2015年2月9日月曜日

痛みは脳や体に記憶される

2015/2/9 日経メディカル

 痛みは身体だけでなく、精神面や社会生活にも大きな影響を及ぼし、生命予後をも悪化させる。近年、「痛み記憶」という概念が提唱され、記憶の段階に至らせないことが重要だと分かってきた。痛みが出始めたら、軽視することなく、少しでも早い時期から痛みを軽減させる対応が求められている。

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痛みは記憶されるでしょうか

大人になると、子どもの時のように階段を1段抜かししたり、柵を跳び越えたりするなど、ちょっとした冒険ができなくなります。「ケガをしたときに感じた痛み」が思い起こされて、腰が引けてしまうからです。

さらに、痛みの記憶によって、非常に面倒なことに合うこともあります。

ケガや病気、あるいは手術などで痛みを感じると、この痛みの刺激は中枢神経に記憶されます。これは一種の「痛みの中枢への感作」と言います。この中枢への感作によって、常に脳や脊髄が刺激されると、痛みの原因になる刺激がなくても、脳はいつも痛みを感じ続けてしまうことがあります。ケガや病気が治っても、その部分がまるでそのケガや病気が起きているかのように、痛み続けてしまうわけであります。単なる慢性痛と違うのは、末梢神経がこの痛みの記憶の影響で、過敏になっているため、風が吹いただけ、ちょっと触っただけでも、強い痛みを感じる点です。

「幻肢痛」も痛みの記憶の一つと考えられています。よく聞くのは、実際にはない切断した足に痛みが走るという現象です。足に限らず、乳房や陰茎、内臓でも起こります。途切れた末梢神経が異常な信号を発するためとか、脊髄、脳のネットワークの異常とか言われていますが、はっきりしたことは分かっていません。