2011年9月3日土曜日

エビスタも悪くない

「がんサポート情報センター」
2010年07月号のトピックス
がん翻訳ネットワーク(「海外癌医療情報リファレンス」)(2010年07月号)

【エビスタ、タモキシフェンは乳がん予防薬として有用】

乳がんリスクの高い女性において、タモキシフェン(一般名)を5年間服用した患者は服用していない患者と比べて、50パーセント近く乳がんの発症リスクが低下したとして、米国では1998年に乳がんの予防薬としてタモキシフェンの使用が認められている。しかしタモキシフェンは、子宮内膜がんや危険な血栓リスクの増加といった副作用への懸念から、あまり好まれていない。

そうした中、エビスタ(一般名ラロキシフェン)およびタモキシフェンの両剤は、乳がんリスクが高い女性において、乳がんの発症を大幅に低下させるうえ、エビスタの副作用はタモキシフェンより少なく軽いということが、大規模な乳がん予防試験の長期追跡結果から明らかになった。これは4月にワシントンDCで開催された米国がん研究学会年次総会で発表された。

米国国立がん研究所が支援したこのSTAR試験の結果は、2006年に発表された初期解析と、ほぼ一致するものであった。このときの結果を受けて、FDAはリスクが高い閉経後の女性の乳がん予防にエビスタを承認している。試験に参加した1万9000人以上の女性を追跡したデータによると、エビスタは、浸潤性乳がんおよび非浸潤性乳がんに対する予防効果ではタモキシフェンよりわずかに劣るが、明らかにタモキシフェンより安全で、子宮内膜がんなどのまれな副作用も少なかった。

エビスタは、とくに骨粗しょう症の予防と治療(FDA承認済み)に頻繁に用いられ、痛みを和らげていることを考慮すると、一般の開業医らが乳がん予防薬としてエビスタの使用を話し合う機会が増えるのではと見られている。

STAR試験では、平均して乳がんの生涯リスクが15パーセント高い女性を対象に、5年間毎日エビスタまたはタモキシフェンのどちらかの薬剤を服用するように割り付けられた。追跡期間中央値47カ月の最初の試験解析の結果では、両剤は浸潤性乳がんのリスク低下において同等の効果であった。

しかし最新の解析では、エビスタの効果は時間の経過とともに低下することが示唆されており、追跡期間中央値81カ月では、エビスタの浸潤性乳がんに対するリスクの低下は、タモキシフェンの効果のおよそ76パーセントだった。非浸潤性乳がんに関しては、エビスタはタモキシフェンの効果のおよそ78パーセントだった。

一方、副作用の面ではエビスタは優れており、タモキシフェンを服用している女性と比較して、子宮内膜がんのリスクは45パーセント少なく、深刻な血栓のリスクは25パーセント少なかった。

これらの結果は、両剤の長期間の使用によるベネフィットを裏付けるとともに、今後はエビスタやタモキシフェンを用いることへの障壁を取り除く積極的な取り組みと、これらの薬剤が適応であり選択肢となる女性を医療者が見つけるためのツールが必要だと考えられる。

* 2011/08/05 タモキシフェン、スゴイ!!