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◆第17回日本乳癌学界学術総会(2009年)、ブログ『乳癌を正しく理解するために』<2011年4月18日月曜日 St.Gallen2011 サブタイプ分類と化学療法の適応>参考になった。
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◆サブタイプ分類と治療法
Luminal A およびB type 乳癌の多くの患者に投与されるホルモン治療の選択には,閉経状況が非常に重要であり使用する薬剤が異なる。しかし個々の患者のホルモン感受性の強弱では,使用するホルモン治療が異なることはない。閉経状況と化学療法の有無によるホルモン治療の実際を示す。
A. 閉経前・化学療法なしの場合
世界的なガイドラインでは,タモキシフェン(TAM)20mg/dayを5年間内服が標準治療と位置づけられているが,日本では生理を止めるLH-RH agonist(皮下注射)とTAMの併用療法が広く行われている。投与期間に関してはLH-RH agonistを2~3年,TAMを5年が標準治療である。
B. 閉経前・化学療法ありの場合
化学療法とホルモン療法が必要な場合には,まず化学療法を行う。化学療法とホルモン療法の併用治療に関するエビデンスは多くはないが,INT0100( SWOG8814)試験においてCAF 療法にTAMを同時併用する群に比べ,CAF終了後にTAM を逐次投与する群のDFS(無再発生存率)が有意に勝っていたことから,現在では化学療法終了後にホルモン療法を開始するのが一般的になっている。
さらに化学療法終了後に閉経の状況がどのようになっているかで,LH-RH agonist を併用するかどうかも問題になる。LH-RH agonistは生理を止めることが一義的な目的であり,生理が止まっている状況では,必要性はないと考えられるが,これを検証する臨床試験(SOFT trial)が海外で進行中であり,この結果を待つことが必要である。
化学療法後のTAMも5 年間投与が標準であり,化学療法でみかけ上,生理が止まっていても,安易にアロマターゼ阻害薬を使用すべきではない。アロマターゼ阻害薬で生理が回復し妊娠した報告などがある。しかし,TAM の5 年間投与終了後に,再発リスクの高い患者で年齢的に明らかに閉経状況の患者では,AI剤を継続して投与することは意義がある。
2010_spring
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Adjuvant Endocrine Therapies for Pre/Perimenopausal Women
Kathleen I. Pritchard (Sunnybrook Regional Cancer Centre, Clinical Trials and Epidemiology, Canada)
Pritchard氏は、閉経前乳癌に対するホルモン療法についてのレビューを行った。まず、LHRHアゴニストや卵巣摘除、あるいは卵巣照射による卵巣機能抑制(ovarian function suppression: OFS)+化学療法と化学療法単独は再発率にまったく有意差はなく、化学療法による卵巣機能抑制効果が良好な予後と関連している可能性があることを確認した。
閉経前乳癌における化学療法の効果については、アルキル化剤など、化学療法剤によるOFSを介したホルモン効果であることが古くから指摘されているが、それを臨床的に直接検証したエビデンスはまだ十分とはいえない。昨年から進行しているSOFT試験(閉経前乳癌症例で、化学療法を実施しない症例、あるいは化学療法を実施した後、卵巣機能が復活した3,000症例を対象に、タモキシフェン(TAM)単独5年、OFS+TAM5年、ODS+エキセメスタン5年の3群を比較=図)は、長年の議論に答えを出すための意義深い試験であり、その推移を注目したい。
閉経前乳癌に対するアロマターゼ阻害剤の意義に関しては、TEXT試験(OFSとアロマターゼ阻害剤併用におけるTAMとエキセメスタンの比較)、PERCHE試験(併用療法±化学療法の比較)なども行われており、今後の成果が期待される。
その他、OFS+TAMはCMF療法に代わる治療法であること、メタアナリシスの結果からLHRHアナログ+TAM療法が閉経前進行乳癌の第一選択となりうることなどを報告した。SOFT試験で、TAM単独5年投与群がコントロールアームとされていることからもわかるように、閉経前乳癌術後のホルモン療法のスタンダードは、現時点ではTAMであるが、今後、OFSの意義が確立されていくだろう。
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*閉経前乳癌に対する内分泌療法
・EBCTCG;TAM、卵摘による卵巣機能抑制(ovarian function suppression;OFS)の有効性
・LH-RHアゴニストを含めた卵巣機能抑制は単独でCMFと同程度、タモキシフェンとの併用でCMFと同等以上の効果
・タモキシフェンとLH-RHアゴニスト併用の必要性、あるいは化学療法終了後にタモキシフェンやLH-RHアゴニストをどのように組み合わせるかについては検討中
・現状ではタモキシフェンが標準~ゴセレリンを含む卵巣機能抑制はタモキシフェンの代替治療的な位置づけ
・タモキシフェンと卵巣機能抑制の併用に関しては確証的なデータはないが、(1)intermediate riskやhigh riskの若年患者、(2)化学療法で卵巣機能が抑制(無月経誘発)されなかったhigh riskの閉経前患者(年齢にかかわらず)に対して、理に適った治療となる。
・LH-RHアゴニストの至適投与期間はまだ明確にされていない。
・HER2/neuが過剰発現・増幅している患者に対しては、タモキシフェン投与中に卵巣機能抑制を併用することで利点が得られる可能性がある。
・内分泌反応性の閉経前患者に対するCTとTAM、卵巣機能抑制の使い方に関する臨床試験が進行中
・タモキシフェン投与中に閉経した内分泌反応性の患者に対しては、アロマターゼ阻害剤で治療を継続することも考えられる(タモキシフェン5年投与後のletrozole )追加投与の効果を検討したMA17trialでは、タモキシフェン投与中に閉経を迎えた患者が約14%含まれている)。
・近年は、まず卵巣機能を抑制してエストロゲン値を下げ、残存するエストロゲンの働きをタモキシフェンで打ち消す考え方が主流
Kathleen I. Pritchard (Sunnybrook Regional Cancer Centre, Clinical Trials and Epidemiology, Canada)
Pritchard氏は、閉経前乳癌に対するホルモン療法についてのレビューを行った。まず、LHRHアゴニストや卵巣摘除、あるいは卵巣照射による卵巣機能抑制(ovarian function suppression: OFS)+化学療法と化学療法単独は再発率にまったく有意差はなく、化学療法による卵巣機能抑制効果が良好な予後と関連している可能性があることを確認した。
閉経前乳癌における化学療法の効果については、アルキル化剤など、化学療法剤によるOFSを介したホルモン効果であることが古くから指摘されているが、それを臨床的に直接検証したエビデンスはまだ十分とはいえない。昨年から進行しているSOFT試験(閉経前乳癌症例で、化学療法を実施しない症例、あるいは化学療法を実施した後、卵巣機能が復活した3,000症例を対象に、タモキシフェン(TAM)単独5年、OFS+TAM5年、ODS+エキセメスタン5年の3群を比較=図)は、長年の議論に答えを出すための意義深い試験であり、その推移を注目したい。
閉経前乳癌に対するアロマターゼ阻害剤の意義に関しては、TEXT試験(OFSとアロマターゼ阻害剤併用におけるTAMとエキセメスタンの比較)、PERCHE試験(併用療法±化学療法の比較)なども行われており、今後の成果が期待される。
その他、OFS+TAMはCMF療法に代わる治療法であること、メタアナリシスの結果からLHRHアナログ+TAM療法が閉経前進行乳癌の第一選択となりうることなどを報告した。SOFT試験で、TAM単独5年投与群がコントロールアームとされていることからもわかるように、閉経前乳癌術後のホルモン療法のスタンダードは、現時点ではTAMであるが、今後、OFSの意義が確立されていくだろう。
図1:SOFT試験の概略 |
2011,01,28
*閉経前乳癌に対する内分泌療法
・EBCTCG;TAM、卵摘による卵巣機能抑制(ovarian function suppression;OFS)の有効性
・LH-RHアゴニストを含めた卵巣機能抑制は単独でCMFと同程度、タモキシフェンとの併用でCMFと同等以上の効果
・タモキシフェンとLH-RHアゴニスト併用の必要性、あるいは化学療法終了後にタモキシフェンやLH-RHアゴニストをどのように組み合わせるかについては検討中
・現状ではタモキシフェンが標準~ゴセレリンを含む卵巣機能抑制はタモキシフェンの代替治療的な位置づけ
・タモキシフェンと卵巣機能抑制の併用に関しては確証的なデータはないが、(1)intermediate riskやhigh riskの若年患者、(2)化学療法で卵巣機能が抑制(無月経誘発)されなかったhigh riskの閉経前患者(年齢にかかわらず)に対して、理に適った治療となる。
・LH-RHアゴニストの至適投与期間はまだ明確にされていない。
・HER2/neuが過剰発現・増幅している患者に対しては、タモキシフェン投与中に卵巣機能抑制を併用することで利点が得られる可能性がある。
・内分泌反応性の閉経前患者に対するCTとTAM、卵巣機能抑制の使い方に関する臨床試験が進行中
;TAM5年、OFS+TAM5年、OFS+エキセメスタン15年に無作為割付け(SOFT[IBCSG 24-02、BIG 2-02])
;LH-RHアゴニスト(±化療)/TAM5年 vs LH-RHアゴニスト(±化療)/エキセメスタン5年(TEXT[IBCSG 25-02、BIG 3-02])
;OFS/TAMorエキセメスタン5年併用( PERCHE[IBCSG 26-02、BIG 4-02])
;ゴセレリン/アナストロゾール3年vsゴセレリン/TAM 3年~ビス製剤の効果(ABCSG-12)・閉経前患者に対してLH-RHアゴニストとアロマターゼ阻害剤を併用することは現在検討されており、副作用等のためにタモキシフェン投与ができない患者の選択肢としては容認されると考えられる
・タモキシフェン投与中に閉経した内分泌反応性の患者に対しては、アロマターゼ阻害剤で治療を継続することも考えられる(タモキシフェン5年投与後のletrozole )追加投与の効果を検討したMA17trialでは、タモキシフェン投与中に閉経を迎えた患者が約14%含まれている)。
・近年は、まず卵巣機能を抑制してエストロゲン値を下げ、残存するエストロゲンの働きをタモキシフェンで打ち消す考え方が主流
;LH-RHアゴニストとタモキシフェンとの併用でCMFを有意に上回る再発抑制効果(ABCSG 5;J Clin Oncol. 2002)
;CAF終了後にLH-RHアゴニストとタモキシフェンを併用することで追加効果(INT0101;J Clin Oncol. 2005)
~標準治療はタモキシフェン単独ではなく、ゴセレリンを用いた卵巣機能抑制を中心とした治療が適している