2015年7月26日日曜日

たった1晩の徹夜で体内時計の遺伝子に変化が生じることが判明

2015年07月26日

私たちはちょっと徹夜をしたくらいで体に影響はないだろうと考えがちだが、スウェーデンのウプサラ大学の研究により、たった一晩、徹夜をしただけで、体内時計の遺伝子に変化が生じることが分かった。

ラボで宿泊実験

研究チームは標準体重の男性15人にそれぞれ2回、ラボでの宿泊実験に参加したもらった。1回につきラボで2泊し、2回のうちどちらかで2泊目は睡眠を8時間とるか、眠らずに徹夜をするかしてもらった(1回目の2泊目で徹夜をしたら、2回目の2泊目では8時間寝る。もしくはその逆)。

遺伝子と代謝機能は徹夜でどう変化する?

被験者の環境を同じにするため、実験中の光の条件、被験者の食べ物、活動レベルは厳密に管理され、眠らないあいだも被験者にはベッドで過ごしてもらった。

また、8時間寝る場合も、徹夜をする場合も、2泊目を過ごしたあとは、被験者の皮下脂肪および太ももの筋肉の組織をそれぞれ採取した。

さらに、インスリン感受性の低下があるかどうかを判断するため、砂糖水を飲む前と飲んだあとの血液もそれぞれ採取した。

時計遺伝子に変化が

遺伝子の活性は、エピジェネティクス(DNA配列の変化を伴わず、環境の変化など、後天的な修飾により遺伝子発現が制御され維持される仕組)と呼ばれるメカニズムで制御されている。

このメカニズムによってDNA分子が化学的に変化し(DNAのメチル化)、遺伝子のオン・オフが制御されるのだが、徹夜をしたあとは、時計遺伝子のなかに、メチル化したDNA分子が増えていることがわかった。

また、時計遺伝子の発現にも変化が生じていることが確認された。

興味深いのは、一晩、寝不足になっただけで、すぐにDNAのメチル化が生じることであり、その変化が時計遺伝子で起きていることが重要だと研究を率いたJonathan Cedernaes博士は指摘する。

徹夜で体内時計はシンクロしなくなる?

また、脂肪組織と骨格筋では変化の仕方が異なっており、一晩徹夜をしただけで、2つの組織の重要な分子時計がもはやシンクロしていないことが示唆された。

これは徹夜後の血液検査で、被験者の耐糖能(ブドウ糖が摂取されたとき、血糖値を一定に保つ調節機構)が低下していたことと関連があると考えられるそうだ。

交代勤務に就く人の代謝機能に影響

今の段階では、これらの変化がどの程度持続するのかはわかっておらず、徹夜をしたあと、たっぷり睡眠をとれば、変化がリセットされる可能性もある。

その一方、こうした変化が交代勤務に就く人たちや、2型糖尿病を患う人たちの代謝記憶に作用する可能性もあり、それが長期に及んだ場合、代謝機能に影響を及ぼすことも考えられるとCedernaes博士は述べている。