2015年1月26日月曜日

生検により癌は拡散しないとの研究結果/メイヨークリニック

015年1月11日
フロリダ州ジャクソンビル−−フロリダ州にあるメイヨークリニック・ジャクソンビル総合病院で治療を受けた2000人超の患者を対象とした研究によると、癌生検によって癌が播種(拡散)するという迷信が否定される結果となった。研究班は1月9日のGut誌電子版の中で、生検を受けた患者の転帰は受けなかった患者よりも良好であったと発表している。

画像は、膵臓を生検針で穿刺する様子を超音波内視鏡で描出したものである。超音波内視鏡は胃内に存在(経口鏡を使用)。超音波内視鏡先端の超音波プローブにより胃に隣接する膵臓の描出が可能。超音波ガイド下で長い生検針を内視鏡から通し、腫瘍を穿刺している。

研究班の対象は膵癌であったが、本研究で用いられた診断手法(穿刺吸引細胞診)は腫瘍の種類を問わず用いられるため、この結果は他の癌でも当てはまるではと考えられる、と本研究の主任研究者で消化器科医のマイケル・ウォレス医師(公衆衛生学修士、内科学教授)は語った。

穿刺吸引細胞診は、細い中空針を用いて腫瘍から数個の癌細胞を抽出する低侵襲の手技である。生検により癌が播種されるという思い込みが、多くの患者や医師の中にさえ長い間存在しつづけてきた。

その可能性が考えられる症例は数例あるものの(極めてまれだが)、生検に対して心配する必要は全くないとウォレス医師は語る。

「研究結果を見れば、医師も患者も生検が非常に安全だと思い直すはずです。米国内では癌生検が毎年何百万回も行われています。ですが、その中の1、2例のために、生検が癌を播種させるという迷信がこれほどまで有名になっているのです」。

生検は「テーラーメイド治療を行う上で非常に価値のある情報を与えてくれます。ある症例では、より良好な転帰のため手術を行う前に化学療法と放射線療法を行うこともできますし、またある症例では、手術をはじめとした無用な治療を行わないという選択ができるのです」とウォレス医師は語る。

膵臓癌の手術は「非常に大きなオペレーション」であり、「ほとんどの人は手術を行う前に癌の存在を確認したいと思うはずです」とウォレス医師は語る。ある研究によると、膵癌疑いで手術を受けた患者のうち9%は良性腫瘍であったという結果が出ている。

ウォレス医師とその研究班は、生検のリスクを検証するための研究を個別に2回行っている。

2013年にEndoscopy誌に掲載された研究では、研究班はメイヨークリニックで治療を受ける256人の膵臓癌患者の転帰について検証した。研究班は、超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)を受けた患者208人と受けなかった患者48人との間で、癌の再発に差がないという結果を示した。

今回の研究では、研究班は手術を受けた非転移性膵癌患者に関するメディケアのデータ11年分(1998年~2009年)を調査した。研究班は、EUS-FNAを受けた498人と受けなかった1536人の全生存期間と膵癌特異的な生存期間を調査した。

平均追跡期間21カ月の中で、死亡者はEUS-FNA施行群のうち285人(57%)、EUS-FNA未施行群のうち1167人(76%)であった。膵癌が死因であると判定した患者はEUS-FNA施行群のうち251人(50%)、EUS-FNA未施行群のうち980人(64%)であった。

全生存期間の中央値はEUS-FNA施行群で22カ月、EUS-FNA未施行群で15カ月であった。

「生検はきわめて有効です。生検を行うことで患者にあった医療、つまり患者一人ひとりに合わせ、できる限り良好な転帰を得られるよう計画した治療を行うことができるのです」とウォレス医師は語る。

共著者には、ミネソタ州のメイヨークリニック・ロチェスター総合病院の研究者も参加している。