2011年10月2日日曜日

抗エストロゲンとアロマターゼ阻害薬

抗がん剤で生理が止まったけど、ホルモン治療では何を内服するのかな。「閉経前用:抗エストロゲン剤」と「閉経後用:アロマターゼ阻害剤」のどちらなのかな?

無難にどちらでもいける抗エストロゲン薬のタモキシフェンかもな。

でも「閉経」してるなら効果の高いアロマターゼ阻害薬を使いたいような、お腹まわりの内臓脂肪も増加の一途をたどっているし・・・。とはいえ骨密度の低下もきになっちゃうしな・・・。いやいや、血液検査で「閉経前」なら当然タモキシフェン(でも生理が止まっているからLH-RHアルゴニスト製剤は無し?)、「閉経後」と判断されれば自動的にアロマターゼ阻害薬になるのかもしれない気もする・・・。いやいやいや、アロマターゼ阻害薬を使っていて卵巣機能が回復する場合もあるのか・・・、難しいなあ~。

タモキシフェンで2~3年様子見してアロマターゼ阻害剤にスイッチ、という辺りが無難っぽい。きっとそれだな。


********* 以下、引用メモ *********

日本乳癌学界 編 『2009年版 患者さんのための乳がん診療ガイドライン』

▼Q41

閉経とは、年齢が60歳以上か、45歳以上で過去1年以上月経がない場合か、あるいは両側の卵巣を摘出している場合のことです。そうでなく、閉経してるかどうか分からない場合は、血液中のエストロゲンと卵胞刺激ホルモンを測定して判断します。

抗エストロゲン: エストロゲン受容体をふさいでエストロゲンが乳がん細胞に作用するのを防げる。

アロマターゼ阻害薬: アンドロゲンをエストロゲンに変換するアロマターゼを阻害する。

アロマターゼ阻害薬を手術早期から5年間服用すると、タモキシフェンを5年間服用するのと比べて、再発する可能性を5年間で17~19%改善することが報告されています。また、タモキシフェンを5年間服用後にアロマターゼ阻害薬に変更して2~5年間服用する方法も有効であることがわかってきています。

『別冊NHK きょうの健康 乳がん~からだとこころを守る』より
▼Q42

エストロゲンは骨を健康的に保つように働いています。アロマターゼ阻害薬やLH-RHアルゴニスト製剤はエストロゲンを減らすため、骨密度が低下し、骨折を起こす可能性があります。

一方、タモキシフェンは骨に対して保護的に働きますので、骨が丈夫になります。

《対処法》
アロマターゼ阻害薬を内服している場合や抗がん剤治療等によって早い時期に閉経となった場合には、年に一回の骨密度測定を行い、骨密度をチェックしましょう。骨を強くするために、カルシウムやビタミンDを多く含む食品の摂取や、定期的な運動を心がけるとよいようです。骨密度が低下している場合にはビスフォスフォネートという薬を内服したり、タモキシフェンに変更したりすることで、骨密度の低下や骨折を予防できます。

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MDアンダーソンがんセンター チームオンコロジー.Com
掲示板 一般の方

術後ホルモン療法 閉経かどうか

こんにちは。44歳の者です。
昨年12月に温存手術、その後放射線治療、TC療法4回をしました。
5月に化学療法を終え、続いてホルモン療法をする予定です。
化学療法中に生理がとまり現在もそのままです。半年経っています。

9月に女性ホルモン検査をしたら閉経値でした。

そこで主治医は、アロマターゼ阻害剤を使うかどうか、微妙なところだと言われます。

そこで質問させていただきます。

①血液検査で閉経値となった場合、その後閉経値でなくなることはあるのでしょうか。その場合は、アロマターゼ阻害剤を使用すると効果がないばかりか体にも悪いのでしょうか。

②タモキシフェンは閉経前後に使用可能なので、そちらを使うこともできると思います。タモキシフェン半年服用後にアロマターゼ阻害剤に変えるということもよいのでしょうか。
ガイドラインを見ると「タモキシフェン2・3年ののちにアロマターゼ阻害剤にスイッチ」と書かれています。

化学療法終了後の無治療が5か月になり少し不安です。

よろしくお願いします。

|都道府県:福岡県 |名前:秋晴れ |掲載日時:2011/10/01 13:05:16

Re:術後ホルモン療法 閉経かどうか

秋晴れ様

初めまして、都内で乳腺外科医をしております、中川といいます。
化学療法後に無月経になった方へのホルモン剤の選択ですが、実際患者さんを拝見していて迷うこともあります。

日本の乳癌診療ガイドラインによりますと、化学療法施行後に無月経状態になった患者さんに対してアロマターゼ阻害薬を投与すると卵巣機能の回復が認められる可能性があるため、その単独使用に関しては慎重であるようにと書かれています。閉経を確認するためにFSH、エストロゲン濃度を適宜継続して測定することが推奨されています。

また、秋晴れ様もご存じのように閉経後早期乳癌患者さんにタモキシフェン→アロマターゼ阻害薬の順次投与がタモキシフェン単独よりも無再発期間が長くなるという臨床試験の結果もいくつか出ています。ただ、あくまで閉経後の方に対し2~3年後にスイッチした試験の結果なので、閉経前後の方に対する半年後のスイッチに関してはデータがないといったところだと思います。

よって、
①に対しては、卵巣機能が回復する例があるので投与は慎重に。
②に対しては、半年後スイッチでも良いというはっきりしたデータがない。
といったところでしょうか。

ただし、以上のことはあくまでガイドラインの記載であって、そのデータにあてはまらない患者さんというのは多数おられます。
だからこそ、実際秋晴れ様を診察されておられる主治医の先生と、こうしたエビデンスを基に、秋晴れ様の病状、検査データ、価値観などを踏まえ、治療方針を一緒に組み立てていってもらいたいと思っています。

是非、主治医の先生や他の医療スタッフの方々ともう一度よくご相談されるようにして下さい。

|都道府県:東京都 |名前:中川 智恵 |掲載日時:2011/10/02 01:24:06

Re:術後ホルモン療法 閉経かどうか


中川先生のご意見に賛成です。

44歳のかたでTCx4の場合にどれくらい完全閉経になるかはデータがまだありませんが、他の抗がん剤レジメのデータから考えると50%ー60%は閉経はされるとおもいます。ただ、本当にそうなったかは抗がん剤がおわって1年くらいは経過しないとわからないので、たいていはタモキシフェン2-3年でスタートしておいてから、途中でのスイッチを考えるひとも多いとはおもいます。半年間だけタモキシフェンを使用したとしても、その時点で生理(卵巣機能)なくても、アロマターゼ阻害剤に変更したらやはり生理が回復ということもあります。

もちろん、アロマターゼ阻害剤で開始して、生理(卵巣機能)回復してしまったら途中でタモキシフェンに変更もできます。ただ、血液のホルモンデータみながら、気をつけながら1年ちかくこれをしていくことになります。

また主治医先生とご相談してみてください。
|都道府県:京都府 |名前:佐治 |掲載日時:2011/10/03 01:42:57

Re:術後ホルモン療法 閉経かどうか


中川先生佐治先生、ありがとうございます。

タモキシフェンで始めてもアロマターゼ阻害薬で始めても、その後の血液検査などをしっかりしていけば大丈夫ということですね。ただ、閉経ではなかったのにアロマターゼ阻害薬を使った場合抑制効果はないのでしょうか。そう考えればタモキシフェンからスタートするほうが、いいような気がします。

あとは、副作用の出方がどうなのか、再発抑制効果の差はどうなのか(アロマターゼ阻害薬はどれほど高いのか)が決める手掛かりになると思います。

今後最低5年・・・長い期間を決めるわけですから、納得いく選択ができたらいいと思います。
|都道府県:福岡県 |名前:秋晴れ |掲載日時:2011/10/08 12:16:14

Re:術後ホルモン療法 閉経かどうか


こんばんは

閉経(卵巣機能が停止)してくれていないとアロマターゼ阻害剤は全く効きません。これは薬の作用上どうしても必要なことです。

2つの薬剤の効果の差がどれくらいといえるかは、是非、具体的な数字をあげていただいて、主治医先生とご相談いただきたいところです。この部分は、とても大事なところで、face to faceでお話を聞いて理解する必要のあるところです。
|都道府県:京都府 |名前:佐治重衡 |掲載日時:2011/10/10 23:34:12