2015年6月12日金曜日

両側乳房切除術に対する乳がん患者の誤った認識が明らかに/ミシガン大学総合がんセンター

海外癌医療情報 2015年6月12日

生存率の向上に効果がないことを大半の乳がん患者は知らない
2015年6月2日

ミシガン州アナーバー-乳がんを発症した女性のうち、両側乳房切除術を検討した患者はおよそ半数であるが、この切除術で生存率は改善されないことを知っていたのは、そのうちのわずか37%であったことが、調査の結果明らかになった。

両側乳病切除術を受けた女性の36%が、手術により生存率が向上すると考えていた。二次性がんの平均的な発症リスクを有する女性では、がん化していない側の乳房を切除しても生存率は有意に改善されないことは、複数の研究によりこれまでにも示されている。

アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会にて発表された本研究は、乳がん治療を受けたことのある女性1,949人を対象としているが、うちおよそ20%が予防的対側乳房切除術と呼ばれる方法で、両方の乳房を切除していた。がんを発症していないもう一方の乳房にもがんを発症するリスクは、特定の遺伝子変異や家族歴がある場合に高くなるが、これらの遺伝子変異や家族歴がない場合でも、19%の患者が両側乳房切除術を受けていた。

「多くの女性で治療に必要とされる以上の広範囲に及ぶ手術が行われていることは驚くべき結果です。乳がんと診断されれば、病気と闘うために最善を尽くそうと思うのは当然です。だから私の患者さんの多くは、子どもたちのために生きていられるよう、できることは何でもしたいと言います。そのために本当に効果がある治療法は何なのか、または、思い切った決断に思えても実際には初期の一般的な乳がんでは転帰の改善が見込めないのではないか、ということを患者にきちんと理解させられるかどうかは、われわれ医師にかかっているのです」と、ミシガン大学医学部放射線腫瘍学准教授で主著者のReshma Jagsi,医学博士は言う。

外科医からの推奨あるいは外科医が推奨しているという認識が、患者が治療を選択する上で大きな影響を及ぼしていたのである。両側乳房切除術を受けないよう外科医に勧められたと答えた女性のうち、手術を受けたのはわずか4%であったが、手術を外科医に勧められたと認識した女性では、59%が両側乳房切除術を受けた。

「患者は誤った認識をもったまま、切除術を受けており、この認識をなんとしても正さなければなりません。予防的対側乳房切除術の知識と外科医が伝えた内容に対する患者の認識には大変大きな隔たりがあり、医師らはこの問題に取り組む必要があります」とミシガン大学医学部内科学および同大公衆衛生学部健康マネジメント政策学教授で、研究著者のSteven J. Katz医学博士は言う。

本研究は、ミシガン大学総合がんセンターを拠点とする多施設共同研究グループ、Cancer Surveillance and Outcome Research Teamにより実施された。本研究グループは、がん治療の質に関する問題を重点的に研究しており、Jagsi および Katz両医学博士はミシガン大学Healthcare Policy and Innovation研究所のメンバーでもある。