2011年8月10日水曜日

飛び出してきた皮下縫合の糸

引用メモ

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傷から糸が飛び出しているのは、患者自身の創癒合の問題(異物を排除しようとする働き)のため。皮下縫合の糸が出てきた、と言うことなら、普通に受診して糸を切るか抜いてもらえばすむことです。

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縫合不全(ほうごうふぜん)とは、主に手術の際に縫合した組織間が十分な癒合を起こさず、縫合部位の一部もしくは全体が解離してしまう現象である。縫合後の正常な創癒合の過程では、縫合してから2〜3日の後に組織中の線維芽細胞の活性化が起こり、およそ7日前後で癒合が完成するが、このプロセスは幾つかの因子によって阻害され、縫合不全を起こしうる。

縫合不全はしばしば縫合を行った医師の手技失敗によるものと解釈される傾向があるが、術者の技術や判断によりある程度縫合不全を回避可能な場合はあるものの、技術と無関係な要因も縫合不全の形成に多数関与しており、創部の縫合不全を完全に回避することは不可能とされる。

組織の癒合を阻害し縫合不全の原因となる要因は、全身的要因と局所的要因に大別される。

・全身的要因
栄養不良、代謝障害、浮腫、低酸素状態、特定の薬剤の使用(抗癌剤、ステロイド)

・局所的要因
血行障害、感染、創部組織の過緊張、消毒

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形成外科的な縫合を行う場合には、一般の外科手術とは異なり、真皮縫合という中縫いが行われます。最近では外科や産婦人科の先生も傷の場所や年齢、性別によって中縫いをされるようになってきましたが、形成外科医が行う中縫いとは若干違う場合が少なくありません。

では、形成外科医が行う中縫いはどのようなものかと言いますと、縫合する糸はナイロンやテトロンが使われます。溶ける糸を使う場合は、1週間ほどで溶けるカットグットやデキソンなどと言われる糸ではなく、数カ月以上溶けない合成吸収糸(マクソンとかPDSという名前が付いています)を使います。

その理由は、中縫いの糸の目的にあります。傷を縫った場合に、24~48時間経てば、ばい菌や水は入らないとされ、5~10日程度でくっついて開く危険性は無くなります。しかし、傷が固まるには3~6ヶ月かかりますので、その期間は傷に余分な力が加わらないようにテープを貼って固定します。

テープ固定は皮膚の表面にしか作用しませんので、皮膚の裏側からテープの役割を果たすものが必要になります。これが真皮縫合(中縫い)です。ですから中縫いの糸は皮膚のすぐ裏側で半年ぐらいは力を保っている必要があります。このために溶けない糸が必要になります。一般的にナイロン糸が使われ、かつ、一生体内に残ることになります。

真皮縫合をきっちりやると言うことは、皮膚の直下に糸を入れることで、これが熟練を要します。ベテランの先生でも、まれに糸が出てくる場合があります。全然出ないと言うのは逆に言うと、中縫いが深すぎて上手ではない場合もあるわけです。ですから出てきても心配いりません。コンマミリ単位の深さの違いによります。

では、安全性についてですが、これは全く問題がありません。溶ける糸の方が溶けるときに色々な化学物質を出したり、炎症反応が起こりますので、赤みの原因になったりします。ナイロン糸を埋め込むことは、ご心配なさらないでください。

取り出すことについてですが、これは理屈の上では可能です。しかし、取り出すときに切った傷はどうするのでしょうか?また、縫わなければなりません。また、中縫いをするのなら意味がありません。ですから取り出すことはあまり考えられない方が良いでしょう。もし糸が出てきたら、取るという程度で考えてください。