけど。

2013年8月9日金曜日

骨転移リテラシー

ただ繰り返し強調したいことは、骨転移が現実問題になってから学ぶ、という姿勢では遅いという点です。骨転移が引き起こす最大の問題は、下半身不随の発生です。これを回避するためには、がんの診断を受けた時点でちょっとした予備知識を頭の片隅に置いておくことが必要になります。転移なんて考えたくもない心境かもしれませんが、後々にあなたの身を守る大切なことになります。

 はじめに、骨転移を生じやすく、十分な骨転移の知識を身に着けておくべきがんから紹介します。このようながんの代表として、乳がん、肺がん、前立腺がん、多発性骨髄腫を挙げておきたいと思います。骨転移が発生する頻度はおよそ2~3割とみられています。これらのがんでは骨転移をきっかけにしてがんが見つかったり、がんが見つかった時にはすでに骨転移を生じていたり、病気の経過の早期から骨に転移を生じる傾向を持っています。

 このため、これらのがんの治療にあたる主治医の先生も一般に骨転移に明るく、ちょっとした質問にもかなり詳しく答えてくれるでしょう。定期検査で病院に訪れたときには骨の点検を加えておられることが多いと思います。監視の目は、十分なことが多いですが、分子標的薬やホルモン薬の投与により治療成績が近年改善されて、進行期と言えども骨転移を持ちながら長く生活を送ることが多くなってきました。放射線治療がどのようなタイミングで行われるのかや、治療法の選択に病気の経過が深く関連があることなど、知っておくと主治医の先生と方針を相談しやすいでしょう。すでに骨転移との生活を送っておられる方の中には、「きっちり管理していればこわくない!」と感じられた方もおられることでしょう。

がんナビ連載 橋本伸之 「がんの種類による骨転移の発生頻度と時期の違い」から抜粋

2013年8月6日火曜日

転移・再発乳癌の治療戦略 ~より良い治療を目指して【乳癌学会2013】

転移・再発乳癌の病態は複雑で、薬物療法の選択肢も多い。現在、国際的なコンセンサスに基づくガイドラインを作成し、均てん化した治療を行うことにより、全生存期間(OS)の改善を目指そうという動きがある。この中では、ホルモン受容体(HR)陽性乳癌に対する内分泌療法の継続、周術期にタキサンを使用している再発症例へのタキサンの再投与(Taxane re-challenge)なども治療選択肢として考えられている。

2013年8月3日土曜日

CYP2D6の遺伝子タイプを調べる~タモキシフェン効果予測テスト

CYP2D6の働き

薬は体の中に入ると肝臓で酵素により分解されます。薬を分解する酵素のことを薬物代謝酵素とよび、いくつかの種類があります。タモキシフェンはCYP2D6という薬物代謝酵素により分解され、高い活性を持つ代謝物エンドキシフェンに変換されますが、CYP2D6の働き方には遺伝的な個人差があることが知られています。CYP2D6遺伝子の働き方が弱い、もしくはCYP2D6遺伝子自体を持っていない場合、タモキシフェンを肝臓でうまく分解することができず、薬の効果が得られないとの論文が複数報告されています。

CYP2D6の働きを調べるテスト

CYP2D6の働きは遺伝子によって決定されており、頬の内側を専用の綿棒でこするだけの簡単な方法で調べることができます。
また遺伝子を調べるテストなので、結果は生涯変わることがありません。

テストで分かること

このテストでは、日本人において主要な5つのバリエーションを調べることでCYP2D6の遺伝子タイプを総合的に判定し、そこからタモキシフェンの治療効果を予測します。

全文を読む・・・https://www.dnafile.jp/tamoxifen/

2013年7月13日土曜日

院内処方に戻してみたら

日経メディカルブログ:日経ヘルスケアon the web
2013. 7. 13
新築移転を機に医薬分業に背を向けた二つの民間大病院
院内処方に戻してみたら…

院外処方を完全にやめて院内処方に戻したり、院内処方との選択制を導入する動きが広がりつつあります。最近も二つの大病院が、新築移転を機に院内処方への変更に踏み切りました。

2013年7月2日火曜日

原発性乳癌手術例の24%で術前後のki-67値が変動、luminalタイプが変化した患者も25%【乳癌学会2013】

2013. 6. 30
原発性乳癌手術例の24%で術前後のki-67値が変動、luminalタイプが変化した患者も25%【乳癌学会2013】

 術前薬物療法を行わなかった原発性乳癌の手術実施患者を対象に、術前後のki-67 labeling index(ki-67 LI)を評価した結果、患者の24%で手術前後にki-67 LIが変動したことが明らかになった。岩手医科大学外科学講座の小松英明氏が、6月27日から29日まで浜松市で開催された第21回日本乳癌学会学術総会で発表した。
 
 乳癌におけるki-67の発現状態を示すki-67 LIは、予後予測因子の1つとされている。一方で、ki-67の発現状態は術前の針生検(CNB)と手術標本の間で異なることが指摘されており、それには腫瘍の進展状況、血流などの微小環境による不均一性が影響していると考えられている。

 そこで小松氏らは、術前に実施するCNBと手術検体におけるki-67 LIに違いがあるかを検討した。

 対象は、2011年1月~2012年12月までに同院で原発性乳癌手術を実施したステージI~IIICの患者のうち、術前薬物療法を実施せず、かつki-67(MIB-1)の免疫染色を実施した患者75人。ki-67 LIは、目視でその値を算出し、14%以上を高値群、14%未満を低値群とした。

 患者の年齢中央値は56歳(範囲:34-87歳)だった。TNMステージはIが63%、IIが27%、IIIが10%、組織グレードは2が76%、エストロゲン受容体(ER)陽性は87%、プロゲステロン受容体(PgR)陽性は76%、HER2陽性は8%を占めた。

 検討の結果、患者の24%で、手術前後にki-67 labeling indexの変動が見られた。術前後のki-67 LI中央値は、それぞれ11%、10%だった。

 ki-67 LIが術前後で変動した不一致患者(18人)において、手術検体のki-67 LIのばらつきはCNBよりも少なく、その値は5-20%の範囲に集中していた。

 術前にLuminal AまたはBと判定された患者(64人)のうち、術後にluminalタイプが変化した患者は25%(16例)を占めた。内訳は、luminal AからBが5例、luminal BからAが11例だった。つまり、術前にluminal Bだった患者(27人)のおよそ4割がluminal Aに変化したことになる。


 これらの結果から小松氏は、「術前後にluminal A、Bの変化が見られた患者は全体の25%を占め、luminal BからAに変化した患者は約40%を占めた。腫瘍径や不均一性、染色固定状態によってki-67 LIが変動していた可能性があるが、薬物療法を決定する際にはki-67 LIが変動している可能性を十分に考慮し、治療がoverまたはunderにならないように薬剤選択に注意が必要」と語った。

今後重点的に取り組むべき課題の1位は「日本人における多遺伝子アッセイの活用法の確立」、学会初の試みコンセンサスカンファレンスで【乳癌学会2013】

2013. 7. 2
今後重点的に取り組むべき課題の1位は「日本人における多遺伝子アッセイの活用法の確立」、学会初の試みコンセンサスカンファレンスで【乳癌学会2013】

 6月27日から29日まで浜松市で開催された第21回日本乳癌学会学術総会では、学会初の試みである「コンセンサスカンファレンス」が行われ、学会理事らにより今後の乳癌診療や研究領域で重点的に取り組むべき課題についてパネルディスカッションが行われた。

 まず座長の愛知県がんセンター中央病院の岩田広治氏が趣旨を説明した。事前に日本乳癌学会評議員を対象にアンケートを実施しており、このコンセンサスミーティングでは上位10項目を紹介し、日本と世界の現状、日本の進むべき方向性、解決方法などを議論することが目的だとした。

 事前アンケートは、日本乳癌学会評議員409人を対象に、2013年5月7~31日に実施された。日本の乳癌診療・研究における課題を、ウェブ上で50項目の中から10個を選択する形式で回答率は80.4%(329人)だった。

 今後取り組むべき課題の第1位は、「日本人における多遺伝子アッセイの活用法の確立(保険承認を含めて)」(37.65%)だった。

 同学会理事で昭和大学医学部乳腺外科の中村清吾氏は、「OncotypeDXを含め、多遺伝子アッセイに関して多数のエビデンスが集まってきている。しかし、残念ながらコストが高く、診療で利用したいと思っていても高嶺の花になってしまっている側面がある。いきなり保険承認は厳しいかもしれないが、例えば先進医療のかたちで日本人のエビデンスをさらに集積し、再現性が確認されたら次のステップに進むという流れで進むのではないか」と語った。また、「日本人を対象にした多遺伝子アッセイの結果は、日本乳癌学会の登録制度を利用するなどして1カ所にデータを集積、解析するのが効率が良いのではないか」と提案した。

 会長の渡辺亨氏(浜松オンコロジーセンター院長)は、「St.Gallenのパネルで、4種類の多遺伝子アッセイをどう評価するのかを討論した際、複数ある多遺伝子アッセイのうちどれも日本で承認されていないことを言ったら、他の国のパネリストが非常に驚いていた。それくらい日本は遅れている。エビデンスはある程度あるので、あとは行政的な対応を早く進めて承認を取得してほしい」と語った。

 理事で国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科の向井博文氏は、「財政的な問題もあるので、何でも保険収載を要望するばかりでは難しく、工夫が必要。時代の流れと共に有用性が低下した項目については、保険収載を取り下げるなどの工夫が必要」と提案した。

 これらを踏まえ、座長の大野真司氏(国立病院機構九州がんセンター)は、「ドラッグラグだけでなく、診断ラグもこれから大きな問題になると思う。しかし、多遺伝子アッセイに関してはすでに日本でもエビデンスが蓄積している。今後は保険収載に向けて努力し、保険収載されるまで先進医療でやるのかなど、日本乳癌学会で大きな課題として取り組んでいくという方向でまとめさせていただきたい」と語った。

 引き続き行われた閉会式では、来年開催される第22回日本乳癌学会学術総会会長の野口眞三郎氏(大阪大学医学系研究科)が挨拶し、学会理事らが一同に介して議論するコンセンサスカンファレンスを来年以降も継続したいとの意向を示した。

 アンケート結果の2位以下は、以下の通り。

第2位 「リンパ節転移陽性時の適切な腋窩マネージメントの検証」(35.45%)

第3位 「適切な術前・術後薬物療法の検証(non-pcrを含めて)」(34.23%)

第4位 「乳房温存術後放射線治療省略の適応の明確化」(31.54%)

第5位 「世界に対抗できる日本全体の治験・臨床試験体制の構築、トランスレーショナルリサーチを推進するための体制整備(組織バンクなど)」(30.32%)

第6位 「世界標準に合わせた増殖マーカー(Ki67など)の意義と品質管理の検証」(28.61%)

第7位 「乳房再建手術の適応と標準化の確立」(24.94%)

第8位 「家族性乳癌に対するトータルケアと予防治療などの体制整備」(24.45%)

第9位 「各種診断モダリティの臨床的・医療経済的意義の検証(初期診断、術前薬物療法の効果、術後経過観察など)」(22.74%)

第10位 「日本における適切な検診の確立(US、MRI)と共に、非触知石灰化病変を診断・治療することの意義の検証」「乳癌の遠隔転移に対する外科療法の意義の検証」(どちらも21.03%)

2013年6月30日日曜日

乳房予防切除「死亡率減少の根拠不十分」 日本乳癌学会

乳房予防切除「死亡率減少の根拠不十分」 日本乳癌学会

朝日新聞デジタル:記事一覧
2013年6月28日(金)19時34分配信

遺伝性で乳がんや卵巣がんになりやすい女性の乳房予防切除について「乳がんによる死亡が減る可能性はあるが、科学的な根拠はまだ不十分」とする診療指針を日本乳癌(にゅうがん)学会が28日にまとめた。切除で乳がんの発生は90~100%減るが、がんが起こる乳腺を完全に取り切れない、卵巣がんが起こるなどの可能性があり、死亡率を下げるかは、まだはっきりしていないという。

 遺伝性乳がんの乳房予防切除は、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが体験を公表して注目を集めた。日本乳癌学会は2年ぶりに、乳がんの診療指針を改定した。この中で、遺伝的に乳がんになりやすい人が、がん予防で健康な乳房を切除する手術について、「本人が手術のリスクや効果を十分に理解した上で希望すれば、考慮すべき手段」と判断した。

乳製品での乳がん再発リスクを否定…診療指針

乳製品での乳がん再発リスクを否定…診療指針

日本乳癌学会は27日、2年ぶりに診療指針を改訂した。

 乳製品や、大豆製品に多く含まれるイソフラボンの影響を恐れて避けている患者も多いが、乳製品は発症予防効果がある可能性があり、再発や死亡への影響は証拠不十分とした。イソフラボンについても、再発の危険性を減らす可能性があるとした。

 乳製品は、最も少なく摂取した群よりも、最も多く摂取した群は発症の危険性が15%減少するとの研究報告を示した。低脂肪乳や閉経前の女性でより強く傾向が見られ、逆に脂肪含有量が多い乳製品は危険性を高める報告も示した。

 また、乳製品が再発や死亡に与える影響は、小規模な研究しかないうえ、摂取が多いほど死亡リスクが低いとの報告もあり、結論づけられないとした。

(2013年6月27日21時44分  読売新聞)

乳がんリスク高い女性に予防薬の投与を、英国立研究所が新指針

乳がんリスク高い女性に予防薬の投与を、英国立研究所が新指針
2013年06月26日 10:07 発信地:ロンドン/英国

【6月26日 AFP】英国立最適医療研究所(National Institute for Health and Care Excellence、NICE)は25日、英国内に数十万人いる乳がんの発症リスクが高い女性について、発症リスクを劇的に減少させる可能性のある薬剤の投与を受けるべきとする新指針を発表した。

 新指針は、乳がんの家族歴のある最大50万人の女性は、タモキシフェンまたはラロキシフェンを5年間にわたり投与する120ポンド(約1万8000円)の予防治療を受けるべきだとしている。

 タモキシフェンは、閉経後の高リスク女性を対象にした臨床試験で、浸潤性乳がんの発症リスクを約50%減少させることが分かっている。ラロキシフェンの臨床試験では、38%のリスク減が確認されているが、英国ではどちらの薬剤も予防治療用として認可されていない。

 新指針の策定に協力したガレス・エバンズ(Gareth Evans)教授は「タモキシフェンは非常に安価なため、費用対効果が非常に高い。乳がんの治療には数千ポンドもの費用が掛かる」と説明する。

 NICEの統計によると、英国では毎年、約5万人の女性と約400人の男性が乳がんを発症する。(c)AFP

外来化学療法に新拠点 愛知県がんセンター 7月オープン

外来化学療法に新拠点 愛知県がんセンター 7月オープン

(2013年6月28日) 【中日新聞】【朝刊】【愛知】 この記事を印刷する
30床から60床に

来月1日にオープンする新外来化学療法センター=名古屋市千種区の県がんセンター中央病院で 愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)の新しい外来化学療法センターが7月1日にオープンするのを前に、27日、現地で開所式が開かれた。

 新しいセンターは鉄骨造り地下1階、地上2階建て。延べ2千平方メートルで、従来の30床から60床になった。総事業費は10億円。

 患者らはベッドかリクライニングチェアで約4時間かけて抗がん剤の点滴を受け、体調に問題がなければそのまま帰宅してもらう。

 開所式には医療関係者ら100人が出席。テープカットの後、県がんセンターの木下平総長が「熱意を注ぎ、先進医療を推し進めたい」とあいさつした。


「混合診療」の拡大方針って、どういうこと?

「混合診療」の拡大方針って、どういうこと?
2013/06/27 12:11配信

政府は規制改革実施計画の健康・医療分野において、混合診療の拡大方針を打ち出しました。まずは2013年秋をめどに抗がん剤から開始し、先進医療の対象範囲を広げていくとしています。

混合診療とは「保険診療+保険外診療」

 混合診療とは、健康保険が適用される保険診療と、全額自己負担の自由診療(保険外診療)とを組み合わせた診療のことです。日本では原則禁止とされ、一つの医療機関で同じ患者に保険診療と保険外診療が行なわれた場合には、本来保険が適用される分もすべて自己負担とされてきました。例えば、健康保険で認められた回数以上に検査を実施したり、健康保険がまだ適用されていない高度な医療を一般的な医療と同時に行なうといったことなどが混合診療にあたります。

 混合診療が禁止されてきた理由はいくつかありますが、最もよく引き合いに出されるのが、保険医療機関に関する規則の中にある特殊療法を禁じる項目です。つまり、有効性や安全性の不確かな医療を、保険医療機関で行なってはいけないということです。ただ、混合診療をはっきり禁止した法律がないということは、裁判所も認めています。

 このように原則禁止とはいえ例外もあり、厚生労働省の認めた先進医療や差額ベッド代などは、2004年から保険診療との併用・混在が認められるようになりました。これに当てはまる先進医療とは、厚生労働省の先進医療会議で有効性や安全性を確認した技術のことで、今年6月1日時点で107種類がリストアップされています。

「先進医療」扱いなら自己負担が軽減

 今回の規制改革計画は「先進医療ハイウェイ構想」と銘打ち、外部機関を入れて評価の新体制をつくり、先進医療のリストアップをもっと早く効率的に進めるというものです。

 これまで未承認の抗がん剤を使うには、治験に参加するか、全額自己負担で治療費が高額になるのを覚悟するしかありませんでした。例えば1か月分60万円の未承認薬を使い、併せて一般的な医療を30万円分受けたとすると患者の負担は90万円。未承認薬が先進医療に収載されれば、一般的な医療の30万円分に健康保険が適用されて9万円となり、自己負担額は69万円に減ります。

医者、患者の双方に賛否両論

 混合診療の規制緩和については、医療者、患者どちらの側にも賛否両論があります。 

 日本医師会は、医療は社会の共通資本であるという考えから、所得によって選べる医療に格差ができることや、保険診療の範囲を縮小させる恐れがあることなどを理由に、早くから混合診療への反対を表明してきました。一方、現場の医師の中には、現行制度のもとでは保険診療と保険外診療をわざわざ別の日に実施しなければならず、治療の分断を招いているとして解禁を望む人もいます。

 患者側では、新薬や新技術をいったん先進医療に指定してしまえば混合診療で治療が受けられることからかえって新しい医療の保険適用が遅くなるのではないかという意見があります。けれども、治療の選択の幅が広がることを歓迎する患者も多く、考え方はまちまちです。

 また、医療政策の面からみた場合、健康保険制度の財源が逼迫していることから混合診療の範囲拡大で保険財政の安定を期待する声と、公的保険制度の主旨に沿って本来は保険適用の範囲を拡大するべきという声とがあります。


混合診療「拡大」へ これまで禁止されてきたのは、なぜ?

2013年06月29日 12時55分
混合診療「拡大」へ これまで禁止されてきたのは、なぜ?

政府はこのほど、原則禁止されている「混合診療」を拡大していく計画を閣議決定した。規制改革の一環で、まずはこの秋をめどに、抗がん剤から解禁していくという。

混合診療とは、公的な健康保険が適用される「保険診療」と、適用されない「保険外診療」を組み合わせて行うことだ。「保険診療」とは、健康保険が適用される診療のことで、国が定めた治療費の1~3割を自己負担すれば済む。しかし「保険外診療」は健康保険が適用されないため、医療機関が決めた金額を全て自己負担しなければならない。

このような混合診療は、これまで一部の先進医療をのぞいて、認められていなかった。もし保険診療と保険外診療を組み合わせた場合、その全体が「保険外診療」として扱われてしまい、治療費は「全額自己負担」となっていた。つまり、保険診療か保険外診療か、二者択一しかなかったのだ。

だが、そもそも混合診療がダメとされてきた理由は何だったのか。「解禁」が医療に与える影響について、鈴木沙良夢弁護士に聞いた。

●選択肢は増えるが、将来的には保険適用の治療が減るという指摘もあるが、どのような理由か?

――国が混合診療を禁止してきた理由は?

「国が混合診療を原則禁止してきたのは、次のような理由からです。

(1)保険診療で十分なのに、医師が患者に保険外診療を求めるようになる

(2)安全性や有効性が確認されていない医療が、保険診療と併せて実施されてしまう」

――どんな法律で決まっている?

「混合診療を禁止した法律の明文はなく、最近までは厚労省の解釈によっていました。ようやく2011年10月25日の最高裁判決で『健康保険法86条等の規定から混合診療が禁止されている』という判断が出ましたが、現行の健康保険法は正面から混合診療の禁止を定めているわけではありません。

この最高裁判決の補足意見でも、混合診療の禁止については、国会でも十分な議論がされてこなかったことが指摘されています。これまで運用が先行してきた制度といえるでしょう」

――混合診療が全面的に解禁された場合はどうなる?

「患者側にとっては、保険適用をされていない治療法や医薬品を使いやすくなり、選択肢が増えるといわれていますが、保険適用外の治療費は自己負担となります。

一方で日本医師会などは、国が財政難のいま、混合診療を解禁すれば、保険診療の範囲が縮小していく可能性を指摘しています。長期的には国民皆保険が骨抜きになるという懸念を示して、いるものと考えられます」

医療制度そのものが大きく変わる可能性も、指摘されているということだ。政府は国民に対して、十分説明をする必要があるだろう。

2013年6月28日金曜日

早期乳癌に対する単回術中電子線治療は日本人でも安全に実施可能【乳癌学会2013】

学会スペシャル: 第21回日本乳癌学会学術総会
2013年6月27日~29日 浜松
2013. 6. 28
早期乳癌に対する単回術中電子線治療は日本人でも安全に実施可能【乳癌学会2013】

早期乳癌に対し、高エネルギー電子線を用いた単回術中電子線治療(single-fraction IOERT)は、日本人においても安全に実施可能な治療法と考えられることがフェーズ1試験から示された。6月27日から29日まで浜松市で開催されている第21回日本乳癌学会学術総会で、群馬県立がんセンター放射線治療科(現・筑波大学、茨城県地域臨床教育センター)の玉木義雄氏が発表した。

 乳房温存手術後の放射線療法として、照射期間を短縮し患者の負担を軽減するという観点から、1回当たりの放射線量を増やす加速乳房部分照射(APBI:accelerated partial-breast irradiation)が普及し、中でも術中照射(IORT:intraoperative electron beam radiation therapy)のみで治療を終えるsingle-fraction IORTが注目されている。

 術中照射については、1989年より欧州を中心に臨床試験が展開されている。single-fraction IOERTを検討したイタリアのELIOT試験では、フェーズ1試験で至適線量が21Gyと決定された。さらに全乳房照射(WBRT)と比較したフェーズ3試験も終了したが、結果はまだ発表されていない。また、英国を中心に行われたフェーズ3のTARGIT-A試験では、乳房内再発について、術中照射による部分乳房照射のWBRTに対する非劣性が初めて証明された。

 日本では術中照射専用装置の導入を契機として、2007年に名古屋大学でフェーズ1試験が開始され、フェーズ2試験と併せて、ELIOT試験と同じ線量である1回21Gyのsingle-fraction IOERTの安全性が確認された。

 群馬県立がんセンターにおいても、single-fraction IOERTのフェーズ1試験として、治療後3カ月以内のグレード3以上の非血液毒性を用量制限毒性(DLT)とする線量増加試験が行われた。

 対象は、腫瘍径3cm以下の乳管癌、広範な管内進展がない、胸壁・乳房への照射歴がないなどの条件を満たす患者で、術後病理診断で追加切除が必要と判断されたものは中止として扱うこととした。線量レベルとして、レベル1を18Gy、レベル2を21Gyとした。

 術式は乳房円状部分切除術(Bp)または乳房楔状部分切除術(Bq)とし、センチネルリンパ節生検を施行した。腫瘍辺縁から1cm以上のマージンをつけて切除した。

 乳癌術中照射では、腫瘍の切除後に乳腺組織の背側に遮蔽板を挿入し、円形照射筒を設置し、手術台を手術室内の照射専用装置(商品名:Mobetron)に移動して、ガントリと照射筒を整合させ、モニターで部位を確認し、治療開始となる。

 2008年11月から2009年3月までにレベル1(18Gy)で治療が行われた3人では、DLTは発生しなかった。有害事象としては、グレード1と2の乳房線維化が各1人に、グレード1の感染が1人に発現した。

 2009年8月から2009年11月までにレベル2(21Gy)で治療が行われた3人でも、DLTは発生しなかった。有害事象としては、グレード1の乳房線維化が1人、グレード1の乳房痛が1人に発現したのみだった。

 対象6人の背景因子をみると、年齢中央値は67歳、非浸潤性乳管癌(DCIS)が1人含まれた。術後の最短切除マージン(乳管内浸潤を含む)は、DCISを除く5人では5mmを超えていた。

 経過観察期間中央値46.5カ月において、5人では乳房再発を認めなかった。DCISの1人は36カ月目に乳房再発を認めた。

 フェーズ1試験で安全性が確認されたことから、玉木氏らは、名古屋大学、愛知県立がんセンターと共同で、2010年6月からフェーズ2試験を開始している。

 同試験では、乳房部分照射(Bq)+術中電子線照射21Gyで、切除断端から2cm以上含む範囲を照射することとしている。主要評価項目は有効性(患側乳房局所再発率)である。目標症例数は140人。選択基準には、腫瘍径2.5cmまでの乳癌、年齢50歳以上、術中迅速病理検査にて乳腺断端に腫瘍を認めない、術前あるいは術中センチネルリンパ節生検にてリンパ節転移を認めない、などが含まれる。

2013年6月14日金曜日

乳がん遺伝子に特許認めず 米最高裁が判決

【ワシントン共同】乳がんの発病リスクを高めるとされる遺伝子を企業が見つけた場合に特許が認められるかどうかなどが争われた訴訟で、米連邦最高裁は13日、人間の遺伝子は特許の対象にはならないとの判決を言い渡した。米主要メディアが伝えた。

 最高裁は一方で、人工的に合成された遺伝子については特許を認める場合もあるとし、研究を進める被告の米検査会社の主張も一部容認した。判決が研究に与える影響については、メディアの評価が分かれている。

2013/06/14 01:21   【共同通信】

がん予防の乳房切除

がん予防の乳房切除を承認 鹿児島の病院倫理委
(共同) 2013年6月13日 21時48分

 鹿児島市の相良病院(雷哲明院長)は13日、遺伝性乳がんの予防のため、健康な乳房を切除する手術を院内の倫理委員会が承認したと明らかにした。今後、希望者の事情に応じて倫理委で個別に審理し、実施の可否を判断する。現時点での希望者の有無は公表していない。

 切除手術は、米人気女優アンジェリーナ・ジョリーさんが受けたことで話題となった。国内では聖路加国際病院(東京都)が既に倫理委員会で承認。がん研有明病院(同)も倫理委に申請する方針だが、国内ではほとんど実施されていない。

 相良病院によると、発症リスクを高める遺伝子「BRCA1」か「BRCA2」に変異があった成人女性が対象。

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社説:乳がん予防手術 遺伝子診断知る契機に
毎日新聞 2013年06月13日 02時30分

 がんの多くは遺伝しないが、中には遺伝性のものがある。家系の中にがんにかかる人が多く、発病の年齢が若い場合は、要注意だ。

 そうした遺伝性のがんの中には、遺伝子診断で将来の発がんリスクを予測できるものがある。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが受けた乳がん遺伝子「BRCA1、2」の診断もそのひとつだ。

 米国のデータでは、この遺伝子のいずれかに変異があると、生涯で乳がんになる確率は最大で80%程度、卵巣がんになる確率が最大で60%程度と推定されている。多数の遺伝子と環境の影響で発病リスクが決まる通常のがんと違い、ひとつの遺伝子が発病リスクを大きく高める。ジョリーさんが行った「乳腺の予防的切除」が米国で「標準的な選択肢のひとつ」となっているのも、そのためだろう。

 ただし、乳腺切除には合併症などのリスクもあり、第一選択として勧められているわけではない。定期検診で早期発見に努めるのも、重要な選択肢だ。

 日本でも、乳がん遺伝子の検査は80以上の医療機関で受けられる。ジョリーさんのような未発症者の「予防的切除」の準備を進める病院も出てきた。気にかかるのは、日本では遺伝性のがんや遺伝子診断、発症予防についての正しい知識が行き渡っているとはいえない点だ。遺伝子変異がわかった場合に血縁者にどう伝えるかといった課題もある。

 医療関係者は、まず、遺伝性のがんや遺伝子診断の正しい情報をリスクがある人にきちんと伝えてほしい。その上で、遺伝子診断を受けるかどうか、予防のための選択肢は何か、リスクと利点を丁寧に説明する必要がある。

 日本には遺伝子変異とリスクを結びつけるデータが足りない点にも留意したい。欧米と変わらないとも言われるが、日本人のデータ集積も進める必要がある。日本では乳がんの遺伝子診断は保険が利かず高額だ。診断やそれに基づく検診を国がどう扱っていくかも検討してほしい。

 乳がんだけでなく、検診での発見が難しい卵巣がんのリスクにも注意が必要だ。遺伝性のがんには大腸がんや甲状腺のがんもある。乳がんだけにとらわれないようにしたい。

 医療に遺伝子情報が利用されるケースは、今後、ますます増えるはずだ。その際には、正しい情報を基に個人個人の選択を支える「遺伝カウンセリング」が重要だが、日本には専門の遺伝カウンセラーが少ない。ジョリーさんの選択で関心が高まったことをきっかけに、遺伝子診断について知識を広げ、そのあり方を改めて考えたい。

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愛知県がんセンター 乳がん予防切除、年度内にも可能に
(2013年6月14日) 【中日新聞】【朝刊】

遺伝子変異の患者 東海・北陸初 

 愛知県がんセンター(名古屋市千種区)は早ければ年度内に、遺伝性乳がんと卵巣がんの予防のための切除・摘出手術を実施できる態勢を整える。国内では聖路加国際病院(東京)が、遺伝性乳がん患者の、がんになっていないもう一方の乳房切除を既に実施。東海・北陸地方で、手術できる態勢に入るのは、同センターが初めてとみられる。

 遺伝性乳がんの予防的な切除手術は、米国女優アンジェリーナ・ジョリーさんが自ら受けたことを公表して話題になった。

 愛知県がんセンターでは年間500人が乳がん治療を受ける。今年4月から治療中の乳がん患者に対し、家族の発症歴や遺伝子変異で発症する確率、遺伝子検査について説明する遺伝カウンセリングを始めた。

 検査で遺伝子変異が確認された患者は、もう一方の乳房ががんを発症する確率が高く、さらに卵巣がんになる可能性も高い。岩田広治副院長は「遺伝子変異が分かった患者のために、選択肢を用意する必要がある」と言い、患者が予防的に乳房や卵巣を切除、摘出することを希望した場合に、応じられる態勢づくりを進めてきた。

 技術的には3年前から乳房再建術を開始。昨年、卵巣がん患者へ腹腔(ふくくう)鏡での卵巣摘出手術を始め、予防的手術をできる環境にある。近く院内の倫理委員会に申請し、年度内に手術が可能な態勢を整える。

 予防的手術は保険適用されず、全額自費。遺伝子検査と乳房切除・再建手術を合わせて約100万円程度になる見込み。岩田副院長は「将来的には保険診療の枠組みでできるようになるべきだ」と話し、一部保険適用となる「先進医療」として国に届け出る方針。

 東海地方ではほかに、藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)が腹腔鏡での予防的卵巣摘出手術について、院内の倫理委員会に申請中。乳房切除についても今後準備を進めていくという。

  遺伝性乳がんと卵巣がん  血液中のがんを抑制する遺伝子「BRCA1」または「BRCA2」の変異が原因で発症する。乳がん全体の中で、遺伝性の割合は全体の5%。変異があると、ない人に比べ、乳がんになる確率は10~19倍、卵巣がんは15~40倍高いとされる。

2013年6月9日日曜日

新勧告後も40代女性のマンモグラフィ検診受診率は低下せず/ジョンズホプキンス大学

2013年6月9日
海外癌医療情報リファレンス

公開日:2013年5月15日
毎年の検診が保険適応であることも受診率が低下しない理由か

米国の新ガイドラインでは40代女性は(定期的に受けるべきとされている50~74歳とは異なり)乳癌検診をルーチンとしては受けないよう勧告しているにもかかわらず、依然として40代女性が乳癌検診を定期的に受け続けていることがジョンズホプキンス大学の新たな研究で明らかになった。

2009年、米国予防医療専門委員会(USPSTF)は科学的証拠を改めて精査し、これまで推奨していた内容を変更し、50〜74歳の女性は従来どおりマンモグラフィ検診を2年に1回受診すべきであるが、血縁者に乳癌患者がいない40〜49歳の女性はマンモグラフィ検診の利点と危険性について主治医と話し合ったうえで個々に受診するかどうか判断すべきであるとした。

ジョンズホプキンス大学総合内科学教室の臨床研究医であるLauren D. Block医師・公衆衛生学修士とその同僚らは、このガイドラインの変更に伴ってマンモグラフィ検診を受診する40代女性の数が減少すると予測した。しかし、40代女性のマンモグラフィ受診率に変化は認められなかった。

「40代女性では検診の偽陽性率が高く不要な過剰検査(画像診断および生検)の実施につながるおそれがあるという科学的証拠があるにもかかわらず、患者さん・・・そしておそらく検査を実施する側も、検診の中止には消極的のようです」とJournal of General Internal Medicine誌の電子版に掲載された研究のリーダーであるBlock氏は語る。「女性達は『マンモグラフィが生命を救う』というメッセージを何度も聞かされてきたため、どうしてもマンモグラフィ検診を受けたいと思っているのです」。

この研究では、マンモグラフィが若齢女性に与える影響は正負両方であることが示された。マンモグラフィ検診は若齢女性における乳癌検出率を高めるが、死亡率への影響はごく僅かしかない。この研究によると、むしろ過剰診断や不要な治療(生検、腫瘍・乳房摘出術、何週間にもわたる放射線治療や危険性のある薬剤の投与など)につながる可能性がある。検診結果が偽陽性であった場合、不要な治療の実施や心理的外傷を与える原因となる。検診で発見される癌の悪性度は非常に低い場合が多いにもかかわらず、積極的に治療されてしまう。

他の多くの癌と同様に乳癌も加齢性疾患であり、加齢に伴って発症リスクが高まるため、高齢女性はマンモグラフィ検診を受診することが推奨される。

USPSTFガイドラインの修正原案では40代女性の検診に伴うリスクが強調されていたが、政治団体やアドボカシー団体の反発を受け、患者と主治医間で相談して個々に判断すること、という表現で妥協する形になった。米国がん協会は、依然として40歳からマンモグラフィ検診を毎年受診するよう推奨している。

さらに、保険会社がこれまでどおり40代女性のマンモグラフィ検診費用を支払っていることも検診の受診率が低下しない理由であるとBlock氏は述べる。

Block氏とその同僚らは2006、2008および2010年に全米で州保健局が実施したBehavioral Risk Factor Surveillance Systemの調査データを用いて解析を行った。40〜74歳の女性484,296人分のデータが収集された。2006年と2008年では40代女性のマンモグラフィ受診率が53%であるのに対し、50〜74歳では65%であった。新勧告の施行後である2010年のマンモグラフィ受診率は、40代女性が52%、50〜74歳が62%であった。また、このUSPSTFの勧告では一般的な乳癌リスクを有する76歳以上の女性においても検診の有益性はないとしている。

Block氏は、自身が40代の患者とマンモグラフィ検診の是非について話す際にも、検診間隔の変更をためらう患者がいる、と話す。50歳までマンモグラフィ検診を受けなくてもよいと聞いて安心する患者もいる。その一方で、より多くの患者がこれまでどおり検診を受けることを希望している。

「女性の死因では心血管系疾患が圧倒的首位を占めているのですが、概してメディアや社会では乳癌に対する関心が非常に高いのです。誰もが自分は乳癌対策をしていると感じたいのです」とBlock氏は語る。「ある40代女性にマンモグラフィ検診で癌がみつかり、治療を受けて大変よくなったという逸話を聞いただけで周囲の他の現実が目に入らなくなるのです。検診を受けたいと思ってしまうのです」。

本研究に従事したその他のジョンズホプキンス大学研究者は以下のとおり:Marian P. Jarlenski, M.P.H.、Albert W. Wu, M.D., M.P.H.、および Wendy L. Bennett, M.D., M.P.H.

2013年5月27日月曜日

2年検査、リュープリン延長

2年検査、問題ナシ。

生理再開を阻止するため、リュープリン延長の説明を受ける。

2013年5月25日土曜日

乳がん「切らず完治」へ重粒子線治療の臨床試験

乳がん「切らず完治」へ重粒子線治療の臨床試験
読売新聞5月20日(月)14時31分

 放射線医学総合研究所(千葉市)は今月、乳がんに対し、切らずに完治を目指す重粒子線治療の臨床試験を始める。
 従来の乳がん治療は、手術と放射線・薬物治療の併用が一般的だが、同研究所は「持病のために手術できない人や、手術を望まない人などに、体への負担が少ない治療の選択肢が広がる可能性がある」としている。
 重粒子線は、がんに強力なエネルギーを集中させられる特殊な放射線。同研究所によると、現在治療を行う施設は世界で6施設だけ。うち3施設が日本にあり、骨軟部腫瘍、肺がん、肝臓がん、前立腺がんなどに用いられているが、乳がんの完治を狙うのは初めてという。
 近年、欧米で照射範囲を絞った放射線治療の有効性を示す研究報告が増えたことや、がんへの照射位置がずれないように柔らかい乳房を固定する装具が開発されたことなどにより、乳がんへの応用が計画された。

2013年5月14日火曜日

A・ジョリーさん、乳腺切除を告白 乳がん予防措置で



2013年05月14日 16:21 発信地:ニューヨーク


【5月14日 AFP】米女優アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)さん(37)が14日、新聞に寄稿した記事の中で乳腺切除手術を受けていたことを明らかにした。乳がんリスクが非常に高いことが判明したため、予防措置として手術を受けたという。

 ジョリーさんは、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に寄稿した記事「My Medical Choice(医療における私の選択)」のなかで、乳がんや卵巣がんリスクを高める恐れのある病的変異のある遺伝子が見つかっため、乳腺を削除することを決めたことを明かしている。

 医師の診断でジョリーさんはBRCA1として知られるがん抑制遺伝子に変異があり、乳がんリスクが87%、卵巣がんリスクが50%にもなることが分かった。

 ジョリーさんは「現実を知ってすぐに、出来る限り(がん)リスクを最小とするために行動すると決めた」と話しており、最初に乳腺切除手術を受けた理由については、乳がんリスクの方が高かったことと、卵巣がんの予防手術がより複雑なものだったためとしている。

 3か月におよんだ医療措置は前月27日にすべて完了し、ジョリーさんの乳がんリスクは5%にまで低減した。

 ジョリーさんは夫のブラッド・ピット(Brad Pitt)さんとともに米映画界を代表する俳優の1人。2人の間には、実子3人と養子3人がいるが、子供たちには「あなたたちは乳がんで母親を失うことはないから安心するように」と言うことができると述べた。ジョリーさんの母親は、がんのために56歳で死去している。(c)AFP

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New York Times
My Medical Choice 
By ANGELINA JOLIE
Published: May 14, 2013

2013年5月2日木曜日

瑞宝小綬章 元愛知県がんセンター総長高橋さん 



叙勲 喜びの春 瑞宝小綬章 元愛知県がんセンター総長高橋さん 
(2013年4月29日) 【中日新聞】【朝刊】


中日文化賞受賞者の高橋利忠元愛知県がんセンター総長(72)=名古屋市緑区=は瑞宝小綬章を受章した。高橋元愛知県がんセンター総長の喜びの声を紹介する。

がん研究の半世紀 

 がんと向き合い続けてきた。

 きっかけは半世紀前。名古屋大医学部を卒業し、血液のがんといわれる白血病の研究チームに所属した。目の前で何人もの患者が亡くなっていった。「研究で何とか治るようにならないか」。その後の道が定まった。

 世界的に有名な米国スローンケタリングがん研究所に2度、留学して免疫治療などの研究に打ち込んだ。帰国後は愛知県がんセンター研究所に所属。2005年、がんセンター総長に就任した。

 後進育成の面でも評価は高いが「私はただの縁の下の力持ち。その人たち自身が優秀だっただけ」とあくまで低姿勢だ。

 最近、センターの研究所の人員や予算が削られつつあるのが気掛かり。受章の喜びよりも「これからも、がんセンターが続いていくこと。それだけが願いですね」。

愛知県がん登録

愛知県HPのお知らせより

愛知県がん登録の届出について(平成25年6月1日から適用)
[2013年5月1日]

届出対象者について
県内の医療機関において、上皮内がんを含む全ての悪性新生物、あるいは頭蓋内の良性、良性・悪性の別不詳の新生物と診断された愛知県に住所を有する患者

届出に関するQ&A

・複数の医療機関からの届出により、重複登録にならないでしょうか? 
中央登録室では「地域がん登録標準データベースシステム」を用い、各医療機関から届出いただいた患者情報を照合し、同一人物処理を行いデータベースに登録しているため、重複登録の心配はありません。届出情報は、「どこの医療施設からどこに紹介がなされて治療がなされるのか」という一連の受療パターンを把握する為の貴重な情報となりますので、積極的な届出をお願い致します。

・確定診断がなされていないが届出してもいいのでしょうか?
確定診断というと、病理組織診断を思い浮かべられるかも知れませんが、がん登録には、診断根拠として、(1)原発巣の組織診のほか、(2)転移巣の組織診、(3)細胞診、(4)部位特異的な腫瘍マーカー、(5)臨床検査(画像診断等)、(6)臨床診断があります。「組織診」のみを基準にすると、手術もされない、生検もできない症例はがん症例から除外されてしまう可能性があります。診断根拠をもとに「がん」が強く疑われる症例については、届出をお願い致します。

・最終確定診断施設のみが登録すれば良いのでは? 
前述の通り、届出情報は、「どこの医療施設からどこに紹介がなされて治療がなされるのか」という一連の受療パターンを把握する為の貴重な情報と考えています。現段階では、最終確定診断施設の全てが、がん登録にご協力いただいている状況ではありません。がん登録の悉皆性を高めるためにも、また、貴施設における、「がん診療への貢献」を公的にお示しいただくためにも、届出へのご協力をお願い致します。

がん対策を企画、立案、評価するためには、がんの実態をより正確に把握することが重要であり、その中心的役割を果たすのが愛知県がん登録です。
愛知県がん登録の登録精度を向上させ、正確に県のがん罹患の実態を把握するためにも、何卒、届出についてご理解・ご協力をお願い申し上げます。
お問い合わせ先
1 悪性新生物患者登録事業に関するご質問及び届出票・送付用封筒の不足に関する連絡
   愛知県健康福祉部健康担当局健康対策課がん対策グループ 
2 診断名等医学的な項目に関するご質問
   愛知県がんセンター研究所疫学・予防部がん情報研究室内愛知県がん登録中央登録室

2013年4月29日月曜日

コーヒーを1日2杯以上飲んでいる乳がん患者は、抗がん剤の効果が高まり、再発リスクが下がる可能性あり


公開日時:2013年04月28日 12時00分
コーヒーを1日2杯以上飲んでいる乳がん患者は、抗がん剤の効果が高まり、再発リスクが下がる可能性あり:スウェーデンの研究

乳がんの多くは、がん細胞の表面にある「エストロゲン受容体」というタンパク質が女性ホルモンの一種であるエストロゲンと結びついて増殖していく。タモキシフェンという薬は、この受容体をふさぎ、がん細胞とエストロゲンが結びつくのを阻止する効果があり、術後の再発防止に用いられている。

スウェーデン、ルンド大学の腫瘍学研究者が乳がん患者600人の5年にわたる再発率を調べたところ、タモキシフェンを服用している患者は約300人、そのうちコーヒーを1日2杯以上飲む患者は、まったくコーヒーを飲まない患者と比べてがん再発率が半分以下であることが判明した。コーヒーと乳がん治療とがどのような相互作用を引き起こしているのかは今後の研究課題となるが、カフェインにがん細胞の増殖を抑える効果があることはすでに報告されており、研究者はカフェインによってタモキシフェンが活性化し、抗がん作用の効率が上がるのではないかと考えている。

日本人女性がかかりやすいガンNO.1「乳がん」、毎日の食生活で予防しよう


▼乳がん予防の対策とは?

日常面で心がけたいのが運動によっての肥満防止。肥満だけが原因というわけではありませんが、少なくとも肥満は避けた方がいいと考えられています。
そのため、肥満予防にもなる運動も乳がんには良いとされているため、是非とも習慣づけたいもの。全てのがんにおいて言えることですが、飲酒・喫煙、偏った食生活、痩せすぎ・太りすぎも原因になり、日常生活を活動的に過ごし、食事をバランスよく摂取することが予防法として挙げられています。
また、がんは活性酸素が細胞の遺伝子を傷つけるために発生します。活性酸素の害を防ぐ、抗酸化成分を含む食材は積極的に毎日取り入れたいものです。
大豆製品に含まれるイソフラボンは体内で女性ホルモンと似た働きをし、乳がん予防をはじめ、多くの健康効果に期待されています。

▼乳がん予防のおすすめ食材

がんの原因となる活性酸素の害を防ぐ食材

▽ 抗酸化成分
・ベータカロテン…(にんじん、かぼちゃ)
特ににんじんはベータカロテンの含有量がトップレベルのためおすすめ。
・ビタミンC…(キャベツ、ブロッコリー)
特にキャベツにはビタミンCが100g中に41㎎も含まれており、香りのイソチオチアネートには抗酸化力を高める働きが。
・ビタミンE…(かぼちゃ、アーモンド、小麦胚芽)
・ポリフェノール…(玄米、そば、ココア)

女性ホルモンに似た働きをする食材

▽ イソフラボン
・大豆・大豆製品…(納豆、豆腐、豆乳)
特に豆乳はタンパク質や脂質、鉄、ビタミンE,葉酸なども豊富に含まれているので朝食などに毎日取り入れたいおすすめ食品。

また、肥満の予防・解消のために、低脂肪の食事を基本とすることを習慣づけることも良いでしょう。夜遅い食事はできるだけ避けて、朝方の生活リズムに整えることもポイントです。

まとめ

乳がん予防には、抗酸化成分を含む食材を積極的に摂り、食べ過ぎ・飲み過ぎによる肥満を予防・改善する日常的なことが大切。
このように毎日取り入れられる予防法が未来の健康を守ります。今や他人ごとではない乳がんについて知り、毎日の生活に取り入れてみませんか?

2013年4月28日日曜日

がん医療 患者の評価を国が初めて調査へ


がん医療 患者の評価を国が初めて調査へ
4月28日

がん患者の視点から診療や退院後の対応を評価し、国のがん対策に反映しようという初めての調査が、5月にも始まることになりました。

日本人の2人に1人がかかるとされるがんについて、国は、拠点病院を指定するなど医療態勢の整備を進めてきましたが、患者が納得する医療を受けているかどうか評価する取り組みは、ほとんど行われてきませんでした。

このため、医療政策の専門家などでつくる厚生労働省の研究班は、がん患者の視点から、診断や治療、それに退院後の病院の対応を評価する初めての調査を、来月にも始めることになりました。
調査は、全国の拠点病院の患者1万人以上を対象に、▽治療方針の決定に自分の意見が考慮されたかどうか、▽手術の結果について納得できる説明があったかどうか、また、▽不安や心配ごとへの配慮や支援があったかどうかなど、50項目をアンケート型式で尋ねる計画です。そして、患者の納得につながっている点や改善すべき点などを分析し、それぞれの病院の改善策や国のがん対策に反映することにしています。

調査を行う東京大学の宮田裕章准教授は「患者がどのような思いや経験をしているのか明らかにすることで、日本のがん医療全体のレベルアップにつなげたい」と話しています。

乳癌手術の5~7年後も約4割が持続性疼痛を経験


2013. 4. 26
BMJ誌から
乳癌手術の5~7年後も約4割が持続性疼痛を経験
デンマークの乳癌サバイバーを対象とした追跡調査

乳癌治療を受けた後に、長期的に疼痛を訴える女性は少なくない。乳癌サバイバーを対象に持続性疼痛の発現を5年以上にわたって追跡し、経過を調べたデンマークCopenhagen大学のMathias Kvist Mejdahl氏らは、治療から5~7年後でも約3分の1の患者が疼痛を感じており、約半数には知覚障害もあることを明らかにした。詳細は、BMJ誌電子版に2013年4月11日に報告された。

2013年4月17日水曜日

がん治療費 乳がんは5年92万円、肺がんは2年45万円のケース

NEWS ポストセブン 4月16日(火)7時5分配信

 高額な医療費がかかるがん治療。しかし、国の保険が適用された後の実際に払うお金(自己負担額)でみれば、想像していたほど大きな金額ではない。日本人の罹患者数上位の「胃がん」「肺がん」「大腸がん」「乳がん」「肝臓がん」の部位別に、一般的な治療をした場合の自己負担額は以下の通りとなる(3割負担、高額療養費制度利用の場合)。

 もっとも自己負担額が大きいのは乳がんだ。乳がんの平均入院日数は11.8日。できる限り切除範囲を小さくする工夫をする“温存手術”が主流に。再発予防でホルモン療法を5~10年間行うケースも多く、その分、治療費が長期間のしかかる。失った乳房を人工乳房で再建すると自己負担となり、費用は50万~100万円単位で増える。がんと診断された後の5年後生存率は87.7 %。

 乳がんで温存手術・術後再発予防抗がん剤・放射線療法を行った場合、5年間で計92万円となる。

 手術後、再発予防のために放射線照射、抗がん剤治療を実施。抗がん剤治療終了後、ホルモン療法と検査を5年間にわたって続ける。入院は手術時だけで、後の治療はすべて外来で行う。

 肺がんは平均入院日数21.7日で、進行が早いのが特徴。発見されたときには、すでに手術できない状態になっていることが多く、放射線治療や抗がん剤治療が中心となる。がんと診断された後の5年後生存率は29%と低い。

 小細胞肺がんで放射線化学療法を行った場合、2年間で計45万円となる。

 放射線化学療法は、まず、放射線治療と抗がん剤治療を20日間の入院期間中に実施。その後、3か月にわたって抗がん剤治療や、転移しやすい脳への予防的放射線照射を行う。1年目は治療と検査、2年目は検査が必要となる。

 平均入院日数22.6日の胃がんは、診断された後の5年後生存率は64.3%。早期で見つかった場合、腹部を切らずに内視鏡で粘膜を切り取るだけの手術も可能。内視鏡は日帰り手術を行う医療機関もあるほど。早期の場合、5年後生存率は9割を超える。ただし、再発予防のための検査は3年目以降も続く。

 胃がんで腹腔鏡手術療法を行った場合、2年間で計14万円となる(3年目以降は毎年3万円の検査費用がかかる)。

 お腹に4か所程度の穴をあけ、そこから腹腔鏡やメスを入れて患部を切り取る手術。手術費用は120万円と高額だが、高額療養費制度が適用されるため、実際の負担額は9万円程度に。入院は10日ですむ。術後の検査費用などを含めると上記の額に。

 肝臓がんは2年間で計21万円(経皮的エタノール注入療法を行った場合。3年目以降は毎年6万円の検査費用がかかる)、大腸がんのケースでは、結腸がんで2年間で計42万円となる(切除手術・術後再発予防抗がん剤療法を行った場合)。

※女性セブン2013年4月25日号

2013年4月12日金曜日

イレッサ訴訟、遺族側が全面敗訴

イレッサ訴訟、遺族側が全面敗訴 最高裁が上告棄却
(共同) 2013年4月12日 16時12分

 肺がん治療薬「イレッサ」の副作用の危険を十分知らせなかったとして、死亡した患者2人の遺族が製薬会社に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(寺田逸郎裁判長)は12日、遺族側の上告を棄却した。企業の賠償責任を否定した二審東京高裁判決が確定した。国への賠償請求については上告が受理されておらず、この日の判決で遺族側の全面敗訴が決まった。

 第3小法廷は同日、同様の主張をしていた大阪訴訟の原告についても上告を全面的に退ける決定をし、全ての訴訟を終結させた。

 イレッサは2002年7月に承認されたが、副作用の間質性肺炎で死亡する患者が相次いだ。

イレッサ訴訟で患者側の全面敗訴確定
(NHK) 4月12日 15時10分

肺がんの治療薬「イレッサ」の投与を受けたあとに死亡した患者の遺族が、「副作用に関する情報提供が不十分だった」などと国と製薬会社を訴えた裁判で、最高裁判所は製薬会社に対する患者側の上告を退ける判決を言い渡しました。国への上告はすでに退けられていて、患者側の全面敗訴が確定しました。

イレッサとは

「イレッサ」は、「ゲフィチニブ」という抗がん剤の商品名で、肺がんの治療薬として大阪の製薬会社が輸入・販売しています。腫瘍を小さくする効果があるとして、日本では申請から僅か半年後の平成14年7月に、世界に先駆けて承認されました。

当初は「夢の新薬」とも言われましたが、発売直後から副作用の重い肺炎などにより、患者が死亡するケースが相次いで報告されました。

このため、発売から3か月後の平成14年10月、厚生労働省は製薬会社に対し、薬の添付文書に副作用についての警告を盛り込むよう指示しました。

厚生労働省によりますと、去年12月末の時点で、イレッサの副作用とみられる報告は2350例あり、このうち862人が死亡しています。その一方、特定のタイプの肺がんには延命効果があるとして、現在も1年におよそ7500人の新たな患者に使用されています。

イレッサを巡る裁判では、おととし、国が裁判所の和解勧告を拒否した際、当時の細川厚生労働大臣が抗がん剤による副作用の救済制度の創設を検討すると表明し、議論が進められましたが、「がん患者の場合、症状の悪化が薬の副作用によるものかどうか判断するのが難しい」として見送られています。

共通番号制度で個人の治療情報管理も検討

 4月11日 20時52分

田村厚生労働大臣は、衆議院内閣委員会などの連合審査会で、年金の受け取りや納税などの手続きを簡略化するため、国民1人1人に番号を割りふる「共通番号制度」について、将来的に患者の治療情報などの管理に活用するかどうかは、個人情報の保護を考慮しながら検討したいという考えを示しました。

衆議院の内閣委員会などは、年金の受け取りや納税などの手続きを簡略化するため、国民1人1人に番号を割りふる「共通番号制度」の導入に必要な「共通番号法案」、いわゆる「マイナンバー法案」を巡って連合審査会を開きました。
この中で田村厚生労働大臣は、「共通番号制度」の使用範囲の拡大について、「医療情報や健康情報などが漏れた場合、大変なことになるので、よほど厳しい対策をとらなければならない」と述べました。
その一方で田村大臣は、「診療情報や治療情報を、個人が特定できない形にしながら、収集・分析していけば、有効な治療方法などが導き出される有効性は十分にある」と述べ、将来的に共通番号を患者の治療情報などの管理に活用するかどうかは、個人情報の保護を考慮しながら、検討したいという考えを示しました。

2013年4月5日金曜日

乳がん検査マンモグラフィの痛み軽減、新圧迫板を発売


2013/4/4 23:00

富士フイルムは、マンモグラフィ検査に対する「痛い」という不安感を低減するための新構造圧迫板「FS(Fit Sweet)圧迫板」を、富士フイルムメディカルを通じて2013年4月11日に発売する。同社のマンモグラフィ「AMULET」シリーズに向けたオプションであり、標準ユーザー渡し価格は80万円。

マンモグラフィ検査時には、乳房を圧迫して固定するため、患者の痛みや不快感があるのが実態だ。従来の圧迫板では、乳房の最も厚みがある部分に集中して圧力が加わっていたため、その部分に強い痛みを感じることが多くあったという。

そこで、今回発売するFS圧迫板は、乳房と接触した際に圧迫板が乳房の厚みに沿って傾斜すると同時に、圧迫板の前面部と両側面部(左右)の計3カ所にスリットを設けることで、乳房を圧迫する際の圧力が面内で分散される設計にした。

同社が女性10人を対象に実施した評価では、10人中7人から「痛みが軽減し、次回も『FS圧迫板』で検査したい」という結果が得られたという。また、撮影を実施した技師からは、「従来の圧迫板よりもポジショニングしやすい傾向にある」という意見が得られたとする。

2013年3月20日水曜日

「脂肪幹細胞」移植で乳房再生 鳥取大、5人に実施成功

2013年3月20日 20時35分

 脂肪の組織になる能力がある「脂肪幹細胞」を本人の体から採り、乳がんの手術で乳房を部分的に切除した部位に移植し、乳房を再生する臨床研究を鳥取大病院(鳥取県米子市)が5人に実施し、成功したことが同病院への取材で20日、分かった。担当の中山敏准教授によると、患者の経過は良好という。

 鳥取大病院によると、移植手術は昨年9月~ことし1月、神奈川県や大阪府など5府県の30~60代の女性に実施した。乳がんで、乳房をできるだけ残す温存手術を受けてから1年以上経過し、がんの再発や転移がない人が対象。

(共同)

乳癌におけるリンパ節転移の頻度はIntrinsic Subtype分類によって異なる可能性【St.Gallen 2013】

私はLuminal B T2、だから、、、
________________
2013. 3. 15

乳癌におけるリンパ節転移の頻度はIntrinsic Subtype分類によって異なる可能性が明らかとなった。2010年から2011年に愛知県がんセンターで切除手術を受けた原発性乳癌患者のうち、腋窩リンパ節郭清またはセンチネルリンパ節のバイオプシー検査を行った全患者を対象に臨床的なデータ解析と病理学的な解析を行った結果、示されたもの。

 バイオプシー検査でIntrinsic Subtype分類を行い、リンパ節転移のリスク評価などに利用できる可能性があるという。3月13日から16日まで開催されている13th St.Gallen International Breast Cancer Conference2013で、愛知県がんセンター中央病院乳腺科の澤木正孝氏によって発表された。

 澤木氏らは術前療法を受けた患者を除いた654人について、Intrinsic Subtype分類に従ってLuminal A、Luminal B、Luminal-HER2、HER2、トリプルネガティブに分けて評価を行った。

 リンパ節転移陽性は157人(24.0%)だった。Luminal A(364人)、Luminal B(110人)、Luminal-HER2(46人)、HER2(53人)、トリプルネガティブ(81人)それぞれでpT分類とリンパ節転移の関係を調べた。全体として、pT分類が進行するほど、リンパ節転移の率が高まっていた。しかし、Intrinsic Subtype分類でさらに分けると、少数例の場合もあり断定的なことは言えないものの、Subtypeによってリンパ節転移の結果が異なる可能性が見い出された。

 Luminal AではpT分類が進行するほどリンパ節転移陽性の比率が高まっていた。しかしLuminal Bでは、T1a(2人)のうち50%、T1b (12人)のうち8.3%、T1c(55人)のうち38.2%、T2(34人)のうち55.9%、T3(2人)のうち50%がリンパ節転移陽性だった。

 Luminal-HER2ではT1c(17人)のうち41.1%、T2(10人)のうち60%、T3(1人)は100%がリンパ節転移陽性だった。HER2ではT1a(6人)のうち16.7%、T1b (4人)のうち25%、T1c(15人)のうち46.7%、T2(10人)のうち60%がリンパ節転移陽性だった。

 トリプルネガティブでは、T1b (15人)のうち26.7%、T1c(29人)のうち24.1%、T2(20人)のうち50%、T3(2人)のうち50%がリンパ節転移陽性だった。

2013年3月14日木曜日

乳がんの放射線治療で心臓疾患リスク高まる


2013年 3月 14日 13:12 JST

医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)が13日掲載した欧州での大規模研究結果によると、乳がんで放射線治療を受けた女性では心筋梗塞やその他の重大な冠状動脈事象のリスクが高まることが明らかになった。

 リスクは治療後5年目に高まりはじめ、少なくとも20年間続き、照射された放射線量が多ければ多いほど重大な心疾患に結びつく可能性が高くなるという。

 乳がん専門家らは、現在の放射線による治療は研究対象となった女性の多くが治療を受けた時に比べて的を絞った照射が可能になり、周囲の組織へのダメージが少なくなっていると指摘した。また、研究結果が示唆しているのは放射線治療を受ける患者を減らすべきだということではなく、心臓疾患要因のリスクをできるだけ注意深く管理すべきだということだ、と指摘した。

 同研究についての論説を執筆したデイナ・ファーバーがん研究所(ボストン)の心臓医ジャビッド・モスレヒ氏は「この問題を文脈の中で捉えることが大事だ。放射線やその他の治療の進歩によって多くの女性乳がん患者が生き延びられるようになったためにこの問題が大きくなってきたことが背景にある」と強調した。

 英オックスフォード大学などの研究者は、1958—2001年にスウェーデンとデンマークで乳がんの外部放射線治療を受けた、当時70歳未満の女性の記録を調査。重大な冠状動脈事象を発症した963人と同事象のなかった1205人を比較検討した。心臓に近い左側の乳房のがんの治療を受けた人は右側の乳房を治療した人に比べてリスクが高かった。

 研究者らはまた、患者がどの程度の放射線を浴びたかを推定し、心臓への照射が1グレイ(放射線のエネルギー量の単位)増すごとに心筋梗塞の発症、ステントないし動脈バイパス処置、あるいは心臓疾患での死亡のリスクが7%高まると計算している。既に心臓疾患の恐れがあった女性のリスクは照射後に一段と高まった。

 米国で毎年乳がんと診断される21万1000人の女性のほぼ半分は、化学療法や手術に加えて放射線療法も受けている。この療法は、特に腫瘍摘出—腫瘍だけで乳房全体は切除しない—を受けた人や乳房切除(mastectomy)を受け再発のリスクが高い人、あるいは既にリンパ節に転移している人に勧められる。

 放射線腫瘍医で「Breastcancer.org」の創設者マリサ・ワイス博士は、最新の放射線機器では「ミリメートル単位で照射できる」と述べた。「respiratory dating」と呼ばれる技術では、患者の一呼吸ごとに心臓の状況を監視し、心臓が最も影響を受けやすい時には照射を瞬間的に中断することができるという。また、一部の病院では、心臓への負担を少なくするために乳房の一部分だけに照射している。

 論説は、この研究がアテローム性動脈硬化というタイプの心臓疾患しか調べておらず、また他の方法でも放射線は心臓組織にダメージを与えることが知られていることから、研究結果は氷山の一角である可能性があると警告している。調査対象の女性の中には、同様に心臓に悪影響を与えることのある化学療法を受けた人はほとんどいなかった。

 同論説は、こうした研究は「心臓腫瘍学」と呼ばれる新しい医学領域にとって役立つとし、がん治療の計画を立てる際には心臓医も早い段階から参加すべきであることを示唆している。ワイス博士は「グッドニュースは、乳がんと診断を下されたあと女性が長い期間生存する傾向にあることだ。そのため長期的な副作用が極めて重要な問題になってきた」と話している。

2013年3月13日水曜日

がん患者3年放置、死亡 名大病院


がん患者3年放置、死亡 名大病院
2013年3月13日 13時41分

 名古屋大病院(名古屋市昭和区)は13日、口の中に早期のがんが見つかった愛知県内の30代の患者に対し、書類を紛失したため3年以上手術を行わず放置していたと発表した。病院はその後に手術したが、昨年4月に死亡。外部専門家らでつくる調査委員会は「予定通り手術が行われていれば、がんは完治した可能性が高い」と指摘した。

 病院によると、患者は2008年3月に名大病院歯科口腔(こうくう)外科を受診し、口腔内のがんの疑いが高いと診断された。担当医は患者に手術の必要性を説明し、入院の申し込み書を作成。「入院日が決まったら連絡する」と伝えたが、その後、患者に連絡しなかった。

 患者は自覚症状がなかったことや、医師からがんの疑いがある「グレーゾーン」と伝えられていたことなどから、すぐに手術が必要な病状ではないと判断。かかりつけ医に受診したが、名大病院で受診しなかった。その後、11年4月に痛みが悪化。名大病院で再受診したところ、入院申込書の紛失により手術が行われていないことが発覚した。

 病院は患者に同年5月にがん摘出手術などを行ったが、同年8月に肺への転移が拡大し、12年4月に呼吸不全で死亡した。

 病院によると、通常は入院や手術を決定した担当医が3枚複写の入院申込書を作成し、2枚は担当医が診療科で、1枚は事務職員が保管する。各診療科は、申込書を元に入院日を決定、患者に電話連絡をする入院係を配置していた。今回は、診療科に保管される2枚が紛失しており、入院係による患者の入院日の決定や連絡が行われなかった。事務職員が保管した1枚も入院手続きに反映されなかった。

 調査委員会は「病院の連絡体制や、情報管理体制の不備による事務手続きのミスが原因」と判断。名大病院は再発防止策として、紛失の恐れがない入院予約システムの電子化と複数の部署で情報を共有する仕組みを作った。
 病院は、患者の遺族に謝罪し、和解した。患者は亡くなる前に「しっかりと調べてほしい」と話したという。

 松尾清一院長は会見で、「早期の治療で命が助かったり重症化を防げる可能性は高い。大学として早期発見、早期治療を患者に盛んに進めてきたのに、情報管理という初歩的なことができておらず、遺族には申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と謝罪した。

(中日新聞)

2013年3月11日月曜日

樹木希林が日本アカデミー賞で衝撃告白「全身がん」

最優秀主演女優賞に輝きあいさつする樹木希林
Photo By スポニチ

 第36回日本アカデミー賞の授賞式が8日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で行われた。「わが母の記」で最優秀主演女優賞の樹木希林(70)は、受賞の喜びとともに「全身、がん」だと述べ、闘病していることを告白。04年に乳がんが見つかり、手術したが、その後転移したとみられるという。

 最優秀主演女優賞は08年に「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」で受賞して以来で2度目。沢尻エリカ(26)ら優秀主演女優賞の受賞者を持ち上げ「私なんかじゃなく…エリカ様にあげたい」と恐縮してみせた後、衝撃の告白が飛び出した。

 「来年が大変。私は全身がんですから。来年の司会は確約できない」と打ち明け、会場がざわめいた。最優秀主演女優賞受賞者は翌年の授賞式で司会を務めるのが慣例。冗談とも本気ともつかぬ“希林節”で「まあ、それは来年また考えればいいか」と、笑いを誘うように続けた。

 授賞式後の会見でも、あらためて「2軒(の病院)が言うから、そうなのよ」と述べた。

 04年に乳がんが見つかり、翌年、右乳房の全摘出手術を受けた。一度は完治報告したが、その後全身に転移。それも昨年春には完治したと一部で報道されていた。今回の転移箇所は明かさず「医者に行くと、また(別の箇所が)見つかるから行くのはイヤなの。これくらいの年の人間は、一つや二つは持っているもの。精密な機械だと、見つかっちゃうのよ」と笑った。病状は落ち着いており、深刻ではないとしている。

[ 2013年3月9日 06:00 ]

2013年2月25日月曜日

通院

採血がないと楽だな。うっかり、リュープリン注射を忘れて診察だけで帰りそうになった。精算で指摘されて慌てて化学療法室へ。。。

なんでも電子カルテに移行して以前のデータが無くなってしまったらしく、前回は左右どちらにうったのか覚えていますか、と聞かれた。覚えてはいなかったけど、メモしてあったので答えたけど、移行じゃなくて切り替わっただけじゃん、と思った(笑。まぁ、仮に前回と同じ側にうったとしても、効き目は同じらしいから、いいけどね。

シートに載せてある文字が変わった

2013年2月24日日曜日

乳がん再発、生活改善で防ぐ…2千人を調査へ

(2013年2月23日17時32分  読売新聞)

 ふだんの生活で、どんな点に気をつければ、乳がん再発を防げるかを探る研究が今月、岡山大病院(岡山市)を中心に中四国の19の医療機関で始まった。


 今後10年間で乳がん経験者2000人の生活習慣を調べ、予防に適したモデルケースを作る計画だ。

 岡山大病院のほか、広島市民病院(広島市)、松江赤十字病院(松江市)、四国がんセンター(松山市)、高知大病院(高知県南国市)などが参加。

 乳がんは国内で年間約5万人が発症。最初に診断された時のがんの進行度によっては、治療後の再発率は3割以上になるという。

 岡山大病院によると、生活習慣が発症要因の一つとされるが、再発との関連の研究はほとんどない。乳がん経験者には「安心して暮らすにはどうすればいいか」と心配したり、本や雑誌で再発との関連が指摘された食品を取らなかったりする人が少なくないという。

2013年2月20日水曜日

肥満と乳癌

2013年2月19日
NIHの研究により代謝と乳癌の分子的関連性が確認される

NCIプレスリリース 2013年2月5日

米国国立衛生研究所の傘下にある米国国立癌研究所(NCI)の研究者とその同僚らの研究によると、糖尿病や肥満といった代謝不均衡状態に関与するタンパク質が、悪性の乳癌発症に関係する可能性があることが新たに判明した。代謝不均衡はしばしば炭水化物の摂取量が増加することによって引き起こされるが、C末端結合タンパク質(CtBP)と呼ばれる分子の過剰な活性化につながることがある。この過剰な活性化が結果として乳癌のリスクを高めることがある。この研究結果はNature Communications誌において2013年2月5日に発表された。

「食生活を変えたり健康的な食生活を維持したりすることは、CtBP活性を薬理学的に低下させる方法の発展と相まって、いつか癌と肥満の関連を断ち切れるかもしれない」と、NCI 遺伝学科転写制御課責任者のKevin Gardner医学博士は言う。

(キャプション)TNBC(トリプルネガティブ乳癌)におけるCtBP発現に、CtBP活性抑制分子を重ねたモデル

肥満と癌に強い関連性があることは主に集団をベースにした研究を通して知られている。だがこの関連性の裏にあるメカニズムは明らかにされていない。過去にGardner医学博士の研究室である研究が考案、実施されたが、この研究によると、細胞の代謝状態が高く、体内で多量の炭水化物が処理されると、CtBPはそれを認識し、若年齢で発症する乳癌に関連する遺伝子(BRCA1)の発現を抑制することが分かった。

この初期の研究では、肥満と体重増加は、多量の炭水化物量の摂取に反応してBRCA1癌抑制遺伝子の発現レベルが低下することで乳癌の原因になる可能性を示した。これにより、なぜBRCA1の遺伝性突然変異を有する女性もまた体重増加により乳癌のリスクが増えるのか、部分的に説明がつく。

Gardner医学博士の新たな研究は過去の研究を進展させたものである。Gardner医学博士は、より臨床転帰が不良である乳癌患者において、CtBPによって抑制された遺伝子経路が減少しているかどうかを確認するため、過去の遺伝子発現研究を分析した。Gardner医学博士のチームは研究室で最初にヒトの乳癌細胞から始めた。CtBPと、発現を制御するためにCtBPが結合している遺伝子のつながりを評価した。研究者らはこのアプローチとゲノム配列決定を併せて行い、どのように、またどの位置で、CtBPが乳癌に関連する遺伝子に結合しているのかを確かめた。次に研究者らは、RNA干渉(遺伝子発現を抑制する過程)や細胞の炭水化物供給を減少させることにより、CtBP値の減少が観察された細胞内における遺伝子発現研究と、分析内容を統合させた。

研究者らは、CtBP値を低下させた状態ではDNAの修復機能が増し、細胞の安定性と増殖制御が発達することを発見した。より悪性の乳癌では、CtBPの標的である遺伝子経路もまた損傷していたことを確認した。さらに、腫瘍のCtBP値が高い患者では生存期間の短縮がみられた。また、過去にCtBPと結合することが示された小分子阻害剤は、多量に炭水化物を摂取した状況においても乳癌細胞でCtBPの遺伝子抑制効果をもとの状態に戻せることが明らかとなった。

Gardner医学博士は、「CtBPを標的にすることが、乳癌の治療法や、ひいてはその予防法を提供することに繋がることをわれわれの新しい研究は示した」そして、「研究は今後も肥満、CtBP、そして乳癌の関連性に注目し続けるべきである。その調査には、多領域の研究者チームや、より多くの集団ベースの研究が必要になってくるだろう」と述べている。

本研究はNCIの資金提供(プロジェクト番号1Z01BC010847-01)によるものである。

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参考文献: Gardner K, et al. Genome-wide profiles of CtBP link metabolism with genome stability and epithelial reprogramming in breast cancer. Nature Communications. Feb. 5, 2013. DOI: 10.1038/ncomms2438.
原文

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相葉沙枝 翻訳
原 文堅(乳癌/四国がんセンター)監修
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2013年2月14日木曜日

起床時の手のこわばり

起床時の手のこわばりが無くなった。いつからかは定かでない。

こわばりが始まったのはホルモン治療が始まって数週間経った2011年末からなので、約1年で治ったことになる。最初はビックリして「このまま指が動かなくなってしまうんじゃ・・・」と不安にもなったけど、リウマチ検査陰性だったので様子見しているうちに慣れてしまっていた。今朝、起床時に「そういえば・・・」と手をにぎにぎしてみたら、あのこわばりが全くなくなっていた。本当に良かった。

腕が上がる目測角度


外旋以外は正常値まで戻っている。肩越しにまわした手と腰後ろから回した手の先が背中で触れるようにもなった。でも、外旋はまだ完全には治っていない。治るといいな。一年くらいは回復の見込みがあるっぽいので、もう少しの間は様子見だな。

*()内は正常値 *左右両方
・前方 180度(180)  
・横 180度(180) 
・後方 60度(60) 
・内 90度(90) 
・外 70度↑(90)

2013年2月9日土曜日

早期乳癌では「切除」より「温存」が生存率優れる


早期乳癌では「切除」より「温存」が生存率優れる(2013.2.7掲載)

早期乳癌の乳房温存術は、乳房切除術よりも生存率の面で優れている可能性があることが米デューク大学癌研究所(ノースカロライナ州)のShelley Hwang氏らの研究で明らかになり、研究結果が「Cancer」オンライン版に1月28日掲載された。

Hwang氏らによる今回の研究は、カリフォルニア癌登録の14年間のデータを検討したもので、早期乳癌(ステージ1~2)の女性11万2,000人強(39~80歳)を1990年から2004年まで追跡。半数以上(55%)が乳房温存術と放射線療法を受け、45%が乳房切除術(乳房の完全な切除)のみを受けた。早期乳癌で乳房切除を受けた場合、通常放射線療法は受けないという実情を反映させ、乳房温存術と放射線療法の併用を、乳房切除術単独(放射線療法の併用なし)と比較したと、Hwang氏は説明している。

中央値で9年以上にわたる追跡期間中、3万1,000人強が死亡。うち約40%が乳癌による死亡だった。治療後3年間は、乳房温存群に比べて乳房切除群のほうが心疾患などの疾患で死亡するリスクが高かった。これは、乳房温存群のほうが全般的な健康状態が良好であったことを示す可能性があるという。全追跡期間中で、乳房温存群は乳癌を克服する確率が高かった。特に50歳以上のエストロゲン受容体陽性癌の女性に大きな効果がみられ、この年齢層では、乳房温存群は乳房切除術群より乳癌による死亡リスクが13%低く、全原因による死亡リスクが19%低かった。

Hwang氏によると、早期乳癌の患者がすべて乳房温存術を受けられるわけではないという。乳房温存術では、腫瘍組織と一部の健康な組織のみを切除し、残りの乳房を残すが、癌が大きい場合や、同じ乳房に異なる癌が複数ある場合は対象とならない。早期乳癌で乳房切除術を選択する女性の割合は数年前に下落がみられたが、最近は上昇している。Hwang氏らは、乳房温存術は安全な選択肢であると告げられても、不安を抱く女性が多いのではないかと推測している。米国立癌研究所(NCI)の支援により実施された今回の研究からは、乳房温存術のほうがむしろ生存率が高い可能性も示唆されるという。

別の専門家は今回の研究について、診断年や年齢層によって分けて検討しているほか、社会経済的状況を考慮し、早期癌に限定するなど、さまざまな面で科学的に妥当なものであると述べている。Hwang氏は、この研究は観察研究であり、早期乳癌において乳房温存療法が乳房切除術よりも有効であるという因果関係を裏付けるものではないと強調。今回の研究は情報に左右されやすい女性を安心させるものだが、乳房切除術を否定するものではなく、最終的には個人がどちらを望むかが重要だと同氏は述べている。(HealthDay News1月28日)