2011年9月18日日曜日

ベバシズマブ(商品名:アバスチン)

2011.9.6
ようやく乳がんでもベバシズマブ(商品名:アバスチン)が使えるようになりました

やっと乳がんでもベバシズマブ(商品名:アバスチン)を使用できることになりました。実は数年前から、大腸がんや肺がんには使用されていましたので、次は乳がんに・・・と言われつつ、なかなか厚労省が使用を認めてくれなかったのですが、ようやく使用が可能になり本当に良かったと思います。いや、本当に待ちに待ちました。

皆さんもご存知のように、進行乳がん・再発乳がんに対する化学療法(抗がん剤治療)の第一選択薬としては、長い間、アントラサイクリンやタキサン系薬剤が使われてきました。しかし、実は、「HER2陰性の進行乳がん・再発乳がんの1st line(第一段階として行う治療)」としてみた場合、その治療成績は、この10年くらいの間、ほとんど向上していません。つまり、著しく高い治療効果を発揮する新しい薬剤は、この期間なにひとつ世に登場していないのが現状です。だから、これまでは無増悪生存期間(PFS:薬剤が効いている治療がうまくいっている期間のこと)は、せいぜい5-6ヶ月つまり約半年弱、奏効率は2-30%、つまり薬が効く患者さんは4人に一人くらいの、アンスラ、タキサン系薬剤しか治療の武器がなかったわけです。しかし、今回、アバスチンの登場により、PFSは約2倍の1年近くに伸び、奏効率も約半数の患者さんで効果が見られるという、まさに画期的な薬が世に登場してくることになったのです。

奏効率が向上すると、では患者さんにとってどんなメリットがあるのか、もう一度考えてみましょう。
治療効果を実感することで、患者さんは安心し、治療への参加意欲が高まるという利点がまっ先にあげられます。乳がんが再発した患者さんは、たとえばCT画像で肺や肝臓のしこり(再発巣)を見せられたり、首のリンパ節を手で触ったりと、これから自分はどうなるんだろう?とか、薬は効いてくれるのだろうか?とかとても不安なわけです。そこに最初の薬剤が効いてくれて、モノの見事にしこりが小さくなりました、影が消えました・・となれば、大いに安心されるし、またその後も頑張って治療を続けようと、お思いになるわけです。
当然のことながら、再発巣が原因となって痛いとか苦しいとか、何か症状があったとしたら、薬が効いてくれればとても楽になるし痛みも取れる。だから、最初に使う薬は『まず効いてくれなければ話にならない』わけですよ。
もちろん最初の薬がうまく効いてくれれば、万一その薬が効かなくなって次の薬にバトンタッチす時も、前の薬はよく効いてくれたのだから次の薬も効いてくれるだろう、と、患者さんは期待もされるし、治療意欲もずっと高いままでいてもらえるわけです。

またその薬により治療期間が延びる(PFSが延長する)ということは、患者さんにはどんなメリットがあるかというと、病状や症状が悪くならずに良い状態を保ちながら、日常生活をより長い期間続けていられるという点なのです。仮に1年間の再発乳がんの治療期間を目標とした時、あまり永く効かない、例えば4ヶ月くらいしか効果が持続しない薬を、3種類次々と続けてトータル1年を稼ぐよりも、ひとつの薬剤でずっと遣い続けて1年になる方が、患者さんにとっては遙かに好ましいでしょう。

さて、こんなふうに、治療効果は抜群のアバスチンではありますが、臨床試験で、OS(生存期間)の延長が検証できていないことを問題にし、アバスチンの使用に疑問を呈する一部のドクターがいます。
しかしこれは、OSの延長効果がないことが明らかになったわけでは決してなく、臨床試験の症例数や予後の長さなどの問題でOSが延長することを科学的に立証できなかったというだけで、決して薬剤のパワーが劣ることを意味するわけではないのです。そこのところは決して勘違いしないで下さい。
このOSの問題があまりに強調されることに関し、私は違和感すら感じています。なぜなら、現に、たとえば、タキソールやゼローダ(+エンドキサン)などの薬剤は、再発乳癌の1st-lineでとても頻繁に使用されていますが、これらの薬剤がOSを伸ばすことが臨床試験で確認されているか?というと、どちらの薬剤もそのようなデータは、実は全く存在しないのです。にもかかわらず、私たちは、自信を持ってタキソールを使用し、安心してゼローダを処方するのはなぜでしょうか?それは、これらの薬剤が『効く』からです。腫瘍を小さくし、患者さんの状況を改善し、永く使える薬だからです。そこには 臨床試験でのOS延長を証明したかどうか?などは、全く問題にはしていないし、実はそれを知らないで使っている先生がほとんどなのです。私にとって、このようなOS云々の問題は、アバスチンの使用の際の、何のブレーキにもなりません。一刻も早く使い たい薬です。

これまで乳がん以外のがん、大腸がんや肺がんの多くの患者さん達に、アバスチンの効果をお届けすることができました。乳がんの患者さん達にも、一刻も早くこの治療効果をお届けしたいと思います。確実に、熱意を持って、自信を持ってこの薬をお届けしたいと考えています。