2011年8月29日月曜日

抗がん剤の働き

▼FEC

エピルビシン アントラサイクリン系_抗腫瘍性抗生物質製剤: 腫瘍細胞のDNAと結合することにより、DNAとRNAの生合成を抑制する。 細胞周期においては、S期および初期G2期において、最大の抗腫瘍効果を発揮する。

シクロホスファミド アルキル化剤_抗悪性腫瘍剤・免疫抑制剤: DNA合成を阻害する。細胞周期非依存性。

フルオラウラシル フッ化ピリミジン系_代謝拮抗剤・抗悪性腫瘍薬: 本剤およびその代謝物が核酸(DNA、RNA)の合成に必要な物質のかわりに核酸に組み込まれる。これにより本来の核酸の合成が阻害(代謝拮抗)され、抗腫瘍効果を表す。細胞周期のS期に働く。

▼T

タキソテール タキサン系_抗腫瘍性植物成分: 微小管に結合して安定化させ脱重合を阻害することで、腫瘍細胞の分裂を阻害する。細胞周期のM期に働く。

▼抗がん剤の種類

抗がん薬を分類すると、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、そして抗腫瘍剤がある。全ての薬剤はDNA合成あるいは何らかのDNAの働きに作用し、作用する細胞周期をもって分類する。この項では抗がん剤の類縁物質は抗がん剤として使われない薬物でも記載する。傾向としては抗菌薬の類縁物質は抗がん剤としても利用可能なことが多い。

新しい化学療法剤にはこの分類が適当でないものがあり、例えば、分子標的薬のメシル酸イマチニブ はチロシンキナーゼ阻害剤である種のがん(慢性骨髄性白血病や消化管間質腫瘍などの異常タンパク質に直接作用する。

▼化学療法

化学療法は、ある種の化学物質の選択毒性を利用して疾患の原因となっている微生物や癌細胞の増殖を阻害し、さらには体内から駆逐することを目的とする医学的な治療法の一種である。

選択毒性の原理
宿主には存在せず、病原体や癌細胞にのみある特異的な標的物質を攻撃する。
宿主に似た物質であるが同一ではない病原体、癌細胞の標的物質を攻撃する。
宿主と病原体、癌細胞に共通するがその重要性が異なる標的物質を攻撃する。

悪性腫瘍の場合は腫瘍細胞はいくつかの種類のものが混在しており、更に耐性を得やすく、毒性のため投与量に制限があることが多く単剤投与は失敗に終わることが多いため多剤併用療法となる。多剤併用療法も複数もやみくもに組み合わせればよいというものではなく、いくつかの重要な経験則がある。標的とする分子が異なる薬物、有効とされる細胞周期の時期が異なる物質、用量規定毒性が異なる薬物を併用するのが一般的である。さらにできるだけシナジーを得られる投薬を工夫する。このようにすることで、結果として最小の毒性で最大の結果が得られると考えられている。その結果、がんが耐性化を獲得する機会が最小になる。

がんはDNAの突然変異による細胞の制御不能の増殖で、場合によっては、ある種の腫瘍を拡大させる傾向は遺伝する。広義には、ほとんどの化学療法剤は細胞分裂を阻害することで、短時間で分裂する細胞を効果的に標的にする。このような薬剤は細胞に障害を与えるので、細胞毒性 (cytotoxic) と書き表される。ある種の薬剤はアポトーシス(事実上の「細胞の自殺」)を引き起こす。