NCI Cancer Bulletin2011年9月20日号(Volume 8 / Number 18)
若年女性に対する乳房温存手術は切除術に替わる治療法として容認できる
40歳未満の女性で、乳房切除術と比較して、乳房温存手術での局所再発率が高かったり、全生存率が低いということはないことが、2つの後ろ向き調査の結果で示された。乳癌と診断された時点での年齢の若さは、癌再発の危険因子と考えられており、若い乳癌女性の多くが治療法として乳房切除術を選択する。
この研究はサンフランシスコで開催された2011年米国臨床腫瘍学会(ASCO)の乳癌シンポジウムで発表された。「これらの研究は、乳腺腫瘤摘出術と放射線療法を併用する乳房温存手術が、若い女性にとって素晴らしい選択肢であり、また好ましい方法でもあるだろうという見解を支持するものである」と、米国国立癌研究所(NCI)癌治療・診断部門の乳癌治療部長であるDr. Jo Anne Zujewski氏は述べた。同氏はこの研究には参加していない。
マサチューセッツ総合病院のDr. Julliette Buckley氏が主導した最初の調査で、研究者らは、1996年~2008年に同病院でステージ1~3の乳癌で治療を受けた若年女性628人の医療記録を精査した。治療後の追跡調査期間の中央値は6年であった。この間、乳房温存手術を受けた女性の7.1%、乳房切除術を受けた女性の7.5%に局所再発が生じた。この数値の差は統計学的に有意なものではない。
本調査で観察された局所再発率はこれまでの研究結果よりも低かったと研究者らは述べた。この新しい結果は「乳腺腫瘤摘出術は若い女性にとってまさに安全な選択肢である」ことを示唆しているとBuckley氏は記者会見で語った。「乳癌の遺伝的リスクが明らかになったこと、乳癌検診の進歩、全身治療や放射線療法の向上が、私たちが示した若年乳癌女性における全生存期間の延長に寄与したのだと考える」と同氏は説明した。
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Usama Mahmood氏が主導した2番目の調査で、研究者らはNCIのSEER(サーベイランス・疫学および転帰)データベースから、1990年~2007年にステージ1あるいはステージ2の乳癌と診断された20歳~39歳の女性14,760人のデータを調べた。乳房温存手術を受けたすべての患者が放射線療法を併用していた。10年後の全生存率は、乳房温存手術を受けた女性では83.5%、乳房切除術を受けた女性では83.6%であり、実質的に同じであった。
「乳癌の早期ステージにある若い女性への治療では、乳房温存手術と乳房切除術で生存率が同程度であることがわかった」とMahmood氏は述べた。「この結果は、患者は治療法の選択に関して医師から適切な助言を受けるべきであり、生存率がよいと決めてかかって乳房切除術を選択すべきではないことを注意喚起するものである」。
この記者会見の司会を務めたスローンケタリング記念がんセンターのDr. Andrew Seidman氏は以下のように付け加えた。「一般的な通念を定期的に見直すことは非常に大事なことである。これは乳癌を患った若い女性にとって乳房切除術が必要だという、これまでの通念の重要な見直しである」。