2012年11月9日金曜日

放射線とホルモン治療の併用方法

掲示板「チームオンコロジー」より抜粋
Re:術後、ホルモン治療までの期間  2012/11/07

乳癌治療にかかわる医師として、放射線とホルモン治療の併用方法についての疑問について考えてみたいと思います。

術後ホルモン治療を放射線治療を同時に開始するか、放射線治療後に開始するかについてに、ランダム化試験(くじ引きでどちらの治療にするか決める)という科学的に最も信憑性が高い手法で比較検討した臨床試験に関する報告はいまだありません。

これまで行われた観察研究(実際にどのような治療をしたか、その結果どうであったかのまとめ)によれば、乳房内の局所再発、遠隔転移なども含めた再発率や生存期間に差は認められていません。

タモキシフェンの場合には、ホルモン治療と放射線治療を同時に行った場合に皮膚などの組織が固くなったり、放射線による肺炎の発現がやや高くなる可能性が報告されています。しかしこれらの報告は小規模の研究が多く、本当に副作用が強くなるか、確実とまではいえません。

アロマターゼ阻害剤の場合には放射線治療と同時に行っても、副作用の増加は報告されていません。

これまで分かっていることをまとめますと、ホルモン治療と放射線治療を同時に行うことによる明らかな治療効果の増強・相乗効果は確認できていない、同時に治療を行ってもほとんど安全であるがタモキシフェンの場合には副作用(命にかかわるほどの危険はありませんが)が強くなることもあるかもしれない、とまとめられます。

ご参考になればと思います。