2013年12月14日土曜日

エリブリンが未治療のHER2陰性局所再発・転移乳癌でも高い抗腫瘍活性示す

学会スペシャル: サンアントニオ乳癌シンポジウム2013
2013年12月10日~14日 San Antonio, U.S.A.
エリブリンが未治療のHER2陰性局所再発・転移乳癌でも高い抗腫瘍活性示す
2013/12/14

微小管阻害薬エリブリンが、HER2陰性の局所再発乳癌または転移乳癌(MBC)に対する1次治療として、高い活性を有することが、多施設共同のフェーズ2単群試験で示された。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているSan Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)において、米国Texas Oncology-Dallas Presbyterian HospitalのKristi McIntyre氏が発表した。

 非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤エリブリンは、局所再発もしくは転移性乳癌の全生存期間(OS)を改善することが、エリブリンと治験医師が選択した治療法(対照群)を比較したフェーズ3試験(EMBRACE)で明らかになっている。同試験では、多くがHER2陰性の転移乳癌(MBC)で、すべての患者が、試験前に再発または転移疾患に対する2レジメン以上の治療を受けていた。

 本試験では、再発・転移疾患に対する治療歴のない患者を対象とした。登録基準は、18歳以上の女性、局所再発またはMBC、HER2陰性、余命24週以上、ECOG PS 0-2、ネオアジュバント/アジュバント化学療法後12カ月以上、放射線療法、ホルモン療法後2週間以上、腎機能/骨/肝機能正常。

 エリブリンは3週毎に第1、8日に1.4mg/m2を2-5分で静注。主要エンドポイントは奏効率(ORR)、副次エンドポイントは安全性と忍容性、反応までの時間、反応時間などとした。

 56例が少なくとも1回のエリブリン投与を受け、32例(57%)が6サイクルを完了した。サイクル数中央値は7(1-43)。42例(75%)が何らかの乳がん治療を受けており、うち38例(90.5%)がネオアジュバントまたは/かつアジュバント療法を受けていた。タキサン治療歴があった患者は25例、アントランサイクリン系の治療歴ありは27例だった。

 奏効率(0RR)は28.6%(16/56例、95%信頼区間:17.3-42.2)だった。タキサン/アントラサイクリンによるネオアジュバントまたは/かつアジュバント療法を受けた患者のORRは27.3%(9/33例)、臨床ベネフィット率(CBR)は45.5%(15/33例)で、全患者と同様だった。

 ER陽性(ER+)の患者41例では、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)12例と比較して、より大きな臨床ベネフィットが認められた(ORR 34.1%対16.7%、CBR 64.3%対25.0%、疾患コントロール率85.4%対50.0%)。

 PRを得た16例の反応までの時間(TTR)は中央値で1.4カ月(95%信頼区間:1.2-2.7)、反応時間(DOR)は5.8カ月(95%信頼区間:4.7-10.6)。

 25%以上の患者で認めた(全グレード)治療関連の有害事象は、脱毛、好中球減少、疲労、末梢神経障害、吐き気、貧血、白血球減少、便秘、下痢だった。36例(64.3%)が、グレード3/4の治療関連有害事象を経験した。重度の有害事象は5例(8.9%)。発熱性好中球減少が3例(5.4%)、好中球減少が3例(5.4%)、白血球減少が1例(1.8%)。

 有害事象による減量/治療中断/延期は30例(53.6%)、治療中止は6例(10.7%)。22例(39.3%)が最初の投与から平均2.6週(18日)でG-CSFの投与を要した。

 McIntyre氏は「エリブリンは、十分に治療を受けたHER2陰性MBCのみならず、未治療のHER2陰性MBCにおいても、高い活性を有することが示された。安全性プロファイルも、これまでに知られているものと一貫性があった。今後、フェーズ3試験を経て、未治療MBC患者でも使用可能になることを期待する」とした。

早期乳癌の術後補助療法でのビスホスホネート投与は閉経後患者の骨再発リスクと乳癌死リスクを減らす

学会スペシャル: サンアントニオ乳癌シンポジウム2013
2013年12月10日~14日 San Antonio, U.S.A.

早期乳癌の術後補助療法でのビスホスホネート投与は閉経後患者の骨再発リスクと乳癌死リスクを減らす
2013/12/14

早期乳癌患者の術後補助療法としてビスホスホネート(BP)製剤を投与すると、閉経後患者の骨再発のリスクを減らし、乳癌死のリスクも減らすことが明らかとなった。無作為化試験のメタ解析の結果示されたもの。骨再発のリスクを34%、乳癌死のリスクを17%減らした。しかし骨以外の最初の遠隔再発は有意に減らさなかった。ビスホスホネートの投与は閉経前の患者には影響しなかった。また、非乳癌死、対側乳癌、局所再発についても影響は与えなかった。

 12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、the Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)'s Bisphosphonate Working Groupを代表して、英Sheffield Cancer Research CentreのColeman R氏によって発表された。

 研究グループは、術後補助療法としてBP製剤投与群と非投与群またはプラセボ群を比較した無作為化試験36件2万2982人の結果から、22試験1万7791人のデータを受け取り、メタ解析を行った。

 その結果、全再発については、1万7709人で3408イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は25.4%、非投与群は26.5%だった(Logrank 2p=0.08)。遠隔再発は1万7709人で2835イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は20.9%、非投与群22.3%だった(Logrank 2p=0.03)。

 骨再発については1万7709人で888イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は6.9%、非投与群は8.4%だった(Logrank 2p=0.0009)。非骨遠隔再発は1万7709人で1947イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は15.0%、非投与群は15.1%だった(Logrank 2p=0.71)。

 局所再発については1万7709人で698イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は6.3%、非投与群は5.5%だった(Logrank 2p=0.27)。対側乳房の再発については1万7709人で218イベントが起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は2.5%、非投与群は2.4%だった(Logrank 2p=0.96)。

 閉経後乳癌に限定したところ、1万1036人中遠隔再発は1564件起きており、10年の再発率はBP製剤投与群は18.4%、非投与群は21.9%だった(Logrank 2p=0.0003)。骨再発は508件起きており、10年の再発率はBP製剤投与群は5.9%、非投与群は8.8%だった(Logrank 2p<0.00001)。非骨再発は1056件起きていたが、10年の再発率はBP製剤投与群は13.3%、非投与群は14.3%だった(Logrank 2p=0.24)だった。

 骨再発を閉経状態と組み合わせると、年間のイベント率の比は閉経前の患者では差がなく、閉経後の患者で差があった。骨以外の部分の再発については、閉経前と閉経後に差はほとんどなかった。BP製剤の種類で分けても閉経後の患者で効果が高かった。

 全患者を対象に乳癌死について調べたところ、10年時点の死亡率はBP製剤投与群は16.9%、非投与群18.7%だった(Logrank 2p=0.04)。非乳癌死はどちらも5.3%で差がなかった(Logrank 2p=0.96)。

 閉経後患者の乳癌死は、10年時点ではBP製剤投与群は15.2%、非投与群18.3%だった(Logrank 2p=0.004)。全死亡率はBP製剤投与群は21.5%、非投与群23.8%だった(Logrank 2p=0.007)。

乳癌術後AI剤による関節痛は運動療法で緩和できる可能性

乳癌術後AI剤による関節痛は運動療法で緩和できる可能性
2013/12/13

乳癌手術後のアロマターゼ阻害(AI)剤による関節痛を運動慮法で緩和できる可能性が明らかとなった。無作為化臨床試験HOPE(Hormones and Physical Exercise)の結果示されたもの。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、米Yale UniversityのMelinda L. Irwin氏によって発表された。

 HOPE試験は1期から3C期のホルモン受容体陽性乳癌患者で、少なくとも6カ月間AI剤を服用し、軽度以上の関節痛を経験している121人の閉経後女性を運動療法群(61人)と通常療法群(60人)に割り付けて行われた。両群の患者とも6カ月後、12カ月後の来院で評価された。

 関節痛の評価はBPI(Brief Pain Inventory)スコアで行った。BPIスコアは0点から10点までで点数化され、3から4点は軽度の痛み、5から7点は中等度の痛み、8点から10点は重度の痛みと評価される。

 運動療法群には週2回の筋力強化トレーニング(6種類の共通した運動の8回から12回繰り返しの3セット)、週に2.5時間の中等度の有酸素運動が行われた。通常療法群には運動の勧めなどの文書を提供し、毎月AI剤の服用遵守の電話を行った。
 
 参加した患者は運動能力はあるが運動が不活発(1週間に90分未満)の過体重の女性で、60代のほとんどが非ヒスパニックの白人だった。高度な教育を受けており、診断後2年、AI剤を1.5年服用しているステージ1、2の患者がほとんどだった。

 試験の結果、12カ月後の運動活性は運動療法群の平均が158.9分/週、通常療法群が48.9分/週で有意(p=0.0001)に差がついていた。運動療法群の週2回の筋力トレーニング実施の平均は70%。最大酸素摂取量は運動療法群は6.5%増加し、通常療法群は1.8%減少した。体重は運動療法群が3%減少し、通常療法群は変化がなかった。

 BPIスコアは最悪の痛み、痛みの重症度、痛みの干渉のいずれも、運動療法群でのみベースラインから12カ月後で有意(p<0.05)に改善していた。改善度合いは運動の遵守が80%以上の患者のほうが80%以下の患者よりも高かった。