(2011年12月8日更新)
●乳房切除術後も高リスクなら検討
わきの下のリンパ節に転移が4個以上あったり、腫瘍の大きさが5cm以上あるような、再発のリスクが高いとされるケースでは、乳房切除術後に放射線療法と薬物療法を併用することが推奨されています。この場合は、胸壁や首の付け根のリンパ節に放射線を照射します。海外の研究では、乳房切除術後の放射線療法には、胸壁における再発率を下げ、生存率を高める効果があると証明されています。
ただし、国内では乳房切除術後の併用に関する研究は少なく、今後、データの蓄積が必要と考えられています。
●さまざまな部分照射方法、長期予後はこれから
また、現在は標準治療として行われる「全乳房照射」を行わずに、腫瘍があった周囲にだけ放射線を照射する「部分照射」の有効性についての検証も進んでいます。その一つが、手術中に行う「術中放射線照射」です。
全乳房照射に比べて再発のリスクは変わらないとする報告も出ています。ただし、1回に照射する線量が多くなるため、5年、10年先にどのような副作用が起こり得るかを疑問視する声も多いのが現状です。日本では術中照射を行える装置も普及していません。
部分照射の試みとしてよく行われているのが「小線源治療」です。手術中、線源となる針を患部に何本か入れておき、術直後から朝晩2回放射線を照射し、約1週間で終了します。
腫瘍を摘出した乳房内に放射線源を含む装置の「マンモサイト」を埋め込む方法もあります。
放射線による治療は、治療期間が短く、しかも局所への照射のみですむに越したことはありません。時代は部分照射に向かっているともいえますが、術後10年20年たったあとの安全性や有効性についての結論が出るのはこれからです。
●大きく切除して放射線を当てない選択肢
さらには、「大きめに切除して放射線治療を省略する」という試みも一部で行われています。乳房温存術であっても、断端陰性になるまで追加切除を行う、あるいは腫瘍の大きさにかかわらず乳腺をすべて摘出して再建するといった方針で手術が行われます。通常の乳房温存術+放射線療法の場合に比べ、再発率にほとんど差がないという報告もあります。