2014年12月7日日曜日

乳がん予防切除を実施 中部初、愛知がんセンターで

遺伝子検査で乳がん発症の可能性が高いと判定された女性患者に対する乳房切除手術を、愛知県がんセンター中央病院(名古屋市千種区)が、八月と十一月に臨床試験として実施していたことが分かった。中部地方で、遺伝性乳がんの予防切除手術の実施が明らかになるのは初めて。

 特定の遺伝子変異のある乳がん患者は、がんが発症していないもう一方の乳房も、がんになる確率が高いとされる。がんセンター中央病院は、こうした患者のうち、本人が希望した場合の予防切除手術の実施を計画。今年四月の院内の倫理審査委員会の承認を受け、手術の安全性を確認する臨床試験を行うことにした。

 がんセンター中央病院の岩田広治(ひろじ)副院長によると、一例目は既に左乳房を切除していた三十代の女性で、八月に右乳房を切除。二例目は右乳房が乳がんの五十代女性で、十一月に左右を同時に切除した。いずれも、乳房の再建手術も併せて実施、術後の経過は良好という。

 岩田副院長は「がんが発症していない乳房もリスクが高いと分かった場合、患者の不安を取り除く選択肢になれば」としている。

 ただ、予防のための手術には保険適用が認められておらず、全額患者の自己負担となる。このため、病院は一部が保険適用となる「先進医療」に認められるよう国に申請する。

 一方、この遺伝子変異のある女性の乳がん患者は、卵巣がんになる確率も高いとされる。卵巣の予防的摘出は名古屋市東部医療センター(千種区)が臨床試験の態勢を整えており、患者が希望した場合は実施する。

 遺伝性乳がんの予防切除は昨年、米国女優アンジェリーナ・ジョリーさんが手術を受けたことを公表し、話題となった。

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 <遺伝性乳がんの予防切除>特定の遺伝子に変異があると、乳がん発症の可能性が高まるとされる。遺伝子の変異が原因の乳がんの割合は全体の5~10%。アンジェリーナ・ジョリーさんの公表以後、国内では遺伝子検査を受ける人が増え、聖路加国際病院(東京)などが既に予防切除手術を実施。ただ、検査で遺伝子に変異があると分かっても、乳がんは定期検診で早期発見可能として、予防切除手術に慎重な声もある。