2016年2月25日木曜日

抗癌剤による嘔吐はほぼ制御可能に 残る課題は主観的な症状である悪心への対処

リポート◎日本癌治療学会のガイドラインが現場に浸透
抗癌剤による嘔吐はほぼ制御可能に
残る課題は主観的な症状である悪心への対処
2016/2/25

抗癌剤治療中の患者が洗面台に向かって嘔吐する――こんな光景は制吐療法の進歩で過去のものとなった。残るは主観的な部分が大きい悪心への対処。患者の訴えをいかに評価できるかが鍵になる。

「抗癌剤による治療では、その投与を完遂できるようにするための支持療法も重要だ」と話す埼玉医大国際医療センターの佐伯俊昭氏。

 抗癌剤を投与されている患者の「つらい副作用」の象徴でもあった悪心・嘔吐に対して、日本癌治療学会が「制吐薬適正使用ガイドライン」を公表したのは2010年のこと。その作成当初より、医療現場での利用状況や制吐効果を評価し改訂版に反映させることが計画されていた。

 そして2年後に全国のがん診療連携拠点病院における3807人の患者について前向き調査を行った結果では、72%が悪心・嘔吐のスクリーニングを受けていた。このうち高度催吐性リスクの化学療法が施行された患者の83%にガイドラインが推奨する予防的制吐治療が行われ、その84%に嘔吐が認められなかった。中度催吐性リスクのレジメンでは、患者の91%に推奨する予防的制吐治療が行われ、その84%に嘔吐が認められなかった。

 また医療を提供する側、日本緩和医療学会、日本癌治療学会、日本造血細胞移植学会、日本放射線腫瘍学会、日本臨床腫瘍学会会員の医師、看護師、薬剤師を対象にしたアンケートでは、94%が日常診療でガイドラインを重視していると回答し、90%が有用であると回答していた。

 欧州でのガイドライン遵守率が30%程度という報告(Annals of Oncology 2012)もある中で、日本における抗癌剤制吐療法のレベルの高さを裏付ける数字だ。

 制吐薬適正使用ガイドライン初版出版委員会委員長で改訂ワーキンググループ委員長でもある埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター長の佐伯俊昭氏は、「嘔吐については良好にコントロールできていることが分かった。しかしまだ悪心が残っている。悪心の客観的評価は難しいので、後回しになっていた。真のユーザーである患者からの情報をいかに拾い上げていくかがこれからの鍵になる」と話す。

 実際、2015年10月に発行されたガイドラインの第2版では、「悪心・嘔吐の適切な評価はどのように行うか」というクリニカルクエスチョンが新設された。そこでは、「適切な悪心・嘔吐の評価においては、医療者と患者の症状の認識は異なるという報告を踏まえ、医療者による客観的評価とともに患者の主観的評価を含めることが必要である」と、現状に対して記述されている。

read more: http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/201602/545906.html

2016年2月13日土曜日

欧米型の食事に含まれる砂糖は、乳がんの増殖および転移リスクを高める/MDアンダーソンがんセンター

マウスを用いたMDアンダーソンの研究により、砂糖の炎症経路への悪影響が指摘される
MDアンダーソンがんセンター ニュースリリース 2015年12月31日

典型的な欧米型の食事に多く含まれる砂糖が、乳がんおよび肺への転移のリスクを高める可能性があることが、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究によって示された。

この研究結果はCancer Research誌電子版1月1日号で公表され、食品中の砂糖が12-LOX(12-リポキシゲナーゼ)と呼ばれる酵素のシグナル伝達経路に影響をおよぼすことが示された。

「欧米型の食事と同程度のショ糖を摂取したマウスでは、砂糖を含まないでんぷん食を摂取したマウスと比べ、腫瘍の増殖および転移が促進されることを、われわれは発見しました」と、緩和・リハビリテーション・統合医療部門助教、Peiying Yang博士は述べた。「これは、12-LOXとそれに関連する12-HETEと呼ばれる脂肪酸の発現増加が原因の一つでした」。

これまでの疫学研究でも、食品中の砂糖が乳がんの増殖に影響を及ぼすことが示されており、それには炎症が何らかの役割をはたしているのではないかと考えられていた。

「今回の研究では、複数のマウスモデルで、乳腺腫瘍の増殖に対する食品中の砂糖の影響について調査し、またそれに関連すると考えられるいくつかのメカニズムについても調査しました」と、共著者で緩和・リハビリテーション・統合医療部門教授の Lorenzo Cohen博士は述べた。「私たちの食生活のどこにでもある砂糖や異性化糖(高フルクトースコーンシロップ)には果糖が含まれていますが、特にその果糖が乳房腫瘍の肺転移促進や、乳房腫瘍内での12-HETE産生促進の原因となることをわれわれは見出しました」。

Cohen博士は、本研究データは食品中の砂糖が、乳がんの増殖や転移のリスクを高める12-LOXシグナル伝達を誘導することを示唆していると付け加えた。

乳がんのリスク因子を同定することは、公衆衛生上の優先事項であると著者は述べている。米国における1人当たりの砂糖の摂取量が年間100ポンド超に上昇していること、砂糖入り飲料の摂取の増加が、世界的な肥満、心疾患およびがん増加の重要な寄与因子であると同定されていることを考えると、適度な砂糖の摂取にとどめることが重要であると、研究者らは言明している。

「過去の研究では、がんの増殖における砂糖、特にブドウ糖の関与およびエネルギー代謝経路について検討されてきました」と、Yang博士は述べる。「しかしながら、炎症カスケードについては、本研究において砂糖によって駆動された発がん経路とは別の経路である可能性があるため、さらなる研究が必要です」。

これまでの研究では、乳がんの増殖に対する砂糖摂取の直接的な影響について、乳がんの動物モデルを用いて調査したもの、あるいは特異的なメカニズムについて検討したものはない、とYang博士は付け加えた。

MDアンダーソンの研究チームは、マウスを4種類の食事群に無作為に割り付け、それぞれに4種類の食事のうちの1種類を与えるという研究を行った。6カ月齢時点で、でんぷん対照食群のマウスの30%に測定可能な腫瘍が認められたのに対し、ショ糖を多く含む食事群のマウスでは、50~58%に乳腺腫瘍の増殖が認められた。また、本研究では、ショ糖または果糖を多く含む食事群のマウスの方が、でんぷん食の対照群マウスよりも、肺転移の数が有意に多かったことも示された。

「本研究によって、食品中のショ糖または果糖が、乳房腫瘍細胞において12-LOXと12-HETEの産生を誘導することがin vivoで示唆されました」と、Cohen博士は述べた。「これは、砂糖によって腫瘍の増殖が促進されることと関連する、何らかのシグナル伝達経路がマウスに存在することを示唆しています。しかしながら、食品中のショ糖と果糖がどのように12-HETEを誘導するのか、またそれが直接的あるいは間接的に影響を及ぼすのかはまだわかっていません」。

本研究チームは、食品中のショ糖または果糖が、特に12-LOX経路を通じて乳房腫瘍の増殖と転移に影響を及ぼすメカニズムについて、さらなる調査が必要であると確信している。

MDアンダーソンの研究チームメンバーは以下のとおりである。
Yan Jiang, Yong Pan, Patrea Rhea, and Lin Tan, all of Palliative, Rehabilitation and Integrative Medicine; Mihai Gagea, D.V.M., Ph.D., Veterinary Medicine & Surgery; and Susan Fischer, Epigenetics & Molecular Carcinogenesis.

本研究は、米国国立衛生研究所(P30CA0166672)、H. Leighton Steward 夫妻、EOG Resources, Inc.から資金提供を受けた。

2016年2月11日木曜日

よく使う鎮痛薬、約半数の医師が「ロキソニン」

第2位は僅差でアセトアミノフェン、第3位はセレコキシブ
2016/2/11

日経メディカル Onlineの医師会員を対象に、「鎮痛の目的で使用する非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)およびアセトアミノフェンの経口薬」のうち最も処方頻度の高いものを聞いたところ、約半数の医師がロキソプロフェンナトリウム水和物(商品名ロキソニン他)を挙げた。第2位のアセトアミノフェン(カロナール他)は39.8%に関しては、ロキソニンに迫る勢いだが、第3位のセレコキシブ(セレコックス、7.0%)以下を選んだ医師かなり少なかった。

2016年2月10日水曜日

4月から「電子処方箋」が解禁へ!マイナンバーの活用も検討

2016年02月10日 11時30分

「電子処方箋」の解禁が近づいている。

2020年以降に統一システムへ?

日本経済新聞は、厚生労働省が4月から「処方箋の電子化」を認めると報じた。

まずは希望する都道府県や市町村でスタートし、2020年度以降には全国に広げて統一システムにすることを検討するという。

紙の処方箋が不要に

現在は、医師が交付した処方箋を患者が薬局に持参。薬剤師は処方箋に従って調剤した上で、患者の氏名や薬名、調剤量などを記録して3年間保存する必要がある。

処方箋が電子化されれば、医者と薬局が専用サーバーでデータをやりとりできるようになるので紙の処方箋は不要に。

当面は、識別番号が書かれた「引換証」を患者が医師から受け取って薬局に提出しなければならないが、将来的にはマイナンバーカードを提示するだけで薬を受け取れるような仕組みが検討されている。

ネット上の反応はさまざま

処方箋の電子化がついに解禁されるという報道を受けて、ネット上には反響が続々。


賞賛する声が多いが、マイナンバーとの紐づけを懸念する声もみられた。

日本医師会は“医療ID”が必要と主張

医療分野でのマイナンバー利用については、医療関係者からも不安の声があがっている。

日本医師会は昨年12月、医療情報連携の充実は地域医療や医師不足などの有効な解決方法であるとしながらも、次のように指摘。

個人番号を医療の現場で利用するべきではない

漏えいなどを確実に阻止することは難しいことや、一生変更できない番号では漏洩した場合に取り返しがつかなくなるとして、マイナンバーとは異なる「医療ID」が必要だと訴えた。

日本薬剤師会は負担増を懸念

日本薬剤師会は2013年、処方箋の電子化には大きなメリットがあると述べた上で、次のようにコメント。

効率化を目指すべき電子化に、効果を遥かに上回るコストを投入することとなっては本末転倒である

処方箋の電子化は処方情報の電子化に比べて多くのコストと手間がかかることも事実だとして、過度な負担が新たに発生しない視点が重要と訴えた。

処方箋の電子化にかかる費用は、専用サーバーの導入費用は厚労省負担だが、運営費用は医療機関や薬局が負担する見通しとなっている。

2016年2月5日金曜日

朝食抜き 脳卒中リスク高まる がんセンターなど確認

毎日新聞2016年2月5日

 朝食を抜く人ほど脳卒中を発症するリスクが高まるとの研究結果を、国立がん研究センターと大阪大の研究チームが4日、発表した。朝食を欠くと朝の血圧の上昇が大きくなるためと考えられるという。朝食を食べないと肥満などにつながることは指摘されていたが、脳卒中リスクが高まることが確認されたのは初めてという。

 チームは、1995年と98年に生活習慣に関するアンケートを実施し、回答した全国8県の45〜74歳の男女約8万人を、1週間の朝食を取る回数で4群に分けた。2010年まで追跡し、脳卒中(脳出血、脳梗塞<こうそく>など)や虚血性心疾患の発症との関連を調べた。

 この結果、朝食を取らない、または週に1、2回しか食べない群では、毎日食べる群に比べて、脳卒中全体の発症が1.18倍高くなり、このうち脳出血は1.36倍高かった。脳梗塞やくも膜下出血、虚血性心疾患は関連性は見られなかった。

 脳出血の原因の一つは高血圧だが、チームによると、朝目覚める時、血圧は上昇するが、朝食を取らないと空腹感などのストレスからさらに上昇するとの過去の研究があるという。朝食を欠くと、肥満や糖尿病のリスクを上昇させるとの研究結果もある。

 大阪大の磯博康教授(公衆衛生学)は「子どもが朝食をとらないと、集中力を欠いて成績に影響するというデータはあるが、大人も生活習慣病の予防のために毎日朝食をとった方がよいだろう」と話す。