2014年7月8日火曜日

妊婦に抗がん剤、子どもに影響なし 乳がん患者を調査

2014年7月 8日

胎児への悪影響を心配して日本では実施することが少ない妊娠中の乳がん患者への抗がん剤治療で、妊娠5カ月以降なら治療をしても赤ちゃんの健康には影響がなかったとする報告を聖路加国際病院(東京)がまとめた。14年間で34人が誕生し、これまで障害や異常などは確認されていないという。11日に大阪市で開かれる日本乳癌(にゅうがん)学会学術総会で発表される。

 20~40代で乳がんになる女性は年間約2万人と、乳がん全体の27%を占める。妊娠中にがんが見つかる人も増えており、治療優先で中絶が選択されたり、妊娠中は治療せずにがんが進んだりすることも少なくないとみられる。

 海外では一部の抗がん剤なら胎児に影響がないという報告も多く、積極的に治療をしている。日本乳癌学会の指針も、胎児が薬の影響を受けやすい妊娠4カ月以前は行うべきではないとしているが、5カ月以降は「必要と判断される場合には検討してもよい」とある。だが、がん専門病院には産科がないこともあり、聖路加国際病院に全国から妊娠中の患者が訪れるという。

2014年7月3日木曜日

エーザイ、抗がん剤「ハラヴェン」の転移性乳がんへの適応拡大で欧州委から承認取得

Tokyo, 2014年7月3日 10時20分   -  (JCN Newswire)   -   エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役 CEO:内藤晴夫)は、このたび、抗がん剤「ハラヴェン(R)」(一般名:エリブリンメシル酸塩)に関して、転移性乳がんに対するより早期からの治療貢献を可能とする「1 レジメン以上の前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん(術後または再発後にアントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤による治療歴を有すること)」への適応拡大について、欧州委員会(European Commission)より承認を取得しましたのでお知らせします。

本剤は、EU では現在、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む 2 レジメン以上の前治療歴のある局所進行性・転移性乳がんの適応で承認を取得し、販売されています。今回の承認により、前治療歴が 2 レジメン以上に限られた現在の適応から、より前治療歴の少ない転移性乳がん患者様へ適応が拡大され、EU 各国の転移性乳がん患者様に対して、より早期から本剤が貢献できるようになります。

本承認は、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む 2~5 レジメンの前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん患者様を対象とした主治医選択薬との比較臨床第III相試験(305 試験:EMBRACE 試験)と、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤による前治療歴を有する局所進行性・転移性乳がんの患者様を対象としたカペシタビンとの比較臨床第III相試験(301試験)の合計1,800症例を超える、乳がんを対象とした臨床試験では最大規模となるエビデンスに基づくものです。

欧州では、毎年30万人以上の女性が乳がんと診断され、3分の1の患者様が転移性乳がんに進行しています。1,2
乳がんの診断・治療は、新しい技術や薬剤の開発により年々進歩していますが、転移性乳がん治療においては、依然として高いアンメット・メディカル・ニーズが存在しています。当社は、引き続き本剤が患者様価値増大に結びつくべくエビデンスの創出に邁進し、がん患者様とそのご家族、さらには医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献してまいります。

2014年7月2日水曜日

閉経前ホルモン陽性乳癌女性の治療に卵巣機能抑制併用療法の新たな選択肢

閉経前ホルモン陽性乳癌女性の治療に卵巣機能抑制併用療法の新たな選択肢(ASCO2014)/NCIプレスリリース
2014年6月1日

乳癌治療に用いる薬物エキセメスタンは、乳癌予防に広く用いられるタモキシフェンと比較して、術後の卵巣機能抑制療法と併用する閉経前女性において、乳癌再発の予防効果が高い。これは、ホルモン治療に感受性のある早期乳癌の女性を対象とした試験の結果である。

この試験は、International Breast Cancer Study Group(IBSCG)が、Breast International Group(BIG)、North American Breast Cancer Groupと共同で実施し、米国国立癌研究所(NCI)、IBSCG、製薬企業Pfizer社、Ipsen社の研究助成を受けた。TEXT(Tamoxifen and Exemestane Trial)試験とSOFT(Suppression of Ovarian Function Trial)試験を併合解析した結果が、シカゴで開催された2014年米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会(late breaking abstract #1)およびNew England Journal of Medicine誌電子版で発表された。

エキセメスタンと卵巣機能抑制の併用療法は、タモキシフェンと卵巣機能抑制の併用療法と比較して、全浸潤癌のリスクを28%低下させ、浸潤性乳癌再発リスクを34%低下させた。試験開始から5年時点で乳癌無再発の女性は、エキセメスタン+卵巣機能抑制群で92.8%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群で88.8%であった。

エキセメスタンなどのアロマターゼ阻害薬による治療は、閉経後乳癌患者において、タモキシフェンによる治療よりも利益が得られることが以前から示されていた。アロマターゼ阻害薬は、アロマターゼ酵素のはたらきを妨げることによって、女性ホルモンの一種であるエストラジオールの形成を阻害する。TEXT試験とSOFT試験はいずれも、エキセメスタンと卵巣機能抑制療法の併用によって、この利益を閉経前女性にも拡大できるかどうかを確かめるために実施された。ホルモン感受性乳癌は、エストロゲンまたはプロゲステロンの受容体が陽性である乳癌と定義される。米国では50歳未満の女性で診断される乳癌の79%を占めている。

第3相ランダム化試験であるTEXT試験とSOFT試験には、2003年11月から2011年4月の間に、27カ国の500を超える医療施設で、閉経前のホルモン受容体陽性の早期乳癌患者がそれぞれ2,672人と3,066人登録された。2つの試験で計4,690人の患者が、エキセメスタン+卵巣機能抑制療法群とタモキシフェン+卵巣機能抑制療法群に無作為に割り付けられ、5年間の術後療法を受けた。

SOFT試験には、タモキシフェン単独の第3の治療群がある。この群は2014年末に解析される予定である。一部の患者は、術後補助療法の一環として化学療法も受けている。

TEXT試験とSOFT試験は、相補的にデザインされている。2つの試験は、同時期に同じ一般母集団を対象に実施され、2つの治療群が共通している。両試験を併合解析することにより、個別の場合よりも早く、医師と患者に結果を提示することができた。

卵巣機能抑制療法は、閉経前女性の乳癌治療に何十年も用いられてきたが、他の療法と併用した場合に利益の上乗せがあるかどうかは依然としてわかっていない。両試験では、卵巣機能抑制療法をタモキシフェンまたはエキセメスタンと併用した。閉経前女性でエキセメスタンなどのアロマターゼ阻害薬を使用するには、卵巣が産生するエストロゲンを抑制する必要がある。TEXT試験とSOFT試験では、卵巣機能抑制療法として、月1回のGnRH作動薬triptorelin(トリプトレリン)注射、両側卵巣の外科的切除、または卵巣への放射線照射を行った。

「この結果は、閉経前のホルモン感受性乳癌女性に、新たな治療の選択肢をもたらします。アロマターゼ阻害薬はこれまで閉経後の女性のみに推奨されていました。この研究の結果、卵巣機能抑制との併用によって、閉経前の女性にも有効であることが示されました」と、本研究の共同責任者であり、Oncology Institute of Southern Switzerland(スイス、Bellinzona)乳腺科医長のOlivia Pagani医師は述べています。「私も一臨床医として、閉経前患者に卵巣機能抑制による補助療法を日々勧めていますが、この結果を受けて日常の診療が変わることでしょう。今後はタモキシフェンではなく、アロマターゼ阻害薬と卵巣機能抑制療法を併用するつもりです」。

NCIの支援により、米国とカナダのTEXT試験およびSOFT試験の参加がNorth American Breast Cancer Group (NABCG)を通じて実現した。TEXT試験とSOFT試験の全患者登録のうち、3分の1はNABCGが関与し、半数はBreast International Group(BIG)ネットワークに加盟する腫瘍学共同研究グループが関与した。Alliance(旧CALGB)が主導する北米の参加によって、試験への患者登録が加速され、早期に結果が得られるため、今回のような日常診療を変える結果が迅速に現場に還元される。

再発率低下に対する治療の有効性の評価に加えて、患者の申告による生活の質の評価と、医師からの副作用の報告が5年間収集された。「この2つの治療法で、患者の申告による生活の質の結果と、重篤な副作用の頻度が全般的に同様であったことは安心すべきです」と試験の共同責任者であり、Tom Baker Cancer Centre(カナダ、カルガリー)の腫瘍内科医、カナダ国立癌研究所(NCIC)臨床試験グループのBreast Disease Site Committee執行役員であるBarbara Walley医師は述べている。「この閉経前女性の母集団で報告された副作用は、タモキシフェンとアロマターゼ阻害薬が多くの人に処方されている閉経後女性の場合と同様です」。本試験に参加している閉経前女性を継続して追跡し、長期予後、忍容性、副作用を評価する。

「本試験の閉経前女性の場合のように、患者の転帰を改善する研究において、北米内さらにはその枠を超える国際的な協力が重要であることが明確に示されました」と、ハーバード大学医学部教授であり、ダナファーバー癌研究所(ボストン)に設置されたIBCSG Statistical Center(統計センター)責任者であるRichard Gelber博士は述べている。「このNCIとIBCSGの連携は、今後臨床研究を進めていく上での一つの成功モデルとなります」。