2011年8月22日月曜日

サラサラ生理の原因?

▼抗がん剤治療の副作用~性機能障害(女性)

抗がん剤の種類・使用料や使用期間などによって月経異常や不妊などの副作用を起こすケースがあります。

抗がん剤は、細胞分裂が活発な組織ほど影響しやすく、卵細胞のある卵胞も直接障害を受けやすく、抗がん剤によって卵胞の数も減少してきます。卵巣で作られるエストロゲンの分泌が減少、あるいは止まってホルモンのアンバランスをきたすことから、更年期障害に似た症状があらわれます。

抗がん剤治療では、複数の薬剤を併用する場合が多いので、原因となる薬剤を正確に特定するのは困難です。使用料や使用期間も影響しますし、個人差もあります。

シクロホスファミド、ブスルファン、メルファランなどは明らかに卵巣機能を障害するとされています。シクロホスファミドやシスプラチンは総使用量が無月経の頻度に関連するとの報告があります。一般的に治療開始年齢が低いほど卵巣機能障害はあらわれにくいとされ、高年齢なほど機能回復の確率は低いとされています。

▼がん化学療法による性機能障害

女性の性機能障害が起こる原因は,抗がん剤が直接卵巣に作用して「卵子の子供」 ( 未成熟な卵子で,医学的には「原始卵胞」,「初期発育卵胞」と言います ) を殺してしまうことによります。「卵子の子供」が死んでしまうことで卵巣機能障害が起こり,その結果性機能障害が引き起こされます。

抗がん剤により「卵子の子供」が殺されてしまうわけですから不妊になります。

卵巣機能の低下はホルモンで言えば「エストラジオール ( いわゆる女性ホルモン )」の低下と言うことです。脳みその方ではエストラジオールがちっとも出てこないので,卵巣にエスタラジオールを出せと命令を出します。この脳みそから卵巣に向かって出す「命令」に当たるのが卵胞刺激ホルモン ( FSH = follicle stimulating hormone ) と 黄体形成ホルモン ( LH = luteinizing hormone です。この二つのホルモンを合わせて性腺刺激ホルモン = ゴナドトロピンと言います。

乳癌などでは治療のためにあえてホルモンのバランスを崩すことがあります。命令を出してもちっとも卵巣が言うことを聞かないので脳みそはドンドン性腺刺激ホルモンを出すようになります。しかしいくら脳みそから命令を出しても卵巣は死滅したような状態ですから全く反応はありません。このように「ゴナドトロピンが非常に高いのにもかかわらずエストラジオールが出てこない性機能障害」が癌化学療法後の特徴です。

ゴナドトロピンが非常に高いのにもかかわらずエストラジオールが出てこない性機能障害は閉経女性の性機能障害と同じタイプの機能障害です。ですから症状も閉経女性の更年期障害の症状とよく似ています。

▽性機能障害を起こしやすい抗がん剤

性機能障害を起こしやすい抗がん剤がどのようなものであるかはよく知られています。しかい「どれくらいの量」を「どれくらいの期間」投与すると危険であるのかと言うことがはっきりとわかっている抗がん剤はほとんどありません。

有名なのは CPA です。また放射線照射も有名です。そのほかブスルファン ( Busulfan,マブリン,Mablin ),メルファラン ( melphalan,アルケラン,Alkeran ) なども卵巣毒性が明らかになっています。

逆に MTX,5-FU などでは卵巣機能障害は起こらないと考えられています。また ADR,BLM,アクチノマイシンD などでもほとんど卵巣障害の報告はありません。

一般的に性機能障害は年齢とよく相関すると言われていて,若い人ほど出にくいとされています。特に小児期では影響が少ないと言われています。とは言っても非常に個人差が大きいものです。また性腺機能障害発現時期も,若い人ほど遅れて出現します ( ホジキンリンパ腫リンパ腫でおこなう MOPP 療法では 39 歳以上の女性はすべて 1 年以内に発現したと言う報告あり )。

▽性機能障害は回復するのか ?

回復には年齢と総投与量が関連するようです。疾患によって選択する治療法が違いますし,同じ疾患でも治療法によって投与量や治療回数がことなるため,一般論を述べるのは困難ですが,若い人ほど回復する可能性が高いとは言えます。