2011年12月13日火曜日

定期検査は有効か 日本で比較試験がスタート

イタリアで行われた2つの大規模試験では、初発の乳がんの術後患者に対し、再発の発見を目的に骨シンチグラフィ、肝臓超音波検査、血液検査、胸部X線撮影などを定期的に行った場合と、これらを行わない場合とで、予後に差がないことが確認されている(JAMA;271,1587-92,1994と同号1593-7)。日本乳癌学会の『乳癌診療ガイドライン』でも、初期治療後にこれらの検査を定期的に行うのは推奨グレードC2、「実施することは基本的に勧められない」としている。

定期検査は有効か 日本で比較試験がスタート

再発の早期発見に臨床的な意味があるかどうかについては、実は医師の間でも議論があるようだ。乳がんの治療は日進月歩。イタリアで前述の大規模試験が行われた1990年代は、いまや専門医なら知らない人はいないサブタイプ分類(乳がんにはいくつかのタイプがあり、タイプに応じた治療を行う)のこともよく分かっておらず、使える抗がん薬も数剤しかなかった。

再発の早期発見は、生存期間を延ばすのではなく、「再発後」としてカウントする日数を増やすに過ぎない。つまり寿命は“前が”延びるだけ、リードタイムバイアスと考えられる──という結論になるのは当然だろう。

岩田氏は、「そのころと今とでは、時代背景も、使える“武器”も違う。定期検査に意味がないとはいいきれないと思っている医師も多い」と話す。しかし、イタリアでの試験以降、「定期検査の有用性を検討した試験は1つもない」(岩田氏)。そこで日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、国内数千人の患者を対象とする比較試験を2012年度から行う予定という。「5年後くらいには結果が見えてくるのではないか」と試験の代表も務める岩田氏。

再発の症状を知り、気になったら医師に相談を

現在のところ「術後の定期検査は生存率の向上に寄与しない」というのが世界の共通認識であることに変わりはない。再発後の治療目的は、症状を緩和して質の高い生活が続けられるようにすることにある。乳がん体験者は、再発を疑うための知識を身に付けておくことが大切だ。