尿の生産・排泄に関わる器官を泌尿器と呼ぶ。人間の場合、腎臓で血液から濾し取られることで生産された尿は、尿管を経由して膀胱に蓄積され尿道口から排出される。生産量は水分摂取量にもよるが、1日約1.5リットル。
腎臓と尿管腎臓は1対のソラマメ型をした臓器で、 先細りになった尿管が図には描かれていない膀胱に向かって下行する。 腹部大動脈、腎動脈(赤)と下大静脈、腎静脈(青)がはっきり描かれている。 |
▽尿の働き
老廃物の排出。動物の体内で生産される老廃物は腎臓でこし出され、尿に含まれて排出される。特に窒素化合物の排出は重要で、アミノ酸などが分解された場合、有害なアンモニアができてこれは利用できないので排出しなければならない。
浸透圧の調節。体内の水分量の調節の役割がある。水を多く飲むと薄い尿が多量に出る。これは腎臓における再収集によって調節される。
▽成分
哺乳類の尿(特にヒトの尿)の場合、約98%が水であり、タンパク質の代謝で生じた尿素を約2%含む。その他、微量の塩素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン酸などのイオン、クレアチニン、尿酸、アンモニア、ホルモンを含む。閉経した女性の場合は、女性ホルモンも含む。短時間に大量に水を摂取した場合は、ほとんど100%水である場合もある。色はおおむね黄色で、水分が不足している時はオレンジ色になる。肝臓での代謝物ビリルビンが代謝されウロビリノーゲンを経て最終的な代謝物である黄色のウロビリンが排出されたときやビタミンB2(リボフラビン)が排出されたときも黄色となる(リボフラビン以外のビタミンそのものは無色)。
一般的に汚いものと思われがちだが、血液をろ過して造られるため、腎臓が健康な場合は排泄までは無菌である。排泄して時間が経つと、尿の中の尿素が外部から侵入した細菌によって分解され、アンモニアが発生し臭いを放つ。また、排泄直後の尿は泡立っていることが多いが、大抵はすぐに消える。あまりにも泡立ちが激しい場合は、蛋白尿である可能性が高い。健康な状態の尿は弱酸性である。代謝物は水分より比重が重いので黄色または褐色成分は時間が経つにつれて沈殿する。
▽尿検査
尿は血液中の不要物や有害物、新陳代謝の老廃物などを体外へ捨てるために腎臓で濾過されて生産される。このため、身体状態を反映して水素イオン指数 (pH) や成分が変化することが知られており、内科の診断では主要な検査対象となる。
血液やリンパ液、組織液、細胞液などのpHは、ホメオスタシス(恒常性維持機能)によって通常pH7.4±0.05に維持されている。一方、尿は体液ではないため、pHはある程度の範囲で変動する。一般に尿は弱酸性であるが、アルカリ性食品を多く摂取したりすることで、アルカリ性になったまま低下しなくなることがある。
尿にタンパク質が含まれる場合は腎疾患や尿路系の異常、糖では糖尿病、血液では尿路系の炎症や結石が疑われる。ただし、これらは疾患がなくても疲労が原因である場合もある。ウロビリノーゲンの量や尿の比重も臓器の疾患を示唆する。ウイルス、細菌が混じる場合には泌尿器系の感染症が疑われる。薬物・毒物等を摂取した場合には固有の代謝産物が検出される。妊娠した女性からはヒト絨毛性ゴナドトロピン (HCG) という特有のホルモンが検出される。