2016年1月28日木曜日

医師が健康のために摂取している食品は?

医師2561人に聞きました
医師が健康のために摂取している食品は?
2016/1/28


医師は、医療の専門家であるとともに、健康に関しても豊富な知識をもった「健康のプロ」と言える。その医師たちは、自らの健康のために、どのようなことに気をつけているのだろうか。今回は、医師の「食生活」の実態に迫ってみた。

 日経BPメディカル研究所が、日経メディカルOnlineの医師会員を対象に調査を行ったところ、医師2561人から回答があり、そのうちの78.8%が、「日々の食事に気をつけるようにしている」と回答した(図1)。具体的に医師が食生活上、注意しているのは、「栄養のバランスの良い食事」(64.3%)、「規則正しく食べる」(46.7%)、「腹八分目で暴飲暴食をしない」(40.5%)、「塩分を摂り過ぎない」(39.5%)などだった。
図1 「日々の食事にどのくらい気をつけていますか」(n=2561)
 医師が積極的に摂るよう心がけている食材について聞いたところ、最も回答が多かったのは「豆腐」(61.2%)で、これに次いで「コーヒー」(60.6%)、「青魚」(59.9%)、「納豆」(53.9%)、「ヨーグルト」(50.4%)などが挙がった(図2)。
図2 「日々の食事で健康維持のために積極的に摂るよう心がけているものは何ですか」(n=2561 )
また「最近、注目している栄養成分や食品」について聞いたところ、最も多くの医師が注目していると回答したのは「ヨーグルト」。こちらも「コーヒー」が第2位で、以下、「日本茶」「納豆」「オメガ3脂肪酸」が続いた(図3)。
図3 「最近注目している栄養成分、食品は何ですか」(n=2561)
これらの健康食材について、医師はどのような効果を期待しているのだろうか。注目する理由について自由記述形式で記入してもらったところ、「コーヒー」については、大腸癌や肝臓癌をはじめとする「癌の予防効果」を期待する声が最も多く、「カフェインの覚醒作用」「寿命を延ばす効果」などの記述も見られた。

 最も注目度の高かった「ヨーグルト」については、「腸内細菌叢の改善」や「整腸作用」の効果をあげる人が多く、「免疫力向上」「アレルギー改善」などの記述も見られた。

 「日本茶」については、「抗酸化作用」「抗菌作用」など、カテキンの効果を期待する声が目立った。「納豆」は発酵食品としての効果を挙げる人が多かったほか、「良質の蛋白源」であることを評価する声も見られた。「オメガ3脂肪酸」は、「動脈硬化予防」を上げる人がほとんどで、「心血管イベントの発症予防」や「認知症予防」などを上げる人もいた。

 なお、「健康のためになるべく摂取を控えているもの」について聞いたところ、糖質や砂糖を含む食品を上げた医師が約4割に上った。

2016年1月20日水曜日

がん10年生存率、58% 初の大規模集計、3万5千症例

2016年1月20日 00時06分

国立がん研究センター(東京)は19日、全国の16施設で1999~2002年にがんの診療を始めた約3万5千症例の分析で、10年後に患者が生存している割合を示す10年生存率は全体で58・2%だったと発表した。5年生存率のデータはこれまでにもあるが、10年生存率を大規模なデータで算出したのは初めてという。

 がん治癒の目安とされる5年生存率は63・1%で10年生存率と大きくは変わらないが、乳がんや肝臓がんは5年後以降も生存率の低下が目立った。また、ほぼ全てのがんで早期に発見し、治療を始めるほど良好な結果が得られることも確認できた。

(共同)

2016年1月19日火曜日

乳がん患者で化学療法の開始が遅れると全生存が低下―トリプルネガティブ乳がんで顕著に/MDアンダーソンがんセンター

社会人口学的要素が治療開始の遅延の原因となることがMDアンダーソンがんセンターの研究で明らかに
MDアンダーソンがんセンター ニュースリリース 2015年12月10日

術後化学療法の開始が手術後91日以降まで遅れた場合、乳がん患者の中でも特にトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者で死亡リスクが著しく上昇する可能性のあることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新たな研究によって明らかにされた。さらに、社会経済的背景および医療保険の加入状況、民族性などの要因が治療開始の遅延に影響を与えていることも明らかになった。

JAMA Oncology誌で発表された今回の研究では、手術から91日以降に化学療法を開始した場合、5年以内に死亡する可能性が34%上昇した。TNBC患者にかぎれば53%の上昇だった。

術後化学療法は、初回手術後に行われる化学療法で、再発リスクと死亡リスクを低下させることで患者に利益をもたらすことがすでに明らかにされている。こう説明するのは、Health Services Research部門およびBreast Medical Oncology部門の助教であるMariana Chavez Mac Gregor医師である。しかし、術後化学療法の開始が遅くなると、わずかに残存した腫瘍が増殖したり、薬剤耐性を獲得したりするおそれがあるのだ。

現在、術後化学療法の最適な開始時期を定めたガイドラインはない。メディケア・メディケイド・サービスセンター(Centers for Medicare and Medicaid Services、CMS)は、一部の患者では、診断後120日以内の術後化学療法開始を医療品質基準としている。現在、MDアンダーソンがんセンターを含めた11のがん病院が、この基準に基づいて報告を行っている。

先行研究では、術後療法の開始が遅れると転帰が不良となる可能性が指摘されている。しかし、これまで、術後治療の最適な開始時期は明らかにされていない。現代の術後治療の最適な開始時期を明らかにし、また治療開始遅延をもたらす要因を特定するため、California Cancer Registryデータの分析が行われた。

今回の集団ベースの研究は、2005年1月1日から2010年12月31日の間にステージ1から3の浸潤性乳がんと診断され、術後化学療法を受けた患者24,823人のデータを検討した。本研究は、現在行われている治療レジメンを用いた化学療法において、治療開始が遅れた場合の影響を検討する研究としては、最も大規模な研究である。

「術後1カ月以内に化学療法を開始した患者と比べ、手術後30日から90日の間に化学療法を開始した患者では転帰が不良となった例は観察されなかった。しかし、手術後91日以降に化学療法を開始した場合は、全体の死亡リスクと乳がんによる死亡リスクが統計学的に有意に上昇した」と、今回の研究の筆頭著者であるChavez Mac Gregor医師は話す。

手術後91日以降に化学療法を開始した患者は、今回の分析対象者の9.8%を占めた。これらの患者は、手術後30日以内に化学療法を開始した患者と比べると、分析を行った時点では、5年以内に死亡する可能性が34%上昇し、乳がんによって死亡する可能性は27%上昇した。

分析を行ったデータには、乳がんのタイプに関する情報も含まれており、化学療法開始の遅延による影響が各タイプによって異なるか否かについても分析された。トリプルネガティブ患者では、治療開始が遅延(術後91日以降に開始)すると死亡リスクが53%上昇した。ホルモン受容体陽性患者あるいはHER2陽性患者では、治療開始遅延による有意な影響はみられなかった。

統括著者のSharon Giordano医師(Health Services Research部門長兼教授、Breast Medical Oncology部門教授)によれば、「今回の研究データによって、トリプルネガティブ乳がん患者の場合、適切な時期に化学療法を開始することが特に重要であると示された」という。

今回の研究では、医療の提供状況を改善すべき患者群を明らかにするため、研究者らは化学療法開始遅延に影響する因子の特定も試みた。ステージが進行した患者やトリプルネガティブ患者では、治療開始の遅延は比較的少なかったが、患者が高齢な場合や再建手術を行った場合、そして一部の社会人口学的要素に関連して治療開始の遅延がみられた。

「予想どおり、治療開始が遅い例の一部に社会人口学的要素が大きく影響していることが観察された。社会経済的背景(SES)が低い患者や民間医療保険に加入していない患者、ヒスパニック系やアフリカ系アメリカ人患者では、治療開始が遅くなる傾向が高かった」とChavez Mac Gregor医師は話す。

生存割合の悪化は、アフリカ系アメリカ人であること、社会経済的背景が低いこと、メディケアおよびメディケイドの対象者であることと関連がみられた。一方で、国立がん研究所指定のがんセンターで治療を受けている患者は、その他の施設で治療を受けている患者と比べ、死亡リスクが34%低下した。

「われわれは、治療を遅らせる要因を特定して対策を講じ、ゆくゆくは弱い立場にある人々に対する医療ケアの提供を改善する必要がある。たいていの臨床状況では、術後3カ月以内に化学療法を開始することは大いに可能だ」とChavez Mac Gregor医師は話す。

今回の研究結果は、化学療法開始までの所要日数を医療品質基準に含める意義を支持するものであり、さらに、治療は手術後90日以内に開始するべきであることが示唆されるとChavez Mac Gregor医師は説明した。

著者らは、今回の研究は後ろ向き研究であり、制約があるであろうことを認めたうえで、乳がん患者が術後化学療法を受ける場合、全患者が手術後90日以内あるいは診断後120日以内に治療を開始するべきであると結論づけた。

Chavez Mac Gregor医師は「化学療法は適切な時期に開始する必要がある。私は、患者が化学療法の開始の遅延を望む場合には、このデータを伝え、治療開始が遅くなった場合、治療効果が低下する可能性があることを伝えている。治療開始は、できるかぎり遅らせるべきではないのだ」と話した。