2014年12月18日木曜日

ER+HER2-局所進行/転移乳癌に対するPI3Kα選択的阻害薬Alpelisibとフルベストラントの併用はPIK3CA変異例でより高い効果

2014/12/17(水)

閉経後ホルモン受容体陽性(ER+)HER2陰性(HER2-)の局所進行(LA)/転移乳癌(MBC)に対するPI3Kα阻害薬alpelisibとフルベストラントの併用は安全で、特にPIK3CA変異を有する患者でより高い効果を得られる可能性が示された。多施設オープンラベルフェーズ1試験によって明らかになったもので、12月9日から13日までサンアントニオで開催されたSan Antonio Breast Cancer Symposiumにおいて、米国テキサス大学MD Anderson Cancer CenterのFilip Janku氏が報告した。

 Alpelisib(BYL719)はPIK3CA遺伝子でコードされるPI3Kの触媒サブユニット、p110αに作用する経口投与可能な低分子PI3K阻害薬。進行固形癌において単剤で、ER+乳癌においてフルベストラントとの併用でフェーズ1試験が行われている。これまでに単剤での最大耐用量(MTD)は1日1回投与で400mg、1日2回投与で150mg、フルベストラントとの併用で400mgであることが示されている。今回、PIK3CA遺伝子変異型(以下PIK3CA変異型)および野生型(WT)のER+HER2-LA/MBC患者における成績が報告された。

 主要目的は、閉経後PIK3CA変異ER+LA/MBCを対象とするフルベストラントの併用でのフェーズ2試験におけるalpelisibのMTDを決定すること、副次目的はフルベストラントとの併用における安全性と忍容性および薬物動態、予備的な有効性の検討である。

 84例が登録され、50例(59.5%)がPIK3CA変異型、31例(37.0%)がPIK3CA WTで、3例は変異の状態が不明だった。PIK3CA変異型、PIK3CA WTの年齢中央値はそれぞれ57.0歳、61.0歳、転移巣数は3、2だった。PIK3CA変異型の12例(24.0%)、PIK3CA WTの11例(35.5%)にmTOR阻害剤投与歴、それぞれ23例(46.0%)、15例(48.4%)にフルベストラント投与歴、44例(88.0%)、29例(93.5%)に化学療法歴があった。

 データカットオフの2014年10月3日までに、65例(PIK3CA変異型の37例74 .0%、PIK3CA WTの28例90.3%)が治療を中止。理由はPD47例58.0%、有害事象(AEs)10例15%、同意撤回6例7.3%、追跡不能および手続き上の問題各1例1.2%だった。

 全グレードで30%以上の頻度で発現したAEsは下痢48例(57.1%)、高血糖38例(45.2%)、食欲減退および吐き気がそれぞれ31例(36.9%)。高頻度で認められたグレード3/4のAEsは、高血糖15例(17.9%)、斑状丘疹性発疹11例(13.1%)だった。10例11.9%の患者がAEsにより試験を中止しており、うち9例10.7%は、2例2.4%に認められた掻痒症など、グレード3/4のAEsによるものだった。

 薬物動態(PK)は単剤で報告されているものと同様だった。alpelisibとフルベストラントとの間にPKにおける相互作用はないと考えられたが、本試験におけるalpelisibの血中濃度-時間曲線下面積(AUC)および有効血中濃度(Cmax)の中央値は、単剤投与時よりわずかに低かった。

 81例(PIK3CA変異型50例、PIK3CA WT 31例)で放射線学的反応性の評価が可能だった。最良総合効果は、PIK3CA変異型では確定PR12例(24.0%)、SD28例(56.0%)、PIK3CA WTではSD14例(45.2%)、奏効率(ORR)はそれぞれ24.0%(95%信頼区間:13.1-38.2)、0%(同:0-11.2)、病勢コントロール率(DCR)はそれぞれ80.0%(同:66.3-90.0)、45.2%(同:27.3-64.0)だった。

 推定PFS中央値は、PIK3CA変異型8.3カ月対PIK3CA WT 4.7カ月で、PIK3CA変異において、より高い効果が得られることが示唆された(ハザード比[HR]0.28、95%信頼区間:0.13-0.57、名目上p<0.001)。

 ポスターディスカッション「TARGETING THE PI3K PATHWAY」は、この演題を含む4演題がアロマターゼ阻害薬(AI)治療歴を有する閉経後ER+疾患に対するPI3K阻害薬とホルモン療法との併用についての報告となった。有効性がPIK3CA変異の状態と関係するかどうかについては、これまでの報告では一貫性がなく異論もある。Janku氏は、「pan-PI3K阻害薬と比較して、p110αに作用するPI3Kα阻害薬では、変異を有する患者で反応性が高いようだ」とコメントした。また同セッションでは、PI3K阻害薬のAEsについて、皮膚障害など試験によって発症頻度が大きく異なるものがある一方で、高血糖が作用の指標になる可能性があることが指摘された。また毒性を軽減するための間欠的投与スケジュールが模索されているほか、ER+HER2+乳癌に対するPI3K阻害薬適用の理想的なセッティングが進行/転移疾患なのかネオアジュバント療法なのかについても、議論が交わされた。

 現在、PI3Kを標的とする薬剤開発において、少なくとも32化合物が20の製薬会社において開発中で、397試験がClinicalTrials.govに登録されている。