2011.11.07
「いえ、食後しばらくは唾液が出やすい状態にありますから、これを洗い流してしまうのは、むしろ歯の健康上、マイナスであることが最近の研究から判明しているんです。唾液には虫歯を防ぐ成分が含まれていますから」
そう語るのは、ワールドシティデンタルクリニックの遠山和規院長だ。これは新説! さらに詳しく聞いてみた。
「糖分や炭酸を摂取したあとはとくに、口の中が酸性に傾きます。一般的にペーハー値5.5で、歯の石灰質が溶け始めるとされていますが(平常時は6.7前後)、唾液にはこれを中和する作用があります。また、唾液には石灰質を修復するミネラルが含まれているため、唾液の量が多い人は虫歯になりにくい傾向があるほど。ですから、食後30分以内はむしろ歯磨きを控えた方がいいんです」
食事によってせっかく大量に分泌された唾液を洗い流してしまうのは、歯の健康を損なう行為に等しいという。では、虫歯を食い止めるためには、どのような習慣を心がければいいのだろう?
「やり方によっては、歯磨きは1日1回でもいいと思いますよ。理想的には就寝前、歯科医師の指導に基づいた正しいやり方で10分以上かけて磨くことを徹底すれば、それで十分でしょう。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなども駆使して行えばより効果的です」
とはいえ、汚れを100%落としきることは難しいので、「3カ月に1度、歯科検診を受ければ万全」と遠山先生。歯磨きのあとに洗口剤で口内をゆすぐのも、非常に効果的だという。
食後すぐに歯を磨くことは長年の習慣だが、唾液の効能からみると一概に正しいとはかぎらない。医学の進歩によってセオリーは変化するのだ。