2011年7月11日月曜日

抗がん剤血液外漏出

壊死性抗がん剤 : 少量の漏出でも水疱性壊死を生じ、難治性皮膚潰瘍を起こしうる抗がん剤。この中でもアドリアシン(FEC100のEのエピルビシンと同じアンスラサイクリン系、だ!)、ダウノマイシンなどは漏出後2~3ヶ月経過してから潰瘍形成が著明になるものもあり、慎重な経過観察が必要である。

【抗がん剤血管外漏出予防法】

① 注射部位として静脈還流の良い場所を選ぶ。(肘と手首の中間付近)

手背部は皮膚のすぐ下に腱があるため、抗がん剤が漏出した際には、腱の変性あるいは癒着によって指が曲がらなくなる危険性が高い。また、間接部は曲がりによって頻繁に角度が変わるために漏れやすい。したがって、点滴部として肘と手首の中間付近にルートを確保することが望ましい。

② 静脈確保に関して

やわらかい留置針を使用する。失敗した場合は他の静脈を選択し確保する。同一静脈からの採血を行わない。

③ 血管痛や静脈炎を起こす恐れのある場合はステロイドを混注する。(プレドニン換算で25~50mg)

④ 留置針を使用し、漏れのないことを確認する。

まずは留置針を血管内に確保し、注射筒で吸引することにより血液の逆流があることを確認する。また、いきなり抗がん剤の点滴を始めるのではなく、輸液のみを点滴して抵抗なく静脈内に点滴可能であることを確認する。

⑤ 抹消静脈の確保が困難なときはIVHの選択も考慮する。

⑥ 表在静脈が萎縮している場合は事前に腕を温め血管を拡張させる。

血管外漏出が最も多いのは、室温が低いときだといわれている。患者の血管が細いためルートを確保することが難しい場合には、あらかじめ腕を温めて血管を拡張させておく。

⑦ 固定部の確認を容易にする。

ルートを確保した部位を不透明なテープあるいは脱脂綿で覆ってしまうとルート部位の状態を確認することが困難となり、漏出の発見がおくれてしまう。このため、ルート確保部位を固定する必要がある場合には、透明なテープを用いる。

⑧ 添付文書に従い、薬液を出来るだけ希釈する。(特に起壊死性の薬剤)

⑨ 抗がん剤投与中は出来るだけ安静にする。

⑩ 医療者・患者双方が穿刺部位の観察に留意する。(ポンプ使用時は特に頻回に観察を行う。)


◆2011.09.07追記

【キッセイ 抗がん剤の血管外漏出治療薬を開発へ 厚労省の要請に手上げ】
2011/09/02 05:00

キッセイ薬品は9月1日、アントラサイクリン系抗がん剤の静脈内投与による血管外漏出を治療する世界で唯一の薬剤デクスラゾキサン(一般名)の国内開発・販売権を、オランダのスペファーム社から取得する契約を締結したと発表した。同治療薬は厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で国内開発の必要性が指摘されるとともに、開発企業の募集が行われた薬剤のひとつ。推定国内患者数が500例ほどとの状況もあって国内開発されていなかったが、キッセイが「未承認薬である本剤の開発に取り組むことは『純良医薬品を通じて社会に貢献する』との当社の経営理念に合致する」と判断し、手をあげたとしている。

がん患者では化学療法によって血管が脆弱化し、静脈内投与される抗がん剤が血管外に漏出しやすい状態になる。特にアントラサイクリン系抗がん剤では少量でも血管外に漏出すると、発赤や腫脹とともに疼痛もきたし、炎症の進行に伴って皮膚の壊死や難治性の潰瘍にいたる場合もあるという。

静脈内投与される抗がん剤の血管外漏出の頻度は0.1~6.5%とのデータがある。一方で、アントラサイクリン系抗がん剤の国内使用患者は年間約50万人のため、アントラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出は少なくとも500例とされる。