2011年8月3日水曜日

予防ゾメタは効果なし?

学会スペシャル:サンアントニオ乳癌シンポジウム2010
2010年12月8日~12日 San Antonio U.S.A.
2010. 12. 12


閉経前、閉経後の2/3期の乳癌患者のアジュバントとして通常の化学療法またはホルモン療法にゾレドロン酸を加えて投与しても、無病生存期間(DFS)を延長しないことが明らかになった。フェーズ3試験 AZUREの結果、明らかとなったもの。成果は12月9日から12日に米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で、英Weston Park HospitalのColeman RE氏によって発表された。

AZURE試験は7カ国174施設で3360人の患者が登録されて行われた。患者はアジュバントとして化学療法、あるいはホルモン療法、もしくは両方を受ける群(1678人)と、それらに加えてゾレドロン酸4mgを3~4週おきに6回、3カ月ごとに8回、6カ月ごとに5回と合計で5年間の投与を受ける群(1681人)とに分けられた。死亡イベント数が940に到達した場合のDFS率が主要評価ポイントとされており、今回は少なくとも75%にあたる752死亡イベント発生時点での2回目の中間解析として行われた。

解析の結果、観察期間中央値59カ月(53-61)でゾレドロン酸を加えた群のDFSのハザード比は0.98(95%信頼区間:0.85-1.13)、p=0.79と、有意な臨床的な改善を達成することはできなかった。全生存(OS)に関してはハザード比0.85(95%信頼区間:0.72-1.01)、p=0.0726で、ゾレドロン酸投与群が良い傾向があったが有意ではなかった。

しかし、閉経の前後で層別化して解析すると、閉経後の患者ではDFS、OSともにゾレドロン酸投与群に有意な臨床的改善が認められた。予後因子調整解析ではOSのハザード比0.71(95%信頼区間:0.54-0.94)、p=0.017と、有意にゾレドロン酸投与群で改善していた。閉経前の患者には有用性は見られなかった。

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ゾレドロン酸は乳癌の無病生存期間を改善しない
投稿日時: 2010-12-27

Zoledronic Acid Did Not Improve Disease-Free Survival in Breast Cancer (Posted: 12/27/2010) - ステージ2または3の乳癌患者の標準術後補助療法にゾレドロン酸を併せて投与しても無病生存期間(DFS)は延長しないという第3相AZURE試験の結果が、2010年サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表された。

NCIキャンサーブレティン2010年12月14日掲載記事より

ステージ2または3の乳癌患者の標準術後補助療法にビスフォスフォネート剤ゾレドロン酸を併せて投与しても無病生存期間(DFS)は延長しないという第3相AZURE試験の結果が、12月9日サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表された。この試験結果はホルモン療法にゾレドロン酸を加えて投与した閉経前初期乳癌患者の無病生存期間に改善が認められたという以前のABCSG-12試験結果と相反するものである。

AZURE試験の主任研究者Dr. Robert Coleman氏は、臨床試験2件の患者集団間に大きな違いがあることが大きなポイントであると述べる。AZUREの試験対象者は閉経前と閉経後の女性であったが、ABCSG-12では試験対象者は閉経前の女性のみで、試験の一環として閉経を早める治療薬ゴセレリン投与を受けていた。

AZURE試験はイギリスの174カ所の治療施設で女性患者3,360人を対象とした。女性らは、標準術後補助療法グループ(化学療法、ホルモン療法、またはその両方を担当医師によって選択)と標準的術後補助療法に5年間のゾレドロン酸を加えて投与するグループに無作為に割り付けられた。

ほぼ5年の追跡調査後、両グループ間に無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)ともに差は認められなかった。しかし、あらかじめ計画されていたサブセット解析(一部の集団の解析)では、5年以上前に閉経した女性では標準治療にゾレドロン酸を加えることによってDFS、OSが有意に延長したが、閉経前の女性にビスフォスフォネート製剤を加えることによる効果は認められなかった。SABCSで報告されたABCSB-12試験の更新結果では、ゾレドロン酸投与を受けた女性に引き続きDFSの統計的に有意な改善が認められ、OSでも改善傾向にあることが示された。

「私たちの研究結果はABCSG-12でみられるものとは全く異なっており、その理由を解明する必要がある。私はどちらかが正しくてどちらかが間違っているとは考えない。なぜこのような異なった結果になったのかについて生物学的な考察をする必要があると思う。術後補助治療のビスフォスフォネート剤投与の効果は、骨の微小環境内のエストロゲン濃度が低いまたは抑制状態でのみ認められるものであるという仮説が成り立つかもしれない」とColeman氏は述べた。

「これらのデータに基づくと、乳癌再発を抑制するための画一的な術後補助療法にゾレドロン酸を取り入れることが望ましいとは思われない。閉経状態によってもたらされる結果の違いは大変魅力的であるが決定的なものではない。AZURE試験がこのテーマについて最終的な判断を下すものではない」とテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Sharon Giordano氏は記者会見で述べた。ビスフォスフォネート剤を用いた乳癌的術後補助療法の大規模臨床試験としてNSABP-34、Gain trial、NATAN trialおよびSWOG-S0307が現在進行中である。