2011年9月4日日曜日

治る見込みのない場合には、告知をためらう医師が76%

ちょっと意外だったので、部分抜粋してφ(.. )メモシテオコウ。当たり前だけど、医師も「人」なんだもんね。

_____________________________________
【5. 緩和医療とインフォームド・コンセント(IC):】

がん治療に伴う種々の副作用が避けられないこともあって、現在では治療前にその前提として、病名とその進展状況および治療方法などを告知するIC(インフォームド・コンセント)の重要性が認識され、がん専門病院或いは大きな総合病院では、治療に先立って患者さんとそのご家族に、詳細に説明がなされています。しかし、初診時にすでに遠隔転移があったり、患者さんの一般状態が悪くて、治癒的な治療が不可能な患者さん、或いは治癒治療後にがんが再発して、治癒が困難となった患者さんに関しては、現在でもその状況を正確に患者さん或いはそのご家族に告知する(IC)ことを躊躇する医師は決して少なくはありません。

以前、毎日新聞のICに関するアンケート結果を読んだことがあります。それによれば、がんが全身に拡大して、治る見込みのない場合には、告知をためらう医師が76%を占めて、治らない場合には告知してほしくないと答えた一般人の39%を大きく上回ったとのことでした。おそらくがんの告知に対して、真剣に取り組んでいる医師ほど、告知を躊躇することが多いのではないでしょうか。

なぜなら、砂原茂一氏は彼の著書の中で、「死に至る病気を告知することは、医者にとって決して医者としての責任から解放されることを意味するのではなく、むしろ死に直面させられた患者と、どのようにして最後の時間を有意義に共有すべきかという、新しいそしてきわめてシリアスな問題を自らに課することを意味します。」と述べておられるからです。

緩和医療の中にある”患者さんとともに生きる”という「医師としての生の重さ」を何度も経験した結果、多くの医師はその状況を無意識に回避しようとして、患者さん或いはそのご家族への告知をためらうからだと思います。


しかし、がんが慢性病であって、およそその半分が治癒不能な緩和医療の中におかれているという現実にあっては、少なくともがん専門医には、患者さんに病名の告知ばかりでなく、病状或いはその予後予測についても、できる限りのことを告知することによって、患者さんに残された人生を、いかに有意義に過ごしてもらうかを、患者さんとそのご家族とともに考えることが要求されています。

緩和医療における医師の立場を、砂原氏は同じ本の中で、「科学としての医学がこのように進歩した今日でも、人間の暗箱性 (black box) が完全に消滅したわけではなく、現実の医療は多くの不確実性に満ちたシステムであります。従って、医者は、現段階では完全な情報が得られないことも多いのですが、そのような不確かさの中でも、専門家としての立場で、患者のために最善を尽くし、冷静に意思決定をすることが医者の免れることのできない責任なのです。医者はこの責任を持っていますから、果断な判断力を備えていなくてはなりませんが、それにも増して医者に必要なのは、見通しのつきにくい闇夜でも、激しい嵐の中でも、患者とともにあるという姿勢です。」と述べておられます。

がんの緩和医療にあっては、一人一人の患者さんの人生に責任を持つ立場におかれるがん専門医の仕事は、まじめに取り組めば、かぎりなく高い緊張を強いられることになります。これががんの緩和医療においては、ときに医師側が現在の状況を告知することを躊躇する最大の原因となっているのだと思います。