2013年2月9日土曜日

早期乳癌では「切除」より「温存」が生存率優れる


早期乳癌では「切除」より「温存」が生存率優れる(2013.2.7掲載)

早期乳癌の乳房温存術は、乳房切除術よりも生存率の面で優れている可能性があることが米デューク大学癌研究所(ノースカロライナ州)のShelley Hwang氏らの研究で明らかになり、研究結果が「Cancer」オンライン版に1月28日掲載された。

Hwang氏らによる今回の研究は、カリフォルニア癌登録の14年間のデータを検討したもので、早期乳癌(ステージ1~2)の女性11万2,000人強(39~80歳)を1990年から2004年まで追跡。半数以上(55%)が乳房温存術と放射線療法を受け、45%が乳房切除術(乳房の完全な切除)のみを受けた。早期乳癌で乳房切除を受けた場合、通常放射線療法は受けないという実情を反映させ、乳房温存術と放射線療法の併用を、乳房切除術単独(放射線療法の併用なし)と比較したと、Hwang氏は説明している。

中央値で9年以上にわたる追跡期間中、3万1,000人強が死亡。うち約40%が乳癌による死亡だった。治療後3年間は、乳房温存群に比べて乳房切除群のほうが心疾患などの疾患で死亡するリスクが高かった。これは、乳房温存群のほうが全般的な健康状態が良好であったことを示す可能性があるという。全追跡期間中で、乳房温存群は乳癌を克服する確率が高かった。特に50歳以上のエストロゲン受容体陽性癌の女性に大きな効果がみられ、この年齢層では、乳房温存群は乳房切除術群より乳癌による死亡リスクが13%低く、全原因による死亡リスクが19%低かった。

Hwang氏によると、早期乳癌の患者がすべて乳房温存術を受けられるわけではないという。乳房温存術では、腫瘍組織と一部の健康な組織のみを切除し、残りの乳房を残すが、癌が大きい場合や、同じ乳房に異なる癌が複数ある場合は対象とならない。早期乳癌で乳房切除術を選択する女性の割合は数年前に下落がみられたが、最近は上昇している。Hwang氏らは、乳房温存術は安全な選択肢であると告げられても、不安を抱く女性が多いのではないかと推測している。米国立癌研究所(NCI)の支援により実施された今回の研究からは、乳房温存術のほうがむしろ生存率が高い可能性も示唆されるという。

別の専門家は今回の研究について、診断年や年齢層によって分けて検討しているほか、社会経済的状況を考慮し、早期癌に限定するなど、さまざまな面で科学的に妥当なものであると述べている。Hwang氏は、この研究は観察研究であり、早期乳癌において乳房温存療法が乳房切除術よりも有効であるという因果関係を裏付けるものではないと強調。今回の研究は情報に左右されやすい女性を安心させるものだが、乳房切除術を否定するものではなく、最終的には個人がどちらを望むかが重要だと同氏は述べている。(HealthDay News1月28日)