放射線治療Q&A
放射線治療は途中で休んだら効果がなくなるのですか。
途中で休むと放射線の治療効果が無くなる訳ではありません。がん細胞、正常細胞とも、照射休止中に放射線によるダメージから回復しますが、長く休んでいると、がん細胞が放射線によるダメージから回復してしまい、効果がやや減弱するという意味です。がんの種類によっても差があり、頭頸部腫瘍、食道がん、子宮頸がんなどを放射線単独で治療する場合、照射を休んで治療期間が長くなると、再発率が上昇したり、生存率が悪くなることが知られています。一方、抗がん剤を同時に併用される場合は、照射休止の影響が少ないことも知られています。いずれにしても一旦開始した放射線治療は、予定通りにできるだけ休まずに続けることが大切です。
皮膚のかゆみはいつごろ治るのでしょうか。
放射線治療を受けた部位の皮膚は治療が進むにつれ赤みがかってくるとともに痒みを伴うことがあります。これは放射線による皮膚の急性炎症であり、通常は治療終了後1~2週間程度で次第と改善してきます。最近の放射線治療では病巣に集中した治療計画が行われることが多くなり、特定の皮膚への被曝量は減少する傾向にあります。それでも、皮膚に非常に近い病変や皮膚そのものを治療の対象とした場合には皮膚炎や痒みが続くことがあります。治療中の注意点については他項に記載されていますので、治療終了後も持続する炎症症状の場合についてお話しします。放射線皮膚炎が治療終了後長く続く場合には抗がん剤との併用や特殊な治療スケジュールが原因と考えられます。また極く稀には他の病気が併発していることもあります。そのような方では、専門の皮膚科を受診することをおすすめします。そのときには照射範囲内に軟膏やクリームを塗るような指示がでることもあります。夜眠っているときに無意識に引っかくことで皮膚の治癒を妨げるよりは薬剤を用いて痒みをとるほうがよいと判断されるからです。放射線治療終了後であれば、外用薬を塗布しても構いませんが、照射範囲内に絆創膏をとめることは避けてください。
放射線治療が終わったら印を消してもいいでしょうか。
基本的には消してもらってかまわないのですが、自然に消えるのを待ってください。通常は、放射線治療が終了するころには照射部位にはいくらか皮膚炎があって、それが終了後1週くらいはさらに増強することもあります。こすって刺激しないほうが無難です。お風呂でやわらかく洗う程度にしましょう。
放射線治療中にひげ剃りやムダ毛の処理をしてもよいですか。
放射線治療中は、照射部位の皮膚にも放射線が当たるため、徐々に日焼けのときのように赤くなったり、乾燥して痒くなったり、ひどい場合は傷口のようにじくじくしたり、水ぶくれを起こしたりします。このような状態のときの皮膚は、刺激に対して弱くなっていますので、ひとことで言えば刺激を避ける、すなわち皮膚をこすったり、掻いたり、きつく締め付けるような衣類や肌触りの悪い衣類を着たり、直射日光に当てたり、石鹸や化粧品をつけたり、絆創膏をはったりすることは避けるほうが望ましいです。ひげ剃りやムダ毛の処理も同様で、できることなら全く行わないのが望ましいのですが、実際にはそうはいきませんので、行うときには、石鹸、ローション、クリーム等を用いずに、通常のカミソリではなく電気シェーバー(刺激の少ないもの)を使用して、必要最低限に行うようにしてください。なお、このような皮膚の変化は、放射線治療終了後1~2ヵ月でほぼ元に戻りますので、その後は以前と同様に、石鹸や化粧品を用いたり、ひげ剃りをしても結構です。
放射線治療を受けているときにスポーツをしても大丈夫でしょうか。
適度な運動は体調の維持やストレス解消に有効ですが、放射線治療を受けている間は、あまり疲れることのないようにしてください。放射線治療は、患者さんの病気を治すために行われていますので、まずは治療を休まずに完了することが最も重要なことと考えてください。
スポーツをしても大丈夫かどうかは、放射線治療部位によっても異なります。一般的には、照射部位に対して刺激となるような運動はおやめください。合併症が強くなり、治療が完了できなかったり、後で重篤な合併症が生じる可能性が高まります。具体的な例をあげると、照射部位の皮膚は、日焼けや機械的な刺激により荒れやすいので注意が必要です。乳がんの術後照射などで腋の下の皮膚も炎症を起こしている期間は、ゴルフなど腕を振る運動は避けてください。また、頭頸部の照射をしているときは、大きな声を出すようなスポーツは控えてください。前立腺の治療では自転車に乗ることも避けた方が良いと思います。また、照射部位に感染が起こらないように気をつけてください。環境の悪い場所(暑い、寒い、多くの人と接触するなど)に長時間いる事のないようにして、体調の維持につとめてください。