2012年4月13日金曜日

朝晩2回の歯磨きががんの予防に

日経ヘルス 2010/01号

がんになりにくい人とは、どんな人か。最近、生活習慣や遺伝子の特徴と発がんとの関係が次々と解明されているが、愛知県がんセンター研究所の疫学・予防部の松尾恵太郎室長の研究グループが注目したのは、歯磨きの習慣。毎日2回以上歯を磨く人は、口腔がんや食道がんのリスクが低下するという。

食物は、まず口の中(口腔)に入り、飲みこむことによってのど(咽頭・喉頭)を通過、さらに食道を下って胃に入る。松尾室長は「この部分にできるがんは、生活習慣と関連が深い。手足にかかったらやけどするような熱いスープを飲むなど、体のほかの部分より強い刺激を受けているためだ」と話す。喫煙、飲酒、粥など熱い物を食べる習慣のある地域でがん罹患率は明らかに高い。松尾室長は「予防には禁煙や節酒が重要だが、リスクをさらに減らすには、がんと関連のある別の生活習慣を探す必要がある」と研究に着手した。

愛知県がんセンターでは、21年前から病院を訪れた患者に生活習慣などに関するアンケート調査を行い、膨大な疫学データを蓄積している。

今回、松尾室長は、2000年12月から05年の11月までの5年分を利用し、口腔から食道にかけてのがんリスクと生活習慣を調べた。この部位にがんを発症した961人と、がんでない2883人のデータを解析したところ、1日1回歯を磨く人で発症リスクを1としたときに、1回も磨かない人、1日2回以上磨く人で発症リスクに大きな差があることがわかった。


すべてのがんで歯を磨かない人はリスクが高く、しかも1日1回より2回磨いた方がリスクが低かった。松尾室長は、「数値算出の際には、喫煙、飲酒、性別、年齢などの影響が及ばない処理がされているので、歯磨きはどんな人でもがんリスク低減につながる。口腔から食道にかけてのがんは南アジアから中東にかけて罹患率が高く、そうした地域でも簡単にできる予防法として提案したい」と話している。

なぜ歯磨きによってがんリスクが軽減するのか。理由はまだ明らかになっていないが、口の中には無数の細菌がいて、なかにアルデヒドなどの有害物質を発生させる細菌もいる。歯磨きによって口内の細菌量をコントロールすることで、がんを予防していると考えられるという。1日のうち、いつ磨くのが効果的か。松尾室長は、科学的データはないが、就寝中は唾液分泌が少なく化学物質の蓄積も多い朝食後と就寝前に磨くのが効果的なのでは」と話す。