2011年8月22日月曜日

血液検査と抗がん剤と肝機能障害

▼多くは一時的なもの

肝臓は細胞の増殖が早く,副作用の症状が現れても多くは一時的なもので,多くは薬剤投与を停止後2週間ほどで回復しますが,なかには致命的な障害を引き起こすものもあり,注意が必要です。

抗がん剤で引き起こされる肝機能障害を根本から予防することはできず,対症療法が中心となりますが,グリチルリチン製剤などの肝庇護剤が投与され,またステロイド剤が投与されることもあります。

患者側の対策としては,食事のバランスを考え,タンパク質を十分に摂取することが大切であり,肝臓に負担のかかるアルコールは厳禁です。

▼肝臓の障害について

抗がん剤などの薬剤による肝障害

抗癌剤や抗生物質をはじめとする多くの薬剤は肝臓で活性化されたり,逆に不活化されたりします。大量の薬剤が肝臓にやってきますから抗がん剤自体で肝細胞自体が障害されて壊死を起こしたり ( 肝臓の細胞が死ぬ ),肝臓の中の血管が壊れたり詰まったり,肝臓内の胆管 ( 黄疸の原因であるビリルビンが流れるところ ) が障害を受けたり ( 肝臓の中の胆管が壊れたり,詰まったりする ),アレルギー性の反応により障害を受けたりします。

多くの場合肝機能障害が生じても特別な治療はありません。早期に異常を見つけて,原因と推定される薬剤を変更・中止することが一番の治療であり,ほとんどの場合これで改善が得られます。

肝機能障害に対して,強力ネオミノファーゲン C ( 強ミノ ) などの薬剤が投与されることがありますが,有用性についてのエビデンスは乏しいようです。肝臓の中の胆道系の障害が中心の場合はウルソ ( Ursodeoxycholic acid ( UDCA ))が投与されることがあります。日本では内服が中心となります。使用を考慮する場合は内服できないほど全身状態がひどいことが多いのですが,点滴・静脈内投与される機会は少ないようです。

肝機能障害が症状として現れる前に発見するためには,現状では頻回に検査 ( 採血 ) するしかありません。

肝機能障害がひどいときには薬剤投与量が調整されます。一般的にはビリルビンの値が投与量の調整の目安になります。AST ( = GOT ) や ALT ( = GPT ) の上昇は肝臓の細胞が壊れていることを示す指標であり,肝臓の機能の指標ではありません。一方でビリルビンは「肝臓のビリルビン処理能力」 =「肝臓の機能」を示しています。またヘパプラスチンテスト,プロトロンビン時間などのは肝臓で作られるタンパク質により数値が影響されるため,「肝臓のタンパク産生能力」 = 「肝臓の機能」を示す指標になります。

ADR,DNR,VCR,MIT,ビンブラスチン ( VBL,エクザール ),パクリタキセル ( paclitaxel,タキソール ) などの薬剤は,肝機能障害 ( ビリルビン > 1.5mg/dl ) があるときには減量して投与されるのが一般的です。